捕まる前に、溶けて死ぬ呪文を解いて、彼女を救え

暇の三

プロローグ、溶けて死ぬ

牢獄


ーーそこを表すのなら、旧式の「牢獄」の一言でいいだろう

いや、最っと端的に言うならーー「実験室のついた「牢獄」」か


現代式の環境、ではなくーー閉じ込められてる囚人たちは「実験」と「トイレ」と「飯」「風呂」以外は外へ出ることはできない


ーー囚人、とはいったが、正確には囚人ではないーーここの主が集めてきた人

、、、つまり、一般人だ

「おい、出してくれ」

「やめてくれぇ」

そんな、怒号と悲鳴が飛び交う、牢獄の中で、静かにそれは起こっていた


「おい、冗談だろ」

さらさら、と指先が水になっているのだ

「え、うわ、えなんで」

あまりのシュールな光景に、水になっている人間に現実感がない

だがーーーー「おかあーーーさーーーん、怖いよーーー」

彼女の、娘らしき人物が今、溶けかけている

「みゆり、ど、どういうこと」


母親は、みゆりと呼ばれた少女を抱く、だがその腕は溶け

同時にみゆりも足元が溶け始める

「みゆり、みゆり、しっかしなさい、みゆり」


「ママ、、、」

どこかで、少年がつぶやいた


ーーもしも、奇跡なんてものがあるとしたら天は見捨てたのだろう

   みゆりは、最後の最後に母親が教えてくれたほほえみで死んでいった


慟哭どうこくが響き渡るーー獣はないた


それはーー非情にも、二人の|母娘の命を削り取った


全ての悲劇はこれより前にスタートしすべての惨劇はこれより後に始まる

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