第3話 師匠

「腹も満たされたことだし、少し寝るか~」

「あの〜、みなさん、何してるんですかね?」

「ん?」

「なんか、みんなして自分の体舐めてるんですけど〜」

「毛づくろいだろ」

「毛づくろい?」

「お前、毛づくろいも知らねぇのか?!」

「は、はい。毛に関してはご主人様がブラシをしてくれていました」

「今時の家猫ってのは、そんなにも過保護なんか!」

「すみません」

「毛づくろいは本能だと思ってたけど、違うんか?」

「ああやって、毛づくろい?でしたっけ?やり合ったりもするんですね〜」

「あぁ、まぁな」

「えっ、じゃあ、ちょっと僕にやってみてくださいよ〜」

「あぁ?自分のもしないのに他人のをするわけないだろ!」

「なんでしないんですか?」

「おらぁ・・・・・・いいんだ、これで」

「でも、毛づくろい?したら、毛並みが綺麗になるかもしれませんよ?」

「おらぁ、もう年だからよ、いいんだ。面倒くさい」

「年が関係するんですか?」

「そうだな。年とか、体形とか。病気した奴らもしなくなるな」

「そうなんですね」

「おらぁ、寝るぞ」

「ちょっと僕、毛づくろいに挑戦してみますね!」

「勝手にしろ!」


島は猫達のグルーミングタイムで静かになった。


「はぁ~寝ちまったな~」

「あ、起きましたか」

「お、お前ずっと起きてたのか?」

「はい、毛づくろいに夢中になってしまいまして。これ、やりだすと、止まりませんね!」

「そんなやってると、後で毛吐くぞ!」

「毛を吐くんですか?!」

「毛づくろいしてると知らない内に毛を飲んじゃっててな、上手いことうんちで外に出せればいいけど、胃に溜まると消化できなくてな、吐くんだよ」

「き、気を付けます!」

「でも、なんかお前、猫らしいじゃないか」

「本当ですか?!」

「あぁ、なんか猫っぽいぞ」

「あ、ありがとうございます!」

「おぅ」


「あの、今更何ですが、何て呼んだらいいですかね?」

「名前ってやつか?」

「はい。僕は因みにレオと言います」

「レオか……また定番だな」

「定番なんですか?」

「レオってのが主人公のアニメがあったらしいぞ」

「詳しいですね」

「ま、まぁな」

「みんなからは何て呼ばれてるんですか?」

「そんなの、相手によって違うだろ?」

「そうなんですか?」

「島民には長老と呼ばれるし、観光客からは猫ちゃんだろ?よくしてくれる斎藤さんには太郎だし、漁師の兄ちゃんからはジャスティン・ビーバーで、郵便配達員は毛がバサバサだからってバッサーって呼んでくるしな、色々だ」

「たくさん名前があるんですね」

「顔が広いからな」

「なるほど~」

「ジャスティン・ビーバーが一番気にってるんだけどな」

「なんか、かっこいいですもんね!」

「まぁ、お前は今のとこ、『新入り』でいいだろ」

「わかりました。じゃあ、僕は、『師匠』って呼んでもいいですか?いろいろわからない事、教えてくれるんで」

「師匠か~。悪くないな」


辺りはすっかりオレンジ色の光に照らされている。


「よし!さっき、島案内が中断になったからな。続き、再開するぞ!」

「はい、師匠!」

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