逃げないと

豊穣ハーベスト


両足から「蔓」を出すーー豊穣ハーベストとは、体から「作物」を出せる能力

或いは植物を体から伸ばす、権能


その豊穣もってしても、この工場から逃げ出すことは不可能


「--いいねぇ、やるしかねえって感じか」

研究棟地下の「工場」で、人型ロボットと相対する

「来なよ、、、」(うわーーもう、二度とあいたくねぇ、っていうか

ごめん、無理だぜ、こりゃ勝てない)

ポーカーフェイスだが、心はブルっていた

(冗談じゃないよ、、、謝りたいけど、、、謝っちゃだめだ)

土下座したい気持ちを抑えつつ向き合う

「ほう、お前ごときが俺に勝てると思ったのか」


「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

余裕の表情の搭乗者の声、顏は見えないまでもおそらく

ーーその時、美鈴と呼ばれた人間は、ゴミムシが、いや、カが

毛虫が肌を大量に上ってくる感覚を覚えた



ーー仲間を逃がすためには、おとりが必要である、となれば

   足が速い美鈴に出番が回ってくるのはーー必然

「みんな、もう、足弱ってんだから無茶しないほうがいいよ」


ーー向き合う二人、先に仕掛けたのはロボットの方だった


一方、その頃

「逃げろ」「、、、はぁっは」「うち、もうだめ」

火の手が上がる刑務所ーーそこから逃げ出す人間だが

女子供が多いせいかーー遅々として進まない

「あ、もう、くっそ」

ここで、青年たちが、子供と女を背負いダッシュする


「おぎゃーおぎゃーー」

どこかで、赤子の泣き声がする

小さい子少年が、片手をつなぎ、片手を握り締めた状態でつぶやく

「おばさんーーー」


うつろな少女が、抱っこされながらつぶやく

「、、、、みんな、みんな、燃えちゃえー―何もかも灰に、灰になって消えちゃえ」


火災で、夜の闇を赤く染める

森の向こう側の街が騒がしい


「みんな、このままだとだめだ、いったん分かれて合流しよう」

「ああ、わかった」

9のグループに分かれ、それぞれの方向に走り出す


ーー少女たちの黒目は見ている

生まれ故郷が燃えているのを、悪夢の牙城が消えていくのを

「、、、みんな、みんな消えちゃえーー消えろ、消えろ、何もかも、消えて

お願いだから」

頭を抱える少女


ーーこれが起こったのが7年前のことである

から始まる

あるヘタレから始まる




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