第13話 眼下は、戦国時代
八度目のジャンプは無事完了したとの知らせで、
皆は一斉にシートベルトを外すと、
この場を離れようとしているのを感じた鹿島は、
「番号」と呼びかけた。
陸戦隊皆は、全員が直立姿勢で十一名全員順番にせわしなく数え立てたが、
解散の声掛けでトーマスを除き皆一斉に駆け出していった。
「みんなどうしたの?」
「スクリーンに向かったのでしょう。
興奮しているのか、不安なのか、怖いもの見たさなのか?」
「すべてを含んでいるのかも?」
「隊長、この後は、どちらへ。」
「上陸作戦の命令をしなければならないだろうから、
俺、司令室で待機している。」
鹿島は、上陸作戦内容はオープンに出来ないので、
司令室の雰囲気を皆が悟れるように、
誰かに司令室へコーヒー三人分運ぶようトーマスに頼み司令室に向かった。
鹿島が司令室に入ると、マーガレットは自分の推測を混ぜながら、コーA.Iと会話していた。
マーガレットは鹿島に気付くと にこやかな顔で十五分後に、
青紫惑星の周回軌道に入ると報告した。
「最適な上陸地点は見つかりましたか?」
「候補は五か所ほど選定しましたが、
他の候補地をダントツに超え、
選定基準を80%超えた場所が見つかりました。」
選定基準について、コーA.Iからのまた長い説明が始まった。
鹿島の頭で整理すると、草食動物が多くいて食料の確保がたやすい。
土壌が豊かで植物性食料の生産が容易い。
三キロ先には大河があり、上陸地点の傍には広めの川も流れているので、飲み水と工業用水の確保がしやすい。
森林の脇なので、建築の材料確保がたやすい。
鉱物資源が近くに多く点在的にある。
敵対種防衛の壁に必要な岩山が近くにある。
最大の課題である、
将来銀河連合に帰る為に十万人都市を目指したいのと、
化学工業を発展させたいので、
周りには多くの人種や亜人が生息している。
人種の生存していない広大な土地や島々もあるのだが、
何故か敢えてその場所は、
人種が生存していない事を理由で無視したようである。
ほかに戦略的な発言がなされたので、
鹿島はマーガレットに確認することにした。
「戦略的に多数の人口を確保すると、聞き取れたのですが?」
「救助を待つだけでは希望が持てません。
科学を発展させ、帰還する努力も必要です。」
「で、この星を占領すると?」
「占領でなく、星座連合に併合です。法的にも認められた行動です。」
「併合には、相手の同意が必要では?」
「戦略、戦術を使う必要がありましたら、提督の戦力を使って下さい。」
「併合した後は?」
「教育を充実させて、知識を与えます。
そうする事で化学工場力をつけます。」
「ヒューマン似に、それが可能と?」
「コーA.Iは現在の現地文化から判断して可能だと、断言しました。」
「コーA.Iは信用できると?」
「コーA.Iは、多数の戦略を立て、
帰還出来る可能性を探しているのです。」
「戦略的な作戦計画は任せるが、
誰一人犠牲者を出さないよう、戦術は私が指揮を執る。」
鹿島にすれば戦闘に於いては、
常に戦場に居て指揮を執り、常に戦いたいのであろう。
鹿島はただ生き延びるためだけを考えていて、
銀河連合に帰る為の事など、何一つ考えたことがなかったし、
ましてや、工業力などと鹿島には考え等々及ばない壮大さである。
頭脳明晰なマーガレットの印象を、
更に【先見の明】を持つ人のようであると理解した様子でもある。
鹿島の心情は、矢張りマーガレット司令官を総司令官に任命し、
自分はただの陸戦隊司令官で、
現場の指揮をしていた方が、似合っているようであると決心した。
提督代理は象徴にしないと、命令系統が統一しないだろうから、
「マーガレット.パラベシーノ司令官を総司令官に任命する。
受理できるか?」
「拝命しました。して閣下の立場は?」
「陸戦隊司令官そのままにして、提督代理は象徴にしたい。」
