第一章 3話 家の外は、思っていたのと違いました。

それから、また1ヶ月が経った頃、親が言っていた通り急に歩けるようになった。

しかも、現在産まれてから2ヶ月しか経っていないにもかかわらず、現在100センチほどの身長を持ち、特に運動など何もしていないにもかかわらず筋肉質な体型になっていた。


(やはり親の遺伝だろうなぁ・・・)


そんなことを思いながら、私は家から出てみたい衝動にかられている。おそらく人間でいう乳幼児期にある探索行動が現在の衝動となっているのだろうと考える。


すると、母親が、


「そろそろ歩けるようになったから、ターダノも外に出てみたくなってきたわよね〜」


と、僕の衝動をしっかりと理解してくれているのか、母親が一緒に家の外に出てくれるという。さすが僕のお母さんだ。


「うん!家の外に出てみたい!」


そんな母親への感謝の気持ちを伝え一緒に手を繋いで家から出ると、そこには魔族の住んでいるところというなんとなく暗く紫色に彩られた世界をイメージとは違った。

実際にはヴェネチアのような運河が流れ、快晴によるものか運河がキラキラときらめいており、素敵な街並みが広がっていた。

ただ、一点だけは想像通りだったことがあり、それは周辺を歩いている魔族だった。

魔族は家を出たところから見える範囲だけでもかなり多くの種類が見られ、明らかに巨体でどんな家に住んでいるのだろうか?と思うほどの石の魔族や、父親に似て筋肉がムキムキの上半身をし、下半身が毛に覆われた馬の魔族がいたり、空を飛んでいるとても大きな翼を持った魔族なども見ることができた。


「うわぁ・・・すごいなぁ・・・」


そんな声が漏れてしまうほどの転生する前には考えられなかったような光景を見た。


「ターダノ、素敵でしょ?

この場所はお母さんとお父さんが魔王城に勤めてるから、そこから通える範囲で最も素敵な場所を選んだのよ。

お母さんもお父さんも海が好きで結婚する前からこの町の周辺には良くくる機会があって、子供が出来たら絶対にここにすみたいと思っていたの。」


母親からこの町についての自慢ついでにびっくりするようなキーワードがあったので、母親に聞いて見ることにした。


「そうなんだ!本当に素敵な場所だね〜

というか、お母さんとお父さんは魔王城で仕事をしていたんだね!

魔王城ってどんなところなの?」


「何?ターダノ、魔王城に興味があるの??

うーん、説明しづらいのよね、あそこは・・・

あ、そうだ、折角だからお父さんの仕事姿を見に行くついでに魔王城に行ってみましょうか!」


「え!?行ってみるって、そんなに簡単に行くことって出来るの!?魔王様怒ったりしない?」


「ええ、行くことはできるわよ〜魔王には今お父さんに意思伝達したから直ぐに伝えてくれると思うし、魔王も最近産まれたばかりだから様付けする程の格はまだ無いわよ。

あ、今お父さんから魔王に伝えてくれたみたい。さすがお父さん、仕事が早いわね〜

それじゃあ、魔王城まで行きましょうか」


母(ターグリフ)は目の前に手をかざしたと思うと、手から1メートル先に半径2メートルほどの楕円形の漆黒を生み出した。


「ここに入れば直ぐに魔王城よ。さあ、ターダノ、入りましょう。怖がらなくて良いからね〜」


そんなことを言いながら笑顔で母から背中を押されながら、漆黒の先、魔王城へ辿り着くのであった。


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