第一章 5話 魔王様は何かを言っている
魔王城内にあるピンクの大広間を進んだ先に、明らかに異質に感じる扉があった。
その扉はいびつな魔法陣のような模様が放射状に伸びており、外枠にきらびやかなアメジストが所狭しと並んでいる。
というか、大広間全体がピンクなので、明らかに異質と感じているだけなのではないかと僕は思った。
「この扉の向こう に魔王がいるわよ。
ターダノ、扉を開けるわよ〜」
「う、うん、緊張するけど、うん、お母さんがいるから安心してるよ」
「まぁ、可愛いこと言ってくれるじゃない!
じゃあ、手を繋いでいきましょう。」
母親(ターグリフ)は扉を開ける。
「入るわよ〜魔王アンジェリア」
「失礼し・・・」
王座の間に入ったら僕は驚きとともに発言を途中で止めてしまった。
発言を途中で止めてしまったのには訳があった。
扉を開けるとすぐに玉座が見える位置にあるとは思っていたのだが、なんか、玉座が一応あの辺だろうなぁというくらいにしか見えないほど遠い位置にあった。
もちろんそこに座っている魔王も微かにしか見えなかった。
「お母さん、なんであんなに玉座が遠いの?」
「それはね〜時々魔王城に勇者とか、強そうなやつが来るんだけど、以前の魔王が魔王の四天王が順番に一人ずつ戦うような部屋の作りにしたのよ。
だから、この玉座がある部屋は元々5つの部屋に分かれていたんだけど、一つの部屋が狭すぎたせいで、一番最初に戦った四天王が後先考えずに大技を使ったせいで、全部の部屋を開通させちゃったのよね〜
その時に、玉座に座りながら各部屋が崩壊している様子を見ていた当時の魔王は、「もう、いいや」って思ったみたい。
だから、その時の名残でこの玉座があるこの広間には部屋の境目があるのよ〜」
「そうなんだ、というか、なんか微かに魔王様が何かを言っているのが聞こえるんだけど、全然何言ってるのかわからないんだけど、何を言ってるのかわかる?お母さん」
「いや、私にもわからないわね〜
普段は意思伝達は魔王と四天王で思念で意思疎通ができるのだけど、今日はターダノがきてるから頑張って声を張り上げてるのがわかるけど、私にも何を言っているのかはわからないわね〜」
「へー、頑張って声を張り上げてるんだ!可愛いね。」
「あら、魔王が可愛いなんて!もう将来のお嫁さん候補は決まりかしらね〜」
「そんな!お嫁さん候補だなんて、まだ早いよ〜」
なんて言っていると、玉座にいる魔王様が立ち上がるのが微かに見えた。
と、思った瞬間、僕は後頭部に感じる痛みとともに王座の間の天井を見上げていた。
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