第11話 人間似生命体

「艦長、探査目的の惑星は、地球星型惑星です。

生存可能95%、生命エネルギー多数。」


 マーガレットは、コーAIに起こされてベッドから跳ね起きた。


「コーAI、探査機十機を周回軌道での調査可能に設定せよ。

一機降下し大気調査後詳しく報告。

他の探査機はそのままで周回軌道を続行。」


 絶望的闇の中で、光陽が差したかのような顔のマーガレットは、

「もう悪いことは起きない。ついている。」


 マーガレットは、今誰かと一緒に歓声を上げたい気持ちになって、足早に指令室に向かいながら、

生存可能惑星発見に長期の生存を期待して顔がほてっているのに気づき、

気持ちを落ち着かせようと深呼吸をして艦長席についた。


「コーAI。地球星型惑星の七千㎞手前を目的点にして、

座標軸を探して座標設定せよ。

併せて、目的点の方向角度を調整して、航宙技官に伝えよ。」


 コーA.Iへの指示は、座標軸の調査と計算の大事さは、

新たなる座標点ワープ先設定に於いては、

各方面からの正確な距離と重力を調べなければならないからである。


「前方、左六㎜、下方三㎜に調整。距離四十九万光年。」

「航宙技官、目的点方向に出力二十%で、前進。」


 陸戦隊は、対敵戦闘マシーンに喜々ようようしているようだが、

訓練内容は不安を取り払うような、がむしゃらな攻撃訓練である。


 皆は、すでにわれらは宇宙で漂流迷子になったのではと、

誰もが思っているが、誰も口に出せない。


 たまに脳筋ムキムキ娘がいなくなり、

その後でケーキの差し入れがあるので、

皆は脳筋ムキムキ娘のことでも気にしなくなった。


「総督、司令室へお越しください。」


 マーガレットの高揚した声で、

鹿島は生存可能な惑星が見つかったのかとの思いが掠めたが、

鹿島は対敵戦闘マシーンから離れて対敵防護服を脱いでいると、

艦長の高揚した声に気付いたのか、

隊員たち全員が無言で鹿島の周りに集まった。


鹿島はトーマスにタブレットを渡し、

「生存可能な惑星を見つけたら、

上陸作戦に必要な物のリストを作成してくれ。」


 みんなが、ガッツポーズを決めている。

「まだ、準非常事態中なのです。気引き締めていろ。」

と鹿島は声に怒りを込めているが、顔は笑顔を隠し切れないでいた。


 鹿島はまたステップ足になりそうな気持を抑え通路を左側に曲がると、

通路奥の指令室には出迎え体制のマーガレットが笑顔と直立姿勢で待っていた。


 そのままの体制からジャンプしたとしても、

不自然さはないにこやかな顔である。


 観音菩薩の生まれ変わりか、ヴェーナスの再来かと、

思わせるマーガレットの笑顔に、情緒豊かな心の性格だろうと、

鹿島はマーガレットの分かりやすい表情に癒されると感じながら、

見通し暗い漂流中でも安心感と信頼関係を保させてくれる。


 鹿島はマーガレットの情緒豊かな心の性格で癒されている自分に気づき、胸には更に憧れと恋心が奥底から湧いてきた。


 鹿島は司令官席を進められて着席すると、

マーガレットは席横に立ち、

前方スクリーンに青紫の惑星が映し出された。


「コーAI。提督に生存可能なこの惑星の説明をして。」


「距離四十九万光年先の惑星で、大気分析結果は地球星型惑星です。人類生存可能95%以上です。

惑星の気圧は0.8気圧で、大気は窒素70%酸素28%他2%で、

地軸角度は五度なので、極端な気温変化は少ないでしょう。

気候は赤道付近だけが熱帯性で、極地付近の寒冷地を除き、

75~80%は亜熱帯温暖気候です。

続けてよろしいですか?」


 鹿島総督の退屈な気持ちをコーA.Iは見抜いたように、

鹿島に冷たい言葉を投げかけた。


 鹿島は慌てて、本能的に戦う相手を求めるように、

「危険性生物は、居るのですか?」

と、質問するが、


「どの基準から、危険と判断しますか?

