第15話 猫亜人の子供兄妹
二つの生命体は、先ほどの二ツ岩の影から移動してないらしいので、三人はその生命体を調査する事にした。
岩の大きさは、高さ一メートルチョイと八十センチ位、
横幅は高い方が一メートル五十センチ位で、
低い方は五十センチ位ある。
三人は三方向から、周りを警戒しつつ近づいた。
二十メートル位の所に着いた時、
鹿島は手サインで止まれと合図してヤンに自分のいる所を示しながら、
この位置まで横に移動するよう手サインをした。
鹿島は岩との距離を保ちつつ、ゆっくりと岩の裏側に周りこんだ。
岩と岩との隙間は二十センチ位で、小動物かなと思いつつ、
鹿島はゆっくりと岩の隙間に近寄っていった。
『お兄ちゃん、息ができない、苦しいよ。』
『一人近づいてきたから、我慢しろ。』
『でも、ガイア様に愛されている人がいるよ。』
『人種は、愛されない!ホントに、ガイア様だったのかな?』
この会話以は、高エネルギー塊が体を通り抜けるときに、
鹿島は既に経験していた。
あの時鹿島の中では響くような感じであったが、
今の会話以は普通に感じた。
鹿島は二人に手サインで銃を下げさして、
手を広げて岩から出て来るものを捕獲するよう指示した。
猫耳の小さな子供が苦しそうに、
大きめの岩の中から飛び出してきた瞬間に、
鹿島は子供を抱きしめると、
続けてもう一人の猫頭と耳の子供も飛び出してきて、
小さな子どもを抱きしめている鹿島の腕に噛みついてきた。
子供は防護服の上からでは歯が立たないと気づき、
次は手をほどきにかかった力は、かなりの力持ちのようで、
鹿島は抱いていた子供を腕から引き剝がされそうになった。
無線から再び通信が入った。
「三百メートル先の森から、
高速で四メートル以上の爬虫類多数接近確認。」
無線機からの甲高い声で振り向くと、
ダチョウのような足と体をした、トカゲ顔似の物が向かってきていた。
鹿島は慌てて両手で子供達を抱え上げ、
その場から着陸地点方向に駆け出した。
子供達との騒ぎを聞いたトーマスとヤンは、
急いで駆け寄っていたが、
「後方敵多数、いそぎ歩哨の見える場所まで後退!」
鹿島はヤンを追い抜き、
着陸地点まで二百メート位の所で後ろを振り向くと、
トーマスとヤンは既に迎撃態勢をとっていた。
鹿島は子供達を下ろして、着陸地点の歩哨を指さし、
「お兄ちゃん達がいるから、急いで走っていけ。」
と声掛けして、トーマスとヤンの方へ向かった。
トーマスとヤンは既に戦闘を始めていて、
二人共四頭のダチョウモドキを相手に、
レーザーガンが間に合わなかったのか太刀で戦っている。
トーマスが一頭の足と首を落としたことを確認してから、
鹿島はヤンに向かう二頭のダチョウモドキを確認すると、
鹿島の向かう方向に近い、ダチョウモドキの片足を切り落とした。
鹿島はダチョウモドキが倒れるのを後ろ顔で確認して、
森の方から新たに現れた二頭へ向かった。
鹿島は突進してくる二頭へ向かい、
前方の三メートル高さの首を斜めに切り落として、勢いそのまま、後ろの一頭の胸に刃を刺して縦に切り裂き、
後ろに振り向き直すと、倒れたダチョウモドキの首を切り落とした。
鹿島はダチョウモドキの絶命を確信して、
トーマスとヤンの方へ向うと、彼等の戦闘も既に終わっていた。
ヤンとトーマスのダチョウモドキとの戦い方は先に片足を切断してから、
ダチョウモドキの体を転がしたのちに首を落としたようである。
鹿島に片足を切り落とされたダチョウモドキも、
すでにヤンに首を切られている。
首を切り落とすのは、トカゲモドキとの闘いの規範であり、
トカゲモドキは首を落とさねば、いつまでも絶命しないで、
傷口は自然に回復するからである。
トーマスは鹿島に近づいて、
「隊長、今の動きはどうしたのですか、
こいつらはトカゲモドキよりも動きは遅いが、
いくら体が軽いといってもジャンプし過ぎだし、
それに超速すぎますよ。」
「そう、子供を抱えての走りも、無茶苦茶速すぎです。
俺、置いて行かれましたから。」
「それはわからんが、体は軽いよ。」
「所で、子供達が何故か、石から出てきたような気がしたのですが?」
「手品師のショーで、それに似たような事を見たように思う。
それと、地球星の昔の話で、
石からサルが生まれた話を聞いた記録もある。」
「あり得ることなのだ。」
何故かヤンは納得している。
鹿島にはもっと深刻で、
理解できない二度目の感聴性変化状態体験を感じていた。
石の中にいた子供たちの会話を聞けた事で、
有り得ない事が起きているようであるが、うまく説明できない事は、乱心者としか思われないので秘密にした様子である。
「俺もおかしいと思う、子供に色々聞いてみよう。」
猫似の子供達が手品のような出来事を起こしたことで、
