ゲーム世界へGO〜不思議な旅のワンシーン〜
「ぐわぁ!」
一体何が起きたのか理会をするのに数秒かかった。
たとえここが環境の変わりやすい場所とはいえ今回ばかりは受け入れ難い。いや、今回もか。
世界そのものの秩序が世界によって書き換えられるここでは人々はいち早く外へでようとするものだ。
しかし、私はそのランダム性を楽しみに生きている。
「それに今回は声もどこかザラザラしている」
今、視界に広がっているのはカクカクの世界。
どこまで見渡しても丸みを持たないこととなった現状に今までのなめらかな自分を重ねて少し悲しくなる。
こんな時でも切り替えが大切だ。
ここでの生活に慣れてきてわかってきたことはいち早く他人と話をして情報交換をすることだ。
たとえそれが見知らぬ人でも。
「すみません」
「ここははじまりの村だよ」
「いや、あのそんなことは聞いてなくてですね」
「ここははじまりの村だよ」
「ですから」
「ここははじまりの村だよ」
「まさか……!」
「ここははじまりの村だよ」
見知らぬ人だと思ったらこれは世界の変化で配置された存在。
さすがに住み慣れ、顔見知りも増えてきたと思ったがこれは新たな変化だ。
こうしてはいられない。
「知り合いを見つけないと」
「ここははじまりの村だよ」
「話しかけてない!」
「ここははじまりの村だよ」
ここははじまりの村だよ。という青年から離れたものの声が未だ頭の中でループしている。
「うるさい! うるさい!」
何でこんなことになるんだ。まったく幸先が悪い。
はじまりの村をどれだけ探しても見知った顔は無かった。人は居たがどいつもこいつも同じことしか話さないうえに金を持ってないとモンスターや頼み事で金を稼いでこいと言われる。大きなお世話だ。
どうやら今回の変化は相当大きく今までの進むのにサイコロが必要なすごろくのような世界やジャンプに効果音が付く世界とは根本から違ってしまっているらしい。
そもそも法定通貨が使えなくなっている。
見せれば、「それを売るなら1枚1円と交換してやるぜ」とか言いだしやがったのだ。これはそもそも1円なんだよ。と言ってやりたかったが無闇に荒事を起こしたくはなく辞めておいた。
「夜?」
「ここははじまりの村だよ」
村の入り口に戻ってきていたみたいだ。
まだほんの2時間しか経っていないはずなのにすでに日は落ちていた。
「あ! やっと見つけた。こんばんは、TAMIYAさん」
「どうもどうも。ちょっと歩きながら話しませんか?」
「いいですよ」
私は安心してTAMIYAさんの隣を歩いていた。気疲れを起こしていたのかもしれない。
時計は目に映るものの描写が荒すぎてまともに時刻は見えないがもう夜になるほど時間が過ぎていた。
それもあって油断していた。
「今回は特に大変ですよね」
「そうですね。ここでは何か食べられました?」
「TAMIYAさんはご飯が好きですね」
「もちろんですよ。ここでも味は変わらず感じられましたよ」
「そうですか。後で試してみます。あっ滝だ。なんか音が荒くてうるさいだけですね」
「そうですね。あっ」
「アアアアア!」
TAMIYAさんめがけて手を伸ばしたが届かなかった。
滑ってしまったのだ。よく見えなかったが滝の前なのに、下は地面も見えてる場所があるのに、柵は無かった。
何かないか?
どこを見てももう自分が助からないことしか示していなかった。
「ガッ!」
「ここは?」
「ここははじまりの村だよ」
「……!」
何でだ? 分からない。しかし、世界が変わった時に居た場所に私はどうやら居るらしかった。
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