第11話 体育(優花編) 後編
「試合開始!」
ジャンプボールを小山田君が取る。すると一気に小山田君は航平君のチームを抜き去り、レイアップ?を決めた。
「キャー!小山田君カッコいい!」
隣から歓声が上がる。やはり小山田君は人気のようだ。
試合はしばらく続き、小山田君の独壇場だった。体育館が大歓声で包まれる。しかしわたしはそれどころではない。
(なんで航平君は何もしてないの!上手くボールから距離取って…)
私は航平君の態度に不満だった。小山田君なんてどうでもいい。航平君の活躍を楽しみに見てるのに!
そう怒っていると、松田君が痺れを切らしたのか
「おい!小山田!そろそろ寄越せ!」
「悪い!ほら、松田、お前もスカッと決めてこいよ!」
「よっしゃ任せろ!」
ここで松田君にボールが渡る。すると歓声も小さくなる。松田君が可哀想に思えたが、それどころではなかった。
(ついに航平君が!)
松田君と航平君の1対1になったのだ。
「ーっ〜!」
「〜、ー」
ここからじゃ聞こえないけど、何か話しているみたい。
「ー〜!」
「〜っ!?」
ん?航平君の目が変わった。めんどくさそうだったのがやる気に満ち溢れてる目に見える。うん。やっぱりかっこいい。
「おい松田!何やってんだ!喋ってないでさっさと決めろ!」
小山田君の催促をきっかけに止まっていた場が動く。
誰もが松田君が航平君を抜き去ると思ったその時、航平君は一瞬で松田君からボールを奪い、立ちはだかった小山田君をも抜いてレイアップ?を決めた。
「航平君…カッコいい…」
「んー!?」
いきなりののはが顔を近づけてくる。近いって!?するとののはは耳元に顔を近づけると
「もしかして、優花って赤坂君のこと好きなの?」
「にゃ、にゃんで!?」
「だって、小山田君のプレー見ても、白けた顔してたのに、赤坂君のプレーにはすごいキラキラした目向けてるじゃん」
「う、うう…」
ののはってエスパーなの!?うわぁ…どうしよう。恥ずかしすぎるよ…
「にしし。まあ誰にも言わないから安心してよ。2人だけの秘密ってやつ?」
「お、お願いね」
「オッケー、任せて」
とりあえず広まることはなさそう。ののはがいい子で助かったよ…。
「えっあれ誰?」
「多分…赤坂君…?」
「いやいや、そんなまさか、あの目つき悪い赤坂が?」
周りのクラスメイトも驚いているみたい。でも、航平君目つき悪いかなぁ…?
ところで、なんで斉藤さんと明石さんは航平君にそんな輝いた目を向けてるのかな?
「ちょっ!優花ストップストップ!」
「えっ?ののはどうかした」
「どうかした?じゃないよ!今坂口さんと明石さんにすごい目向けてたよ!?」
「いや、群がろうとするうじむ…人を排除しようとしただけよ?」
「今蛆虫って言おうとしなかった?はぁ…そもそもこんなバスケ1試合で赤坂君に惚れる女子はそうそういないって」
「そうよね!良かった…」
「まあ、今回の見て航平君のファンは増えるだろうけどね〜」
「………航平君のファンが増える?ファン?それって、航平君に有象無象の女子がまとわりつくってこと?なんで?許さない…」
「優花!?ちょっと落ち着いて!きっと大丈夫だから!ね?」
「え、あ、うん」
私、何かしたっけ?そう思いながら航平君の試合を眺めた。
体育の授業が終わり、お手洗いから教室に戻ると、まだ小山田君と松田君が航平君をバスケ部に勧誘していた。
「いやいや、そんなこと言うなって。絶対レギュラー狙えるだろうし!やろうぜ?な?」
流石にこれは見てられない。うるさいし、航平君が迷惑している。
「ねえ、うるさいんだけど。他所でやってくれない?」
「ごめん吉崎さん。じゃあ赤坂、向こうで話そうぜ」
「いや、だから入らないって…」
「実はな、2年生の超可愛い女子マネージャーがいるんだよ、紹介してやるから、な?
「マジ?おやま…っ!」
航平君の足を思いっきり踏む。なに手のひら返しでデレデレしてるのかな?
「おやま?ああ、心配するな、大きなお山が2つあるぜ」
「へぇ…」
馬鹿なことを妄想しているであろう航平君の足をグリグリ踏みつける。わき腹もつねってやろうかしら?
「…小山田君。赤坂君も迷惑してるし、もう諦めたら?」
「いいや!俺は諦めない!赤坂はバスケの逸材だ!」
…航平君をたぶらかして、何を言ってるんだろうこいつ?
「小山田君?」
「い、いや、だから誰が何と言おうと…」
「………」
「わ、わかった。赤坂、また今度な…」
「あ、ああ…」
そう言って小山田君はやっと戻っていく。最後私の方をチラチラ見ながら帰って行ってたけど、なんでだろう?
「あ、ありがとう吉崎さん。助かったよ」
ん?なんか他人行儀な気がする。さっきの下衆…じゃなくて小山田君が言ってたマネージャーの話しに反応したり、何を考えているのだろう?
「吉崎さん?」
「い、いや、優花、ありがとう…」
…少し腹が立つから問い詰めることにする。
「別にいいけど、今女子マネージャーに釣られたでしょ?」
「け、決してそんなことは…」
「…」
「…すみませんでした」
ほらやっぱり。でも、ここで余裕を見せるのが1人の女性として模範のはず。今日は航平君頑張ってたし、許してあげようかな。まあ、浮気したら許さないけど。大声で言うのは恥ずかしいので、航平君に顔を近づけて
「でも、今日の航平君、カッコよかったから許してあげる」
そう言って、次の授業の準備を始めた。
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