モーリー売却
それから俺は、大部分が焼けた森を
家にあったフード付きのコートを頭から被って出た。
当然、モーリーの死体も持って。
すぐ近くに、街がある。
そこで売って金を得てから船でも使って別の場所に行こう。
ズッズズズ
背が160も超えない身長ではモーリーの巨躯をまともに持つことができない。
結果、今俺はモーリーの頭を背負って体を引きずるような感じで門前まできた。
目の前の守兵は困惑を隠せないようだった。
それもそうだろう。目に光が灯っていない子供が、自分の体より大きいものを運んできたんだ。
俺は守兵の前まで行くと、
「冒険者ギルドに用がある。」
とだけ囁いた。
「ど、どうぞ...」
身分の確認も何もされないで通ることが出来た。
街に入った後は、街の人に道を聞き、冒険者ギルドについた。
冒険者ギルド...。
全冒険者を統括する団体。この世界で人間が出せる最高戦力を保持するのがここだ。ここでは、誰もが依頼を出すことが出来る。
当然それに値する金を払わなければならないが。
今ここに来たのはモーリーの売却のためだ。
それがなければこんなリスクを負った行動はしたくない。
冒険者ギルドの扉を開く。
ギルドの中は、お祭り騒ぎだった。
なんの騒ぎか耳をすませる。
「グリズリーを殺した魔物を殺したんだって?いやあ凄いなあ。」
「森全部焼いたってほんとかよ!?」
「Aランクのグリズリーを一撃なんてことはSランク位の魔物だったんじゃないか?」
「ふっ結局魔物は火に勝てないんだよ」
聞いて、目を剥く。あの火は...自然発火じゃない...。
こいつらが、モーリーを殺すために放った火だったんだ。
つまり、みんな、こいつらのちっぽけな金稼ぎのために殺されたのか...。
ドクンッ
こいつらに、殺されたのか...。
ドクンッ
視界に、朱色が混ざり始める。
こいつらが!みんなを!
「あの、どうしました?」
ッ! 目の前には受付のバッヂを左胸につけた女の人が立っていた。
視界が元に戻る。怒りも、少し収まってる。
「すいません、買取、お願いできますか?」
いつもの調子に戻る。目に光が煌めく。
「はい!では買取カウンターまでいらしてください。
って、どうしました?」
「ここで買取してもらえませんか?ギルドの中に入らないんですよ」
「ギルドに入らない魔物!?」
受付嬢さんの声は周囲の騒ぎを無視してギルド内に響いた。
「おいおい坊主、誇張が過ぎんだろ。ギルドに入らない魔物なんかそれこそSSランクの魔物とかだろ?」
筋骨隆々の男が肩を叩いてくる。
「自分の目で見ればいい。」
イラッときた。だから、俺の後方に倒れているものに
視線を向けさせる。
「こ、これは...!!」
男は目を限界まで見開いている。
「わかったらどいてくれ。受付の人が見れないだろ。」
「お、おう。」
案の定、受付の人も固まった。
そして、こちらを向いて一言。
「ギルド長を呼んできます!」
「え、いや、早く売りたいんだ、けど...。」
言い終えた時には彼女は走り去っていた。
そして、
「今、鑑定士に見てもらっておる。」
俺はギルド長室に呼ばれ、ムキムキの男3人に囲まれながら鑑定結果を待っている。
「鑑定結果でました。SSランク、モーリーだと推定されます。」
「わかった。仕事に戻ってくれ。」
「で、何故君がモーリーの死体を持っているんだ?」
疑いの目を向けて、ギルド長がきいてくる。
逃げ場はない。これは、尋問か...。
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