第55鮫 勇鮫王サメガイガー
なお、問題の黄色い大きな布は屋敷から離れて空に浮かんでいく様子を見せておる。
そんな中、セレデリナがある提案をしてきたのじゃ。
「今から天に向かってアイレイを放つわ、彩華達に私達のいる座標を知らせるにはこれ以上はないと思うの。下手にやったら敵に居場所を知らさかねないから避けていたけど、いい加減3人だけで戦うのには限度があるわ!」
「なるほどォ、仲間は必要であるからなァ!」
内容は確かに名案で、わしも同じようなことを考え、同様の理由で下手に実行されないよう提案自体を避けておったモノじゃ。
海での戦いから考えればわしらだけで勝てる勝負とタカを括るのは愚策じゃが、敵の習性がわかった今、日が沈んでいないならばノーリスクに等しいわい。
「じゃあ撃つわよ。サード・アイレイ!」
そうして空へと放たれた
この柱を見て彩華達が直ぐに来てくれる訳では無いじゃろうが、外にいるならば気付かない方がおかしい。
「これで準備完了じゃな。わしもいいサメを思いついた、布なんぞ喰ってしまえばすぐじゃ」
「我輩はいつでもオォーケェー! サード・ギガントォ!」
「じゃあお構いなく
……しかし、そんなわしらの周囲に突如として霧が現れ始める。
「SHARK!?(まさか!? まだ昼なのよ!?)」
「いやァ、分からんぞォ! この島は人によって改造されているのだァ、黄色い大きな布がこの時間に出ているのもあるゥ、実は習性自体が油断させる罠ということも考えられるぞォ!」
このシャケは脳筋なのか頭脳派なのかどっちなんじゃ!?
文武両道のシャケ、確かにサメの
そして霧に紛れ、顔がタコの信徒や動物がわしらの前に現れ始める。
全然ノーリスクじゃなかったぞい!?
いや、そもそもこの黄色い大きな布がそれらを統制しているようにも見える上、彩華達に場所を知らせるには必要な犠牲と割り切るしかないのかもしれん。
「そんなちっこい相手対処してる余裕はないわよ!?」
「なら、地上の雑魚どもはわしに任せるのじゃ。このサメは……あの映画の再現になるのう、じゃが発想は34個程ネジを外したものじゃ」
とはいえこの事態は想定の範囲内。
わしは急がず焦らずな姿勢で屋敷に手を触れ〈シャークゲージ〉を込めた。
実はまとめてサメにするためにと工具箱も置いてきておる。
つまりは、腐敗した建築物に多種多様な工具が全てあわさったサメが生まれるのじゃ。
「現れいでよ、家を司るサメ!」
屋敷はぐにゃぐにゃと歪んで変形し、その姿を形成していく。
それは、1匹の巨大なサメではなく等身大のサイズで34匹に分散した"群"!
その姿は家の壁や床などの木材で形成されたウッドなシャーク!
しかし、左右の胸ヒレの代わりに人間の腕が! 尻尾の先の尾ヒレの代わりに人間の脚が引き締まった筋肉を見せつけるように生えている!
魚人種ともまた違った体型の奇妙なサメ人は、全員腕にサメ工具を装備した軍団!
何より彼らを象徴するのが、背ビレに巻き付いている老朽化した家の外に生えたツタを取り込んで造られた緑のハチマキ!
つまり、このサメらは全てが大工! オスメス関係なく実力者揃いのその軍団は……。
「異世界サメ33号"最強サメ大工軍団"じゃー!」
なお、サメ大工達は数多のサメ工具を使いこなして戦うが、実際の所工具箱に入っていた工具は20個程しかなく、残りの14匹は入っていた釘を一本一本手に挟んでメリケンサック風に工夫したり、家に置いてあった錆びている剣を装備して誤魔化しておるぞ。
よくよく考えると大工軍団というよりは反政府暴徒にしか見えんがそれはそれじゃ。
「トランスシャーク!」
更に、わしは装甲鮫車両サメティマスに乗り込みそう叫んだ。
すると、サメティマスしっぽが2つに割れて人間の脚部になり、地面に直立した姿勢に変形を始める!
加えて、サメの頭部な先端部もまた2つにパカッと割れギギギと左右の胸ヒレに合体して腕部となり、平に余った先端部からひょこっと50cm程のサメの頭部が生えた!
「サメティマス、ロボモードじゃ!」
それは、5m程のサメな巨人!
言ってしまえばシャーク・ゼロの劣化コピー品でしかなく、地上と海にしか対応しとらん欠陥品であるものの、地上の連中を倒すならこれで十分じゃ。
というのも、本当はサメ大工を造る素材でこのサメティマスを巨大化させる合体パーツを造るはずじゃったが、今回は単品サメになった。
「SHARK、SHARK!(ヒュー、そんなサメまで仕込んでるなんて、無敵ね!)」
「これなら安心して戦えるゥ!」
そうして、シャケとサメのタッグが勝利を祈りながらも、わしは大工と共にタコ頭の化け物を殲滅する戦いに挑んだのじゃ。
まずは爆裂鮫槌やSA・ME・BA・SA・MIを持ったサメ大工がそれぞれ隊長を務める2つの部隊で先行し、サメとしてタコを倒していく。
鮫槌部隊じゃと、ノコギリを持ったサメ大工にノコギリを振るうサメ大工、錆びた槍で敵を突き刺すサメ大工のトリオの活躍は特に目立つ。
剣から弓へと自在に変形する武器を持つ部隊は、空を飛ぶタイプのセレデリナの邪魔になる敵を全て撃ち落としておる。
SA・ME・BA・SA・MI部隊は、馬車庫にあった馬車を束ねて振り回すサメがその車輪すら変形させ、手足に車輪を1枚ずつ装着し車のごとく敵を跳ねながら喰らっている1匹が目立つのう。
あれが今日の
サメ大工らの基本戦術はあらゆる工具でタコな頭部を切り落とし、その大きな口で切り落とした頭部を喰らいサメはタコより強いというのを敵に見せつける威圧が軸になっておる。
タコ共は相変わらず感情が存在しないのか特にこの戦術が有効に働いているようには見えんが、サメのプライドが保たれるので
「む、何か来ておるな」
しばらくその調子で信徒共を相手にしてもらっていたのじゃが、地ならしを起こしながらこちらに何かが走ってくる気配を察知した。
それに合わせてサメ大工達には一旦下がってもらい、サメティマスを先頭に立たせて足音の主との戦闘に備えを取る。
そして、足音の主は勢いのままに突進してきたのでサメティマスの両腕で受け止めてやったぞい!
敵の正体は、ご丁寧に鼻と牙だけは残された顔がタコのイノシシじゃった。
「
受け止めたならば、あとは喰らうのみ!
状態を維持しつつ、全身くまなくモグモグと踊り食いにしてやったぞい!
「む、破損率34%とは、木製のサメロボットじゃとそう勝手良く動かせんか」
じゃが、タコイノシシとの接戦で腕部が使い物にならんくなってもうた。
普通に戦うならこれは大がつくほどのピンチではあるが、今日のわしはそれすらも作戦のうちなのじゃ。
「サメ大工達よ、修理を頼むぞい」
サメティマスの破損を確認したサメ大工達は、一部が信徒との戦闘から離れ周辺にある木々を切り倒してそれを材料にしてサメティマスの腕部を補強し始めた。
これこそが、サメ大工のサメ職人芸と言えようぞ!
木でサメ車を造ったのも島の自然の豊かさから修理応用を想定しておった。つまりは完璧なシャークコンボじゃ。
こうして、わしはサメティマスを駆りサメ大工と共に地上のタコ共と激しい戦いを繰り広げながらも、鮭王とセレデリナには1匹たりとも雑魚を近づけることなく押さえ込んでいったぞい。
敵の数は減るどころかどんどん押し寄せてくる上、まるで無限湧きみたいじゃがサメ大工の体力は現場仕事で鍛え上げられておる。そんじょそこらの人間とは比べ物にならんのじゃわい。
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