初調査5
「じゃあまず潜入組から中間報告!」
安藤さんの謎の張り切り具合は一体何だろうと思いつつ僕は海君とこの一週間で分かった事を報告した。
「えっと、正樹君の事に関して他のクラスメイトに軽く聞いてみたのですが余り覚えていないとかそこまで親しくしていた友達も見つかりませんでした。」
「まぁそこまでが牧野さんが集めた情報。ここからは僕だから!」
突然の告白に僕はビックリした。確かに昨日夜報告書の原稿を送った時はこれで良いよって言ったのに此処で新情報を入れてくるなんてセコいやつだ。
「清水正樹には親しくしていた女が居た。名前は佐々木麻奈。二人は同じクラスで佐々木は美術部員でよく二人で放課後の美術室で絵を描いていたらしい。それとおそらく清水正樹をいじめていたのはこの3人」
海君は手元の資料から三枚の写真をホワイトボードに貼った。こんな物いつ用意したんだろう。それにどんな手を使ってクラスの人達からこの情報を手に入れたのが僕には全く想像出来なかった。
「どうやらこの3名はかなり素行が悪いらしい過去に暴力沙汰や万引きを犯し最近では一部の女子生徒へ手を出してるとか。それと佐々木麻奈は清水正樹が自殺してから学校へ一度も来ていない何らかの手掛かりを佐々木麻奈が知っているってどこまでが僕が調べた情報です!」
海君は椅子に満足そうに座って僕の方を見た。何だろうこの完全なる敗北感。おそらく年もしたであろう少年に負けたこの何とも屈辱。でも海君はこれだけの情報をあの短期間で調べ上げた。僕と共に過ごしているように見えて実はそうで無かった。今回は完全なる完敗だ。
「じゃあ次、渡君」
ゆっくり椅子から立ち上がった渡さん此処数日潜入で見てなかったけどいつもスーツでピシッとしてて本当に大人な人だなーって改めて思った。
「えー、こちらが彼が自殺直前の持ち物です。中身は至って普通ですが先ほど柚木から調べてもらったところ水彩画などに使用される絵具の成分が検出されました。彼の部屋に先日伺った時も絨毯には絵の具のようなシミがありました。おそらくさっき海が言った佐々木麻奈と親しい関係であった事は確かです。」
海君が僕に向かってピースサインを出した。
何だろう。このいちいちムカつく感じは。
「そして一つ不自然に思った点は彼のスマートフォンが行方不明だという事です。ご家族にも確認しましたがおそらく彼が自殺を図った日に紛失したと思われます。」
「じゃあおおよそ事件の側面は見えてきたわね。後はどうやって学校への報告書にするか」
安藤さんのヒール音が室内に響き渡った。
「とりあえず佐々木麻奈とコンタクトを取るのが一番ね。彼女はきっと何かを知っている」
各自安藤さんからの指示を受け僕はまた延長で海君と共に潜入となった。
佐々木麻奈への聞き込みも僕らが行く事になった。
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