どうしてこうなるんだよ...
「モーリーはお前が殺したのか?」
ギルド長と呼ばれていた金髪金眼の青年が射貫くような目で見てくる。
「そうだ。」
誰も、俺すらも見ていない事。
でも、あそこにいたのは俺だけ。モーリーを倒せるのも必然的に俺だけになる。
「ふむ...。他に仲間は?」
「一人いた...。」
チヅルの死の瞬間が脳裏に浮かぶ。
「死んだのか。それは、すまない...。」
「別にいい。あんたのせいじゃない。」
「じゃあ次だ。グリズリーが胸を抉られた死体が一月前発見された。君はこれについて何か知っているか?」
「知らない。」
嫌な予感がする...。
「そうそう、その死体には肉をとった形跡があるんだよ。」
「俺を疑ってるのか?」
「まあね、モーリーを素手で殺してくるやつは警戒して当然だ。」
気質が変わった。
「そう言えば、その位の時期にバルカス領の領主の息子が才能を貰えなくて家を追い出されたって話を聞いたな?」
こちらの全てを見透かすような目が俺の体を貫く。
「確か、あの森の中にバルカス領とこことを結ぶ隠し通路があったはずだ。」
「あ、そう言えば君の名前を聞いてなかったね。教えてくれるかい?」
こいつ、間違いなく俺をアデルだと確信してやがる。
なら、教会関係者を呼んでいてもおかしくない。
今、こうやって尋問のフリをして時間稼ぎをしているのかもしれない。
なら、俺がとれる行動は一つ。
「俺はアデル。バルカス領領主の元息子だ。」
真実を明かす。
ギルド長は満足気な笑みを浮かべ
「やっぱり」
そう言った。
「で?俺をメルク教会に渡すかい?」
金を儲けたいなら間違いなくそうするだろう。
「いやいや、私の冒険者ギルドでは力が全て。そこに、身分や才能は関係ない。君はほとんど単独でSSランクの魔物を倒した。
そんな強者をわざわざ殺させる訳にはいかない。」
「本気で言っているのか?」
「もちろん本気さ。なんならうちで匿ってあげてもいいよ?」
ギルド長の目に嘘は見えない。
完全なる好意でこいつは言っている。
「頼む。少しの間でいい。匿ってくれ。」
少し位、周りに頼っても、いいよな...。
その日から俺は冒険者ギルドのギルド長室の隣にある仮眠部屋に住むことになった。
ギルド長曰く「匿うなら念の為に護衛みたいのが必要だろう?」
とのことでギルド長がその護衛らしい。
これで安全だ。そう思った夜。それは起こった。
「飯は?」
晩御飯は、今日なかった。
「ぎ、ギルド長?俺の晩飯がないんですが。」
不思議に思い、ギルド長に聞いてみる。
「ん?あれ?ほんとうかい?明日持ってくるよう言っておくよ。
今日は少し我慢してくれ...。」
「あ、はい。わかりました。」
俺はその晩を何も食べずに過ごした。
明くる日の朝。朝食は、出てこなかった。
ギルド長も食べている気配はなかった。
ギルド長が食べてないから俺の所に来ないのだろう。
「飯...。」
昼になっても、運ばれては来なかった。
夜。ようやく飯が運ばれてきた。それは、
魚の骨、肉の骨、茹でた山菜、栄養満点!だけど味は最悪のアカパン。これだった。
もはや料理とは言わない。残飯処理だ。
「おい!」
流石にこれはない。
既に料理を運んできた人は去っていて返ってきたのはギルド長の声だった。
「どうした?」
「飯が残飯みたいなんだよ!」
ギルド長と約束した匿ってる間は敬語を使うというのを忘れるほど怒った。
「む。それは、私のギルドの食堂の飯が残飯みたいだということだな?」
「違う!ホントに残飯なんだよ!」
「もういい。君に飯はやらん。」
「なんでそうなるんだよ!?」
「食いたくないのだろう?ならば食わなければいい。」
「見てくれよ!俺に運ばれてきた料理を!」
「いいだろう。見せてみろ。」
「アデル君、君は、君が食ったものを私に見せて残飯だと言い張るのか?」
「は?俺はまだ手をつけちゃいない!」
「じゃあ、何故肉と魚が骨だけになっている!」
「だから、その状態で運ばれてきた来たんだって!」
「食堂の奴らに確認をとるぞ?」
「確認?ならとってこいよ!それで俺は食べてないってわかるんだ!」
「じゃあそこで待っていろ。いいな?」
ギルド長は出ていった。
「なんで、そんな風にとるんだよ...。」
「アデル君。今日から君に食事は一切与えない。今食堂に確認したが、残飯は既に処理されていた。つまり、今食堂から残飯はだすことが出来ないんだ。」
「な...。ふざけるなよ!?」
「ふざけているのは君のほうだろう!?私は君に部屋を貸し、食事も与えた!それなのに、君はギルド内の食堂の評価を落とそうとする!恩を仇で返すとはまさにこのことだろう!部屋はまだ貸してやる!それに感謝するんだな!」
もう、何も言い返せなかった。
また、裏切られた。
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