生物の進化は、周りからの危険を防衛するための生き方です。」


 鹿島にすれば、最初に降り立つ惑星では、

常に危険と隣り合わせた経験からのことで、

コーA.Iは教育プログラムからの説明である。


 鹿島とコーA’Iのかみ合わない会話に、

業を煮やしたマーガレットが割り込んできた。


「主な生命体の割合辺りを説明して、

さらに詳しくヒューマン似と爬虫類種の説明を。」


 コーA'Iの説明から、ヒューマン類似においては十五億前後で、

ほとんどの類似は、強固な壁の中で生活しているとの事である。


 壁の中での生活原因は、

五千万人類似同士のグループに分かれて戦いあっている状態らしい。


 スクリーンに映し出される人間顔に、

人間似耳長種族顔と人間顔似猫耳亜人には驚かされたが、

亜人と言っても顔や体型は同じ人類に見えるし、

平均身長は165センチ前後であるようだ。


 生活は農業が主体で、

鉄加工は手作業で戦用が主であるらしく、まだ工業化はされてない。


 胴、銀、金が主な貨幣で、流通は発展している。


 文字はあり、動物の皮を用いた書籍もあるが紙はない。


 爬虫類に置いては、十五~七メートル前後の大型爬虫類は八千万頭前後、七メートル以下の中型爬虫類は二五億頭前後、

三メートル以下数の判断は計測不能。



 鹿島は一瞬、爬虫類と聞いてトカゲモドキかと思ったが、

恐竜型で大型爬虫類はティラノサウルスそっくりの恐竜である。


 映像からの動き方は、トカゲモドキ以下である。


 長い説明の後、マーガレットはコーA.Iに言語の取得方法や、

コミニケションの取り方と政治体制他、細かく質問を繰り返していた。


 特に政治体制には、

銀河連合の歴史との照らし合わせての質問が多いようである。


 鹿島に理解できたことは、コーA.Iからの情報では

、敵か味方かの判別は、自分でしなければならない事の様である。


鹿島の頭では、長時間の数字による長い説明をされると、

頭の中は飽和状態になるので、簡単に説明してほしい様子だ。


「三時間の説明は長すぎる。マジで提督を辞退したい」

と、等々呟いていた。


 鹿島は探査作戦完了を宣言し、

青紫色の惑星へ周回軌道及び上陸作戦発動を艦長に伝え、

ジャンプ時間を知らせるよう命令して肩を落としながら司令室を退出した。


 鹿島は小ホール室に肩を落としながら入ると、

皆はうつぶせ寝している。


「どうしたみんな、何があった。」

脳筋ムキムキ娘が、手を挙げて、

「わかるように説明して!」


 情報共有の為に映像をオープンにしていたが、

陸戦隊には理解できにくい内容であった様子である。


 専門的な知識を持つコーA.Iの説明では、

余計に混乱したようでもある。


 鹿島は仕方なしに、

「ヒューマン似がたくさんいて、戦争をしている。

大きな恐竜が、闊歩している。

森林は陸地の80%占めている。

海は惑星表皮の65%である。

鉱物は、豊富で地面から十メート前後のところが多い。」


鹿島は説明を簡単に済ませたが、

それだけで隊員たちは、おぼろげながら何と無く理解したようである。


陸戦隊は、鹿島を含めて全員が脳筋ぞろいらしい。


 ひょうきん者のホルヘゴンザレス陸士は、

「トカゲはすべて駆除しましょう。」

と言って、調理室へ向かった。


 調理室から、コーヒーの匂いが漂うと、

陸士達がカップを全員の前へ置いていき、

ホルヘが皆に給仕してまわった。


 鹿島達がコーヒーの香りを楽しんでいると、

艦長からジャンプ時間帯27分間も付け加えられて、

60分後のジャンプ予定を知らせてきた。

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