初調査4
"清水正樹" 高校二年生成績は中の上特に目立った問題行動も無くごく普通の男子高校生だ。家族構成は父、母、祖母の四人家族。父は一部上昇企業の会社員。母は近所のスーパでレジのパート。別段夫婦仲が悪い様子も見受けらないよって家庭環境は至って良好。
ただ一つ問題を挙げるとするならばは1ヶ月前に起こった一人息子の自殺だろう。
「ここが正樹の部屋です。あの日から全てそのままにしあります」
軽く頭を下げて彼の部屋に入った。
新人と海の二人が潜入してからもう少しで一週間まだ目立った報告は上がってきていない。
彼の部屋は標準的な男子高校生の部屋より少し片付いている様な気がした。でもそういう高校生もいるのではと言わればそれまでだ。
ベッド、勉強机、クローゼット、本棚、大まかに分ければこれくらいだ。本棚の書籍も過去に使った参考書と小説がならびクローゼットには高校生らしい若者の色の服が並んでいた。遺書が入っていたと思われる引き出しには文房具が少し入っているだけで特に何も入っていなかった。
「あの息子さんがお亡くなりになる直前の持ち物とかってありますか?」
「それは仏壇の方へ置いてあるので持ってきますね」
母は駆け足で一階の階段を降りていった。
この部屋に感じる違和感は何だろう。絨毯に所々見られるカラフルなシミ。まるで絵具を使って絵でも描いていた様な。でもこの部屋には画材の様な物は何もない。
「あの、これです」
手渡された物はスクールカバンだった。
「これだけが屋上に残っていたみたいです」
「拝見します」
鞄の中には教科書が二冊とノート、ペンケース、生徒手帳。特に変わった物はなかった。
いやおかしい。誰もが持っているであろう物が無い。このくらいの歳の子が必ず持っているあれだ。
「彼はスマートフォンを学校は持っていってなかったのですか?」
母は何かを思い出したように話し出した
「それがあの日からどこにもないんです。携帯会社の方にも探していただいたんですけど電源が入っていないとなると探すことは不可能だと言われまして」
「最近はsnsでのいじめも少なくはないですしなんらかの証拠があるかもしれません。こちらも探してみます」
何かが引っかかる。なぜスマートフォンが行方不明になるのか。普通に考えて制服のポケットかスクールカバンに入れておくのが妥当だろう。だが彼が死ぬ間際に何処かへ落としてしまったという事だって容易にある。又は誰かが彼が死んだ後に抜き取った。この二択だ。とりあえず此処でいくら考えても答えは出なさそうだったので彼の私物をいくつか持って帰らせてもらう事にした。
「今日はありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。一つでも手掛かりが見つかるのなら何でもします」
母親の目は少し潤んでいた。
「うちの子が何の理由も無しに自殺なんてするわけないんです。このままだとあの子も私達も報われません。どうしても原因が知りたいんです。どうかよろしくお願いします」
頭を下げ涙を浮かべる母親に俺は何と言葉をかけるのが良いのだろうか。我々に出来る事はただ一つ彼が自殺した理由を突き止める事。それがこの家族を救済するただ一つの方法だ。
「必ず息子さんの自殺の原因を突き止めます」
その言葉を返すことしか今の自分には出来なかった。
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