第40話 懐かしい日々 

 コウと真由はマラソンで走ったコースを歩いていた。


「懐かしいなあ。半年前にここを走ったんだな」

「あたし、足を挫いちゃってコウにつかまって歩いたんだった」

「そうだったね」


 その時に初めて真由の形や体に触れて、ドキドキしていたことを思い出した。


「散歩しようよ」

「いいねえ」


 あの時は秋の日の午前中。銀色に輝くイチョウの葉や、赤く染まった木々の葉が美しかった。そんな景色を楽しむ余裕などなかったが、季節は確実に移り替わっていた。

 今では、葉が落ちて枯れ枝ばかりになってしまったが、桜の花が咲き誇っていて見事だ。風に乗って髪の毛や道の上ににはらりと舞い降りてくる。真由の髪の毛にまとわりついて、まるで髪飾りのようで美しい。


「これからもこの道を一緒に歩けますように!」

「誰にお願いしたの?」

「遠い空の向こうにいる誰か」


 空は、青く澄んでどこまでも高かった。



――それから半年後――  


 コウと真由たちは撮影を終え、文化祭に臨んでいた。高校生活最後の文化祭だ。夏休み中に何度も集まり撮影をした。ビラを貼って宣伝もしてあった。


 教室の電気が消える。暗がりの中で映画が始まった。大人になった男女の主人公が別々の道を歩いて行くところから始まり、最後には手を繋いで去っていくラストシーンで終わった。


 椅子を並べて作った客席からは「ヒュー、ヒュー」という冷やかしや、拍手の音が鳴り響いていた。電気が灯され、出演者一同が前に進み出た。


「今日は僕たちの拙い映画を見てくださりありがとうございました。ちょっと恥ずかしいけど、自分にとって最高の出会いが出来た日々を記念に残しておこうと思いたち、この映画を作り始めました。皆さん見に来てくださって、ありがとうございました」

 

 四人はお辞儀をした。


「撮影に協力してくれたクラスのみんな、放送委員の人たち、担任の岡本先生、ご協力ありがとうございました」


 後ろでは、岡本と一緒に、姉が手を振っていた。


 全員の挨拶が終わると、軽快な音楽が流れ、観客たちは手を振って教室を後にした。


「また、行事が終わったから打ち上げね!」


 レイナがいった。彼女がいると湿っぽくならなくていい。


「じゃあどっか場所考えとくよ」


 敦也が言った。


「それじゃあ、片付けの時間にまたな」


 コウは、二人に手を振り真由にいった。


「さて、二人で他を見に行こう」

「行きましょう」


 二人は、昼食用に財布を持って歩きだした。



---------最後までお読み頂きありがとうございました--------

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