「形象と外交用だけと。」
「そうだ。戦略的発動は、マーガレット総司令官から命令してくれ。」
「ありがとうございます!精神精鋭頑張ります!」
「コーA.I、総司令官の辞令を全員に発表してくれ。」
と言っているそばから、
「お待たせ~、コーヒーと紅茶です。総司令官殿は紅茶、
あたしらの司令官にはコーヒー。航宙技官殿にもコーヒー。」
鹿島は、ようやくコーヒーが届いたことで眼下に見える街を眺めると、四角い壁の中央にあるキンキら建物から煙があがっている原因は、眼下は乱世中だと確認できた。
鹿島は、今後の行動をまとめ切れないまま、
司令室を後にして、自室のベッドに横になりそのまま寝いった。
鹿島は、戦略責任の荷を少し下したためか、
帰還の可能性がある思ったためか、すっきりと目覚めた後に、
シャワー室に入り、思いっ切り頭からお湯を浴びた。
非常事態宣言以降は遠慮していたが、
今日は遠慮なく流すつもりになったようである。
軽めの携帯食料とコーヒーで朝食をとるが、
インスタントコーヒーながらも、いい香りはするようで、
満足げな表情で香りを楽しんでいる。
鹿島は今後の展望を思いめぐらしながら、
前線基地確保に向けての案をめぐらした。
戦略作戦によるが、偵察と前線基地確保が主なる任務になるだろう。
安全のためには、偵察と前線基地確保は別作戦で行い、
情報の少ない同時進行は危険性が高い為に、
先に精鋭にて偵察して、前線基地予定地が安全ならば、
全陸戦隊がその地域を確保したのち、
輸送艦着陸に備えなければならないとの、
自らの作戦行動を決めたようである。
司令室に入ると総司令官はいないが、
透明な強化壁から夜の青紫惑星に目を向けると、
夜の帳(とばり)で街並みと家屋は見えないが、
所々に街と思しき所で火事らしき明かりが見えるのは、
青紫惑星はやはり戦国時代なのだろうかと思わせる。
「おはようございます!閣下」
閣下との呼び名は、止める様に申し出ていたが、
今後マーガレットは補佐として振る舞いたいと申し渡された訳は、
軍事作戦中であり、軍隊の維持と規律、序列に基づいていると、
総司令官の立場からの忠告である。
「私は総督閣下の補佐として徹しなければなりません。
特にこれからは、軍隊を作り、国を興す必要があります。」
総司令官の主張は現在軍事作戦中であり、
今後のためにも規律と序列は軍隊を維持する為にも必要であり、
軍隊の基づくことだと改めて強調された。
鹿島は提督任務を放棄して前線だけにいたいと思う心を、
マーガレットには既に見透かされていたようである。
「これからの作戦は、決まりましたか?」
と、言って、それ以上の議論から鹿島は逃げた。
やはり、マーガレットからは、輸送艦の着地場所の確保が目的で、前哨作戦設定は偵察と前線基地確保にある旨を伝えられた。
「五名の強行偵察隊を選抜します。
その後は基地確保に、残り七名の陸戦隊を降下させて下さい。」
「降下させて下さい。とは、閣下も偵察隊として行かれると。」
「安全率を高める為には必要であり、
司令官であるが隊長でもあります。」
「了解です。二十四時間後、住居用脱出ポットで、
降下していただきます。」
陸戦隊全員を集め、今後の作戦を説明して、
トーマス曹長、ビリー陸曹、ヤン陸曹、ポール陸曹等四名を強行偵察隊に選抜した。
トーマスに調理一式、焼き肉二セット、食器は各自で用意し、細胞及び土壌調査感知器、
レーザーガンは各自携帯、レールガン砲三門、火炎放射器一門、防護アーマー着用しての各自戦闘態勢装備で、
二十四時間後に降下する事を伝えた。
「これらは、キャンプセットですか?あたしも行きたい。」
脳筋ムキムキ娘が甲高い声で叫んだので、
皆が爆笑してくれたお陰か、偵察隊の緊張していた顔がなごんだ。
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