役と現実がこんがらがった俳優の話

高田の話

ピンポーン

「あ、すいません、ウーバーなイーツですー。」

高田「はいよぉー！こんな早いとは、どんな馬使ったんや！」

「え、いや、バイクです。」

高田「バイク？なんやそれ！なんの冗談じゃ！ほれ、見せてみぃ！」

目の前にはだっくだくのバイク。

高田「な、なんじゃこりゃ！う、馬は！馬はどこいったんじゃ！」

「え、」

高田「あ、」

「え、」

高田「あ、、え、すいません。いや、あのーそういう役を、やっておりまして、あー、すいません。」

「は、はぁ。…あ、えーっとー、ご注文のケンタッキーです」

高田「チキンだ！肉！食べていい？ねぇ！食べていい？」

「え、」

高田「あ、」

「え、」

高田「あ、すいません。そういう役を前にやっておりまして。すいません。」

「え、えっとー、ちなみにどんな役ですか？」

高田「肉豚戦隊ギュウレンジャーっていうのをやってまして、それの、レッドです。」

「や、やっぱりそうだ！ギュウレンジャーレッドのシゲ役の高田ノコギリさんですよね？」

高田「そうです。」

「あーやっぱりー。いや、なんか似てるなーとは思ったんですけど、あのセリフでピンと来ました。」

高田「ありがとうございます。」

「ギュウレンジャーからファンになって！あーすごい！大ファンなんです！」

高田「大ファン！？じゃあ、俺と今日、寝れるか？」

「あー！映画『しぶとい奴でもほどほどに』の久保田マサヅカ役の時の高田さんだー！」

高田「あ、すいません。こういう役を前にやっておりまして」

「大丈夫です！じゃんじゃん行きましょうよ！あ、ちなみに最初のやつってもしかして今撮ってるやつですか？」

高田「あ、そうです。」

「えー！すげーー！楽しみにしときます！！」

高田「すいません。役と現実がこんがらがってしまいまして。」

「いや全然オッケーですよ！むしろやってくださいって感じですよ！」

高田「ほんとですか？こんなに喜ばれるとは。今まで迷惑がられるばっかだったので。」

「ほんまやで！がはっ！がはっ！」

高田「なんじゃその笑いは！！気持ち悪いのぅ。犬も逃げてまうでや！」

「あー！ドラマ『金銭感覚』の豪華政孝役の時の高田さんだーー！huluでしか配信されてないからとてもレアだー！」

高田「うっせんだよっ！あっちいけっ！勉強してんだっ！俺は、勉強してんだっ！」

「あー！朝ドラ『もののけたち』のひろたか役の時の高田さんだー！高田さんの、デビュー作だよー！レアすぎ！ミディアムレア！いやレアの意味違う！わーー！」

高田「ふっ、うるさいけど、集中できる声の音程だ。君はいいナレーターになれるよ。」

「あー！ドラマ『奇々怪々のくうくうきい』のシブヤマサハデ役の時の高田さんだー！キャラ濃すぎて、いろんな人にものまねされたんだよなー！夏かP！超えてQ！」

高田「声に出さずともね。聞こえるんだ。ここに手を当ててごらん。そう。聞こえるだろう。これが彦丸くんの声、なんじゃないかなぁ。」

「あー！映画『Dr.タンノ』の鈴木輝役の時の高田さんだー！泣いたなー！手洗いぐらいだったら手伝えるんじゃないかなってくらい泣いたなー！なつかしー！」

高田「懐かしい…か。ハッハッハッ、私も古びた人間よ！あー…だからさ、だからあいつを殺した。」

「えーっとー、あ、あれかな？…ドラマ『朝早すぎる殺人事件』の第六話『明朝4時』の蔵金信孝役の時の高田さん…でしょうか…？」

正解言う人「正解！」

「だれ！？」

高田「ププ、ププププ。ブッ、ダメだ、笑っちゃうよ！」

「え、えーっとー。えー、あのー、あ、舞台『金子しずるの夢』の笑井康則役の高田さん…？」

正解言う人「不正解！」

「え、あ、え。というか答え言わないんだ、あの人。」

高田「お前は本当のファンじゃない！」

「くっ、ためされていたんだ。高田さんに。いや、え？どういうこと？この作品のタイトルは『役と現実がこんがらがった俳優の話』だよね？え、いや、まさか…！？」

高田「そのまさかだよ」

「…小説『役と現実がこんがらがった俳優の話』の高田ノコギリ役の高田さん…！」

正解言う人「正解！」

「やら…れた…」

はい、オッケーでーす！

皆さん、オールアップです！

高田「ありがとうございました！」

正解言う人「ありがとうございました！」

「え、え？え、え？小説『役と現実がこんがらがった俳優の話』が映画化され、『荷物の刃』にタイトル変更され、映画にはやっぱできないってなってドラマ『荷物の刃』の高田ノコギリ役の高田さん？」

正解言う人「正解！」

「え、ええぇーーー！」