潜入中3
「…………お……おい、しっかりしろ!」
急な呼びかけにビクッと体を震わせてしまった。
まるで夢でも見ていたような気分だ。
まだ頭がボヤボヤとする。俺はここで何をしていたのだ。
どこか霞がかったような思考にパンと両手で頬を打った。
「あれ、ナメロウ。どうした?」
「どうしたじゃないよ」
呆れた様子でナメロウは言う。そんなに重要なことに関しての集まりだっただろうか。
「そうですよ。話はまだ始まってもいませんよ」
担任の言葉に俺は何をしていたのかを思い出す。
そうだ俺はわざわざナメロウを帰らせてまで担任の依頼を聞くはずでいたのだ。目を瞑る支持を受けてそれから、
「すみません」
「いえ、謝られるほどのことではありませんよ」
「ないのかよ!」
さらっと謝罪を否定。そしてツッコミが入ったが担任はそんなこと起きていないといった様子で淡々と言葉を続ける。
「ええ、なので本題に入りましょうか。まあ、これからやることとしてはいっそナメロウ君まで意識を放浪とさせてくれてたら助かったのですが」
「なんでだよ!」
「細かいことはいいのです。とりあえず二人とも目を瞑ってください」
さっきからのツッコミを一切意を介さずスルーされさすがにナメロウも気にしているかと横を見たが特にそうした様子はなかった。
「スケロウ君。早く」
怒られてしまった。
言われるがまま俺は目を閉じた。ナメロウがすぐに行動に移したとは考えにくいがいつまでも反抗することもできまい。
ただひたすら次の指示を待った。
あくまでも時は平等でこんな時でもカチッカチッと時計は一定のリズムを刻んでいる。
「さあ、イメージしてください。弱い自分を、その姿を、ぼんやりとで構いません。しかし一つ、一箇所だけは強くはっきりと想像してください」
担任でも心の中までは見えていないだろう。しかし、素直にイメージする。
過去の夢を見ていたせいか背の低い少女のような先輩の姿がゆらゆらとまぶたの裏に現れた気がした。
そしてイメージは、少しずつ一箇所だけをはっきりとしてくる。見える。顔が、あの時の不安げに俺を見るような彼女の顔が。
「こんなので何ができるってんだ?」
ナメロウの言葉でふと現実へ引き戻された。イメージを継続していればどうやら禁止されていない発言という行為は反抗とはみなされないらしい。
担任は声に怒りをにじませながら、
「それはあとほんの少しの工程が終われば分かりますから待ってください」
と言った。
「ヘイヘイ」
この時ナメロウがちゃちゃを入れなければ担任の言葉どおりでほんの少しで終わったためもっと早く目を開けられていただろう。まあ、そんなこと結末にとってみれば些細なものでしかないのだが。
「さあ、終わりましたよ」
「やっとか〜」
この時も気づこうと思えば気づけたのかもしれない。しかしわからないフリをしてしまったのだ。
「目を開けなさい」
もうすでに日は暮れていたはずなのにやけに目に入る光が眩しかった。
まるで晴れた夏に外へ出た時のような刺すような陽射しが目を刺激している気分だ。
徐々にボヤボヤだった視界が明瞭さを取り戻してくるがいつもの教室に変わりは無かった。
机、担任、窓、黒板。
どれを取ってみてもここでは何一つ儀式の結果に関しての具体的な答えが得られず首をかしげた。
「なあ」
その時俺は自分の体。友のいた場所の大きな変化を察知した。
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