第5話 じっとしていても仕方ない、よね
「えっと……、ここは……?」
思いもよらない自らの新しい力に呆然としていた
しかし見回した範囲に集落のようなものはなく、また見覚えのある景色でもなかった。
「とにかく人のいる所に向かわないと」
表面上は気を取り直して動き始めた才であったが、行き先を自分が住んでいた――つまり藤堂家が居を構える――ネレイダとしないところがその心情を表していた。
とにかく歩き始めた才は、少しでも気を紛らわせるためと、先ほど使えた『召喚魔法』について考え始める。
「ゾンビ召喚っていうくらいだから、あの仮面の人はゾンビなんだよね? まぁ味方であることは間違いなかったみたいだけど」
ただ敵対しなかったということではなく、友好的な雰囲気すら感じたということが、才にとって少なからず安心材料となっていた。
「精神力もほとんど消費しなかったし……、必要なら何度でも呼べそう」
一般的にスキルを使用するには体力や精神力を必要とする。特に魔法系スキルは体力をほぼ消費しないかわりに精神力を大きく消費するものが多くあることが知られていた。『召喚魔法』に関しても、伝説に名を残すようなモンスターを呼び出せるケースでは行使者が一回のスキル使用で気絶することもあるほどだった。
ゾンビは一般的に弱いモンスターであるし、そこから考えてゾンビ召喚がほとんど精神力を消費せずに使えることは不思議ではない。しかし、“あの”仮面のゾンビがそれほど弱いとは、才には考えられないのも事実だった。
「試してみるしかないよね……」
検証する必要がある、という気持ちと、ついに使えるようになったスキルを一度でも多く使いたい、という気持ちを半々に持ちながら、才は歩きながらも周囲を見回してその機会を探そうとする。
「んん? あれってモンスターかな?」
よくよく目を凝らすと遠くに動くものが見えていた。
「あ! あれ襲われてるの人じゃないか!?」
自分の欲求は脇に置いて、才は学生時代にも意外だと言われることの多かった健脚で何かが動く方へと走り出すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます