第10話 体育(優花編) 前編
航平君とケーキを食べた翌日。興奮して早く寝付けなかったせいか寝坊した私は急いで学校に向かった。
学校に着き教室に入ると航平君が独り言を言っていたので声をかけてみる。
「バスケがどうかしたの?」
「いや、懐かしいなと思って…ってうぉ!?」
やはり、周りが見えていなかったのかイスから転げ落ちそうな驚き方をした。やっぱり可愛い。
「そんな驚くことないじゃない」
「ごめん。ちょっと考え事してて」
「バスケのこと?」
「まあ、そうなんだけどさ」
「航平君って帰宅部だよね?バスケ昔やってたの?」
「まあな、昔ちょっとな」
航平君はどうやら私に隠してることがあるらしい。なんかモヤっとするな…。すると松田君が航平君のところに来た。松田君、ちょっと苦手なんだよな…
「おいおい、ちょっとじゃないだろ。中学まで一緒に部活やってたじゃねえかよ」
え?そうなんだ。バスケやっててやめたんだ。知らなかった。でもなんでやめちゃったんだろ?怪我?それとも…
「そうなの?じゃあなんで高校になってやめちゃったの?もしかして、下手だから?」
あっ…酷いこと言っちゃったな…そう思い謝ろうとすると
「いやいや、逆だよ逆、中学ではエースだったんだぞ!怪我してからは振るわなかったけどな。」
えっ!?エースだったの!?申し訳ないけどそうは全然見えない…なんてね。
「エース!?こう…赤坂君が!?」
「全然そう見えないだろ、こう見えても上手いんだぞこいつ」
「一言余計だ。それにバスケは趣味程度だから上手くないだろ別に」
そういえば、航平君の中学ってどこなんだろう?
「赤坂君って中学どこなの?」
「古畑中だな。全国じょう」
「えっ!?古畑中!?全国大会常連じゃない!?赤坂君も古畑中だったの?しかもエース?」
いきなり大声で割り込んできたのは斎藤さん。松田とカフェに行ってた女子だ。付き合ってるのだろうか?しかし、古畑中と言えば、私でも知ってる。確かにバスケで有名な中学だ。でも赤坂航平なんて名前、聞いたことないな…なんでだろ?
「あ、悪い。ノートありがとな!これで俺は生きていけるぜ!」
そう言うと松田君は自分の席に戻って行った。宿題くらい自分でやりなさいよ…
いつのまにか斉藤さんもいなくなっていたので、航平君に話しかける。
「ふーん。航平君が有名中学のバスケのエースとはねえ…ほんと、全然そうは見えないわ」
「うっせ、昔の話だよ」
「でも続けてるんでしょ?今日の体育、期待して見てるね」
「やめてくれ、俺は今回も目立たないように隅でひっそりやるんだから」
なによそれ。堂々とやっていればいいのに。そう思って航平君を見ると机にうつ伏せになろうとしている。あと5分もしないうちに授業始まるの分かってないのかな?
「…もう授業始まるよ?なにうつ伏せになってるの?」
「え?マジ?」
私は軽く頭を抑えるとバレないようにため息をついた。
1、2限が終わり、3限の体育。女 私たちがが教室で着替えていると
「今日の体育バスケだね優花!優花ってバスケ出来るの?」
同じクラスの秋元ののはさん。よく話す仲だ。
「うーん。ちょっと苦手かも。ボール大きいし。」
「だよねー、飛んでくるの怖いわ〜。うちのクラスの女子バスケ部いないから助かる〜」
そのとき、周りで大きな声が聞こえてきた。
「やっぱ小山田君だよね〜!」
「いやいや、森本君だよ!」
「私、小山田君に1票!」
「私も〜」
「えー、森本君の方が上手いよ〜」
どうやら、男子バスケ部の話しみたいだ。ののはに聞いてみよう。
「何話してるんだろね?男子のこと?」
「森本君と小山田君、どっちが上手いかって話しじゃないかな。ほら、うちの男子バスケ部結構強いし」
「へぇー、ってあれ、男子バスケ部なら松田君は?」
「松田…君?えと…あー!うん、そうだね、松田君もバスケ部だ!」
松田君…認知すらされてないみたい。不憫…
すると、ののはの声が大きかったせいか、周りの女子が集まってきた。
「え〜、吉崎さんと秋元さんは松田推し?」
「意外〜」
「いやいや!私はちゃんと小山田君推しですぅ〜!」
「あーよかった。松田推しとか、趣味悪!って思っちゃったよ。ごめんね」
謝るのはののはにじゃなくて松田君にだと思う。
「吉崎さんは?」
「優花もやっぱり小山田君だよね!?」
「えと、うーん…」
どうしよう…航平君とは言えないし、小山田君も松田君も森本君も、路傍の石…もといそこら辺のクラスメイトにしか見えないんだよね…
「優花?」
「いや、私は特に…誰っていうのはないかな。バスケ部以外にもバスケ上手い人はいるだろうし、色眼鏡で見たくないっていうか…」
「なんでだろう。優等生解答腹立つ〜!って言いたいのに、吉崎さんが言うと腹立たないや」
「確かに!なんでだろね?」
「まあいいや。ごめんね邪魔しちゃって」
「ううん。気にしてないよ。それより早く行かないと遅刻しちゃう」
私たちは小走りで体育館に向かうのだった。
「ふ〜、疲れた〜。優花もお疲れぃ」
「ありがとののは」
今はちょうど私たちの試合が終わったところだ。2点差で相手チームに勝つことができた。
「キャー!小山田君!」
「小山田君頑張って!」
「小山田君ダンク見せてー!」
どうやら、次は小山田君達の試合のようだ。周りがすごいピンク色の声援を送っている。
「お!次小山田君の試合!優花もいこ!」
「あ、うん」
小山田君に興味はないけど、やることもないしののはに付き合うか。そう思って男子コートを見ると
(あ!航平君!)
なんと、小山田君達のチームの相手は航平君のチームだったのだ。しかし、航平君のチームはいかにも余った人の集まりといった感じだ。
「これは小山田君達楽勝かな?」
「そうだね。あはは…」
私はもう一度航平君の方に目を向ける。すると彼はなんとコートの端の方の目立たない所にいるではないか!
(何やってんのよ!まったく…)
思わずため息をついてしまう。すると
「優花?どうしたの?今見てたのって…赤坂君?だっけ。なんかあったん?」
「いや、特に何もないよ。ただ、しれっとサボるのかなって」
「お、さすが委員長。めざといですなぁ」
なんとか誤魔化せたみたい。
そしてあと数分もしないうちに今試合開始の笛が鳴り、ジャンプボールから試合開始だ。
私は航平君に期待の目を向けて試合開始を待った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます