第30鮫 ガレオス・サメオス、航海
それから更に1ヶ月の月日が経過したのじゃ。
その期間にも、魔王に与えられた仮家がボロくて修理するハメになったりといろいろあったんじゃが、今はそんな騒動も収まり、とある目的のために彩華と共にフレヒカ王国の領土にある港町ジインベの港におる。
「彩華はやはりついてきてくれるのじゃな」
「鮫沢博士を1人で放置してたら突然世界の敵にでもなりそうで怖いからな。それに、一応は相棒と認めた相手だ」
そう、わしらは今日からサラムトロスの国々を巡る旅に出るのじゃ。
鯱崎兄弟のような悪い〈
それに、もしかしたらサメのいる国があるかもしれない。
そんな様々な可能性に白黒を付けるためにも、海を渡り世界を巡りたのじゃ。
「一応、対〈破壊者達〉ってことで出た魔王の提案だけど、サラムトロスにはやっぱりサメはいないと思うぞ。〈サラムトロス・キャンセラー〉の有効札がサメだったことを忘れてないよな?」
「だとしてもじゃわい。わしのように、かの
「思わねぇよ! 誰だよそれ!」
「それに、仮にサラムトロスにサメがいなかろうと、旅における様々な過程で異世界サメを造る目的は果たされるわけじゃ。意味のある冒険にはなると思うぞい」
「確かに、あんたにとってはそれが一番だからな……。俺も俺で、元の世界に帰りたいから手伝うよ」
こうしてわしらは、港に浮かべた船……異世界サメ24号”シャークルーザー”に乗り込んだのじゃ。
外見は異様! 全高13.4mある真っ青なその船は、鯱一郎の鋳造技術を盗用して生み出した異世界サメ18号"サメ合金S"で固められ、船頭はサメそのもの! 船尾には尻尾を型どったジェットエンジンが搭載! 当然、掲げられた1本の旗にはサメのエンブレムが刻まれている! 生活スペースや食料備蓄設備も完備! これは、サラムトロスにおける最新鋭にして究極の船なのじゃ!
「しっかし、外見がおぞましいこと以外は普通に現代の中型船ですげぇな」
「海の監視は必要じゃし暇な時間は少ないが、太陽光発電システムを搭載しておるからスマホやタブレットの充電設備もしっかりあるぞい。サメ映画も見放題じゃ」
「はいはい。俺はいろいろ本を買ったからそれを楽しむよ」
完璧な船での航海、楽しくなりそうじゃ。
しかも、この外見なら海賊に会おうとサメの魅力を存分に見せつけられるぞい。
「さあ、
こうして船は出航したのじゃ。
長旅になるのは間違いない、その過程で色々な国を巡ることになるじゃろう。
国によっては、サメを崇めてくれるかもしれんのう!
***
それからしばらく船は進んでいたのじゃが、突然と彩華が騒ぎ出したのじゃ。
「おい、"何か"が船を追いかけて泳いできてるぞ!」
彩華が指を指す先には、ナイフのような背ビレが浮かびこちらに近づいてきておった。
水面をよく見ると、青白い肌にギザギザな歯を持つ単眼の魚人種なのがわかる。
つまり……セレデリナがサメに変身して船に向かって泳いでいたのじゃ!
「待ちなさーい! 私も連れていくのよ!」
彼女は、「仕事で行くような遠征と違って終わりの見えない旅になるのがわかりきっている上に、アノマーノに会えない日々が続くことが確約されているからか同行しないわ」と言っておったのじゃが……。
「考えてみれば私は800歳ぐらいまで生きるけど2人は遅くても100歳になれば死ぬんだから、50年ぐらいは平気って気がついたのよ!」
「突然長命種の価値観を持ち出しやがった!?」
「それに、アノマーノも外交遠征が多いから場所によっては会えるかもしれないの、本当に問題ないわ!」
海を泳ぎながら、セレデリナは叫び続けておる。
言っていることこそめちゃくちゃなものの、旅について行きたいという気持ちが伝わってくるわい。
わしとしても、サメ好きと一緒に旅できるのはとても嬉しい。
この1ヶ月を経ても彩華はあまりサメのことを好きにはなれんかったから尚更じゃのう。
「はぁ、はぁ、まさかこんな形で変身することになるなんて考えてもいなかったわ」
そして船を止め、セレデリナを船上に引き上げると元の姿に戻ったのじゃ。
服どころか旅の荷物まで変身解除と同時に出てくるとは、サメ変身能力はとんでもないのう。
ただ、流石にびしょ濡れのままなのはお互いに困る、急いでふかふかのタオルを渡したぞい。
「その、お疲れ様。旅について来てくれるのは友達としても嬉しいよ」
「わしもじゃわい」
「実はおじいさんは友達としてカウントしてないのよね……サメを提供してくれる業者というか」
「それはショックじゃぞ!」
「酒を盗んだりしたからじゃないか……?」
そうして、改めて船を動かそうとしたところ、彩華がひとつ提案をしてきたので聞くことにしたのじゃ。
「なあ、せっかく3人での旅になるんだし、チーム名でも決めておかないか? 連帯感にも関わってくると思うんだ」
おお、中々にいい考えじゃ。
それに、何かヒーローチームが結成されるような雰囲気。
ここは今思いついたチーム名を高らかに宣言すべきじゃろう。
「なら、チーム名はサメンジャーズでどうじゃ!」
「却下だこのサメバカ博士! どっかで聞いたことのあるフレーズすぎるわ!」
く、彩華のシャークセンスには響かんかったか。ならば!
「ジャスティス・シャークでどうじゃ? サメは正義とわかったしちょうど良さそうじゃろ」
「とりあえずアメコミから離れてくれ」
「ザ・シャークズ! ビーチサイドサメワット! ガーディアンズ・サメクシー!
「だからアメコミから離れろっつってるだろが!」
まだ手札は無数にある上に、サメリスの深海竜の攻撃力は34000になるレベルなんじゃが、それでも彩華が厳しくて泣いちゃいそうじゃわい。
さめさめ。(※しくしくのようなシャークニュアンス)
とはいえ、これで彩華が何も考えてなかったら腹が立つ。ちゃんと本人の意見も確認しておこうかのう。
「なら、彩華に代案はあるのじゃろうか。言い出しっぺじゃろう」
「そうだな、例えばサメってイタリア語だとなんだっけ」
「スクアーロじゃな」
「ならギリシャ語だと」
「ガレオスじゃ」
「お、いいじゃないか。なら、ガレオスだけだと寂しいな、ガレオス・ラッシュってのはどうだ?」
は!?
それは盲点じゃった。しかも普通にかっこいい。
彩華のシャークセンスは時と場合によってはとてつもなく冴るのかもしれん。
鮫神像じゃってまさにそうじゃった。
じゃが、それだけだとなにか足りんのう。
「それなら、おじいさんのサメは混沌としているからラッシュよりも……ケイオス……サメオスってのはどう?」
「"ガレオス・サメオス"、いい響きじゃな」
「結局俺の意見乗っ取られてない?」
「これはもう、決定じゃな」
「なんか負けた気がするが、仕方ないか……」
何がともあれセレデリナも旅の仲間になり、しかもチーム名まで決まり全ての準備が整った。
ならば、高らかに叫ぼう。
「今から始まるは第二第三の破壊者をとっちめ、
「「おー!」」
わしらの長い長い旅が始まった。
異世界サメを探すし自分でも造る。
そこにある好きのため、鮫神様に貰ったチャンスを存分に活かしてやるぞい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます