第58鮫 タイタンシャーク
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SIDE:鮫沢博士
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一応魔王のおかげでマシにはなったが、敵の数は減らず、サメティマスも修理が間に合わない故にどんどん消耗戦になっていく。
このままだとどこかで限界が来てしまいそうじゃわい。
そう思うと、一言声が出てしまったのじゃ。
「彩華やー、早く来てくれんかー!」
しかし、この叫びは決して諦めたから出たものでは無い。
わしの
「助けに来たぜ……ぇぇええええぐわあああああああ!!! 安全運転してくれよ!」
「こんな非常時に安全のあの字もあったもんじゃ、ありまセーン!」
そして、予想通りカニの甲羅でフレームが揃った刺々しいバイクに股がった彩華がわしの元に来た。
やはり、信じるべきは相棒じゃわい。
「彩華、このままじゃ大工が持たないんじゃ!」
「マジで100は敵がいるじゃねぇか、良く保てていたな。ていうか予想はついてたけどまた変な木製サメに乗ってるのか……」
何、彩華がいるなら百人り……いや
一方、ハンチャンはカニ軍艦へと変形し、それと同時にセレデリナはサメから人に戻っていったのじゃ。
「そろそろ時間が無いでショウ? バトンタッチデース。アー、それはそれとして最悪の結果が発生してますネー。嬉しくない
「ありがとう、あと20秒もなかったから助かるわ! ただ、あの黄色い大きな布を纏っている巨大なシャケ科の魚人は例の護衛対象であるバーシャーケー王で……私とおじいさんのサメ友だから殺さないように倒して!」
「サーモンキングがシャークフレンズ!? こちらとして困ることは多いですガ分かりましター、お任せ下サーイ」
ついでにか鮭王の現状もある程度やり取りできた。
本当はわしの手で布を壊したいところじゃがそのためのサメは用意できんし、ハンチャンに任せるしかないじゃろう。
そう思いサメティマスに彩華を乗せようとしたのじゃが、鮭王と取っ組み合ってるハンチャンに止められたぞい。
相変わらずスピーカーで響き渡るから至近距離じゃとうるさくて仕方ないわい。
「そんなオンボロシャークじゃどの道あいつらを食い止めるのが精一杯デース」
「なんじゃと!」
気にしていることをいちいち突いてくるとは、なんと言う
「落ち着け、ハンチャンはいろいろ考えて動く奴だ。話は最後まで聞け」
「そうデース、このスカタンハゲ」
「ふ、わしを罵倒したところでノーダメージじゃ。プライドは全てサメにベットしてあるからのう」
「お前ら、低レベルな喧嘩する前にちゃんと会話をしろ!」
「「はーい」」
まずい、彩華の説教力係数はハンチャンすら制御するものに上昇しておる。
2人で行動していたみたいじゃし、そこである程度扱いを理解したということなのじゃろうが、何か特別感が無くなって寂しいぞい。
「本題ですガー、実はこの島にある大きな湖の底……更にその位置から繋がる地下洞窟に、タコではない大きな"何か"がいるようなんデース。それを上手くサメに出来れば、もっとアドバンテージを取れマース」
「具体的には何があるんじゃ?」
「遠すぎて熱源ぐらいしか感知出来ませんでしたが、タコらしい形状はなかったんですヨー、強いて言えばウニ?」
曖昧な言い回しじゃが、むしろ確信がついてきた。
ハンチャンが観測した存在は精霊じゃ。
精霊のサメともなれば、確かに黄色い大きな布に確実なダメージを与える手段を確保できるかもしれん。
まさしく形勢逆転の一手になるじゃろう。
しかし、それだけでは納得しきれんこともある、確認じゃ。
「地上の敵はどうするんじゃ?」
「サーモンキング
「なら、
これで不安要素は無くなった。
それに、ハンチャンの言う湖の精霊らしき存在は気になる。
実際、わしらは湖にいながらそれに気付かないまま鮭王とキャンプしておったんじゃ、その意味でも隠れたサメ素材は楽しみじゃ。
問題はその湖への洞窟までの移動方法じゃが、どうしたものじゃろうか。
「移動なら余におまかせなのだ」
すると、空中から魔王が降りてきたぞい。
何故か背中にベッタリとセレデリナが張り付いておるが、気にせんでおこう。
「休憩するならここよねぇ。アノマーノの背中は最高だわ……」
「身長差を考えて欲しいのだが……まあいいのだ。彩華はその木製のサメにしっかり捕まって欲しい」
魔王はそう言いながらもジャグリングの要領でどんどん空に向かってハルバードを投げては地上でキャッチしておる。
こやつが〈
「ハンチャンだったか、湖までの座標は分かるのだ?」
「今湖に向かって信号弾を撃ちましター」
更に、ハンチャンは戦いながらも脚部の装甲が1枚パカッと開き、そこから赤色の弾道煙がもくもくと出ておるミサイルを1発湖の位置へ発射した。
そして、彩華をサメの両腕でガッシリとホールドし、こちらの準備は完了じゃ。
魔王が何をするのか予想がついてなかったが、その場で魔法の詠唱を始めながらハルバードを空中に投げ、両手が空いた瞬間にサメティマスに触れてきた。
「『我が魔の力よ、
そして、魔法を唱え終えると怪力を得たかのごとく両手でサメティマスを持ち上げ、空高く湖に向かって放り投げたのじゃ!
「酔い覚ましどころか怪力まで使えるなぞ、なんでもありすぎやせんかー!?」
「お前が言うなああああああああ!」
こうして、わしらは放物線を描く様に湖へと投擲されたのじゃ。
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