鹿島の超人的な動きの変化には、二人からそれ以上の追究はなかった。
ダチョウモドキの肉片に細胞調査感知器を当てて調査すると、
食可能と表示されたが、口に当てると猛毒注意の表示が出た。
全体をスキャンすると爪先に、猛毒注意と表示されている。
牙と爪に接触していれば、危険な事であったが、
幸いにもトカゲモドキよりも動きが鈍かったために、
鹿島達は問題なく討伐できたようである。
鹿島はダチョウモドキの危険性と結果を、
輸送艦及び隊員達に送信し,
「キャンプ場所に、帰ろう」
キャンプ場方に向かうと、
猫亜人子供達二人は腕から降ろした場所で待っていたようで、
鹿島が手を振ると、安心したように三人の方に向かって走り出した。
男の子が鹿島のそばに駆け寄り、
「どうして、石を取り出さないの?」
「石ってなに?」
「石を取り出さないと死なないよ。
生きたまま放っておくと魔物が来るよ。」
そう言って、
鹿島のサバイバルナイフに指をさしながら貸してと言ったので、
鹿島は使い方を説明してから、
注意して使うようチェーンソーのスイッチをONにして渡した。
子供はナイフを受け取るとダチョウモドキの腹を裂き、
そこから手を突っ込み赤い塊を取り出した。
「これが石だよ。」
と言って鹿島に渡すとすぐに、猫亜人の少年はやおやまた引き返して、
別のダチョウモドキの腹にナイフを突き刺していた。
トーマスの方でも声が聞こえたので顔を向けると、
小さな猫亜人の子供は、
手ぶり素振りでトーマスのナイフを渡してとせがんでおり、
「トーマス。ナイフを貸してやれ!」
と鹿島が叫ぶと、トーマスも気が付いたようで、
女の子とトーマスは一緒にダチョウモドキに近づくと、
手に手を添えて腹裂きを手伝っている。
「ヤン、ダチョウモドキの腹から、赤い塊を取り出せ。」
呆然とした顔で鹿島を見つめているヤンに声を掛けた。
鹿島も刃でダチョウモドキの腹を裂き、
赤い塊を探すために内蔵を刃の先で穿り返したら、
赤い塊は心臓の裏側にこびりついている。
ヤンの方に顔を向けると、内蔵を引きずり出して赤い塊を探している。
トーマスも別のダチョウモドキの内蔵を引きずり出して、
同じ様に赤い塊を探している。
「赤い塊は、心臓の裏側にこびりついている。」
と鹿島は声を上げた。
鹿島は再び輸送艦と隊員たちに、赤い塊を取り出す理由を説明して、赤い塊のある場所を教えたが、
魔物とはどんなものか解らないとも付け加えた。
トーマスとヤンが鹿島に近づいてきて、
「隊長、聞きたいことが、山ほどあります。
話が長引くと思いますので、キャンプ場でいかがでしょうか?」
トーマスは大きく目を開き、
炭にされる理由の変化はまだないと安心している鹿島だが、
自分の体験したことの秘密に気づかれたのだろうかと、
ヤンが顔を赤くして興奮状態に見えるのを確認しすると、
危害を受ける心配はないなと安心している。
流石に鹿島も、トーマスの何か深刻なことが感じられて、
トーマスの奮起にも押されて同意した。
子供達の方に向かうと、
二人共ナイフを両手に持ちダチョウモドキの首で、ナイフの切れ具合を確認しあっている。
チェーンソーのスイッチも確認しているようだ。
子供達が三人に気付き、
「おじさん。ダーホーの足切ってあるよ。」
と、ダチョウモドキを指さした。
ダーホーを見ると、二匹の両足首がないのは、
すでに子供達が切り落としたようだ。
「他のダーホーの羽も持ち帰りたいが、
入れ物がないので置いてくしかないね。
さっき指差した方へ帰るのだろう、運ぶのを手伝うよ。
ダーホーの肉は美味しいから、僕たちにも食べさせて欲しいな。」
鹿島が了解すると、やおや二人はダーホーの足に手をかけて、
両足をそれぞれに持ち上げた。
鹿島は慌てて女の子の方へ駆け寄り、足を運ぶのを交代した。
すると女の子は男の子の後ろに着いた。
トーマスとヤンも、
足首を切られたダーホーの足を持ち上げ引き始める。
鹿島は子供達の負担にならないよう強く引くと、
子供達も負けまいと強く引く。
着陸地点のキャンプ場に着くと、
トーマスとヤンはかなり遅れて着き、
「隊長達、なんで軽々と運べるのですか?めちゃ重たいですよ!」
ヤンは肩で息をしながら両手を膝に置き、息を整えている。
総司令官マーガレットから通信が入った。
「閣下、トーマス’ワシントン上級陸戦曹長たちとの、
会合を予定のようですが、私とコーA.Iも聴視参加よろしいですか?内容によっては、陸戦隊全員に放映して欲しいとの事ですが、
了解していただけますか?」
鹿島はまだ炭にされるような、
体の変化はまだ無いので軽く了解した。
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