特級戦力
「アデル君、無事かい?」
目の前には、金髪金眼の見た事もない服装をした青年が立っていた。
「ギルド長、邪魔をしないでください。これほどの人が
アデル君の処刑を楽しみにしているのですよ?」
「断わる。」
はっきりと言った。さっきまで、俺を殺そうとしていた男が、
俺を守るために今大勢の人間と相対している。
「異装、ですか。」
神父の興味は俺からそれ、ギルド長の鎧と刀に惹かれていた。
「いいのですか?あなたがギルド長である1つの理由、異装の使い手というのが壊れますよ?」
「ギルド長?はっ!俺はもう一介の冒険者に戻った。」
堂々と、とんでもないことを吐き出す。
「え?ギルド長?」
俺が驚きの声をあげると、
「ランドだ。」
「え?」
「ラ ン ド、俺の名前だ。次ギルド長って呼んだらぶった斬るぞ。」
そう言ってギルド長は神父の方へ向いた。
「アデル、逃げろ。」
そう言ってくるギルド長の背中は、何故か大きく、頼もしく見えて。でも、何か嫌な予感がして、反射的に、
「嫌だ」
そう言っていた。
「手足の拘束は既に壊してる。足でまといだから逃げろと言っている。」
ランドの言う通り拘束は少し力を入れるだけで壊れた。
「あ、う」
磔になっていた状態からの軽い落下。
これだけで俺の体は崩れ、立ち上がることが出来なくなる。
「その体で、どうする気だ?」
「戦うさ。ランドは逃げろと言うかもしれないけど
この体じゃどのみち逃げてもすぐ捕まる。」
「だからと言って、戦うこともできないだろう?」
「いや、できる。ここにいる。それが俺の戦い。
この現実から、目を逸らさないことが俺の戦いだ。」
「うん、カッコイイこと言ってるのはわかるんだけど、今この状況じゃ本当に足でまといなんだよね。だから、」
ふっと体が浮いた。しかし、その感覚は一瞬で消え、背中から強烈な風を浴びるようになった。
「逃げるよ。」
神父たちが、どんどん遠のいていく。
数分後くらいだろうか、
「アデル君、逃げ切った。下ろすよ。」
そう言われ、俺は地に足をつけた。
「なんで、俺を助けに来たんだ?」
助けに来てくれたことは感謝している。でも、ああなったのは全てこいつのせいだ。それなのに途中で助けに来る?何か目論見があるとしか思えない。
ランドは少し言いにくそうにして、
「実は、食堂の嘘が発覚したんだ。君が見せてくれた晩御飯、あれを君はこのまま持ってきたと言っていたね。手をつけていないと。それを私は食堂の人に聞きに行った・・・・・・。
でも、それじゃダメだった。信用していたというのも大きいが、やはり自分の目で見るべきだった。
私は真実を見た。いや、聞いたという方が正確か。
詳細は省くが、君の言っていた事が正しかった。」
「だから助けに来た...と?」
「そうだ。」
「助けに来てくれたことは嬉しいし、俺のことを認めてくれたのも感謝する。もう帰っていいよ。」
素っ気なく突き放す。
「いいや、帰らん。俺は今から一人の冒険者としてお前と旅をするつもりだ。」
何故か胸を張って言ってくる...。
「お、俺では力不足か...?」
しゅん...と肩を大きく下げ自分悲しいアピールをしてくる
こいつに段々と毒気が抜かれた。
「わかった。一緒に行こう。」
戦力は多い方がいい。それにギルド長ってことはここら辺で最上級の強さをもつということだ。
連れて行くメリットも多いはず。
「よし、じゃあ行くか。」
ランドが大きく1歩を踏み出す。
「おい、どこ行く気だ?」
ランドの足は街の方へ向いていた。
「街だが?準備とか色々。」
「あんなことをしでかして戻れるわけないだろう。」
「それもそうか...。」
俺は、新たな戦力を手に入れた。
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