第598話
ローランの街中は人が少ないためか、普段混んでいる筈の道は空いており、すんなりと小鳥の止まり木という宿へ向かうことが出来た。
そして数日間空けていた小鳥の止まり木に到着すると、コウはそのまま建物の中に入った訳なのだが、そこにはいつものようにミランダが受付で立って仕事をこなしていたりする。
「あら?数日ぶりでしょうか?コウさんお帰りなさいませ」
「あぁただいま。部屋って残ってるか?」
「勿論そのままにしております。こちらがお部屋の鍵になります」
借りていた部屋についてどうなっているのか聞いてみると、どうやら部屋はそのままの状態にしてくれているらしく、ミランダは机の引き出しを開けると、中からコウが借りていたと思われる部屋の鍵を取り出して手渡してきた。
「ん...ありがと。ちなみにライラっているか?」
「ライラさんでしたら今日はお部屋から出て来ておりませんね」
そんな手渡してきた部屋の鍵を受け取りつつ、コウはついでとしてライラが今現在この宿にいるかどうかについて聞いてみると、どうやら今日は1回も部屋から外に出てきてはいないとのこと。
とすれば、ライラは部屋にいるということになるので、帰って来たことを伝えるためにコウはそのままライラの部屋へ向かことにした。
さて...ライラの部屋の前に到着した訳なのだが、ただ帰って来たことを伝えるのは何だか味気ないということで、コウは驚かせようとするために何も言わず、扉をこんこんと何度かノックしていく。
「ふぁ〜い...どちら様ですか〜...?」
すると部屋の中からはライラの寝ぼけた様な返事が返ってきたため、声を出すことをせずにそのまま扉の前で辛抱強く待つことにした。
そして少し時間が経ってから扉が開き始めたのだが、目の前に現れたのはだらしない格好をした寝ぼけ眼のライラが姿を現すこととなる。
「え...コウさんじゃないですか~!」
「良い反応だな...って...は?」
そんなライラはまさか帰ってきたと思ってもいなかったようで、寝ぼけ眼だった目を大きく見開きつつも驚いており、コウはうんうんと頷きながら自身の心の中でしてやったりと思っていると、急に目の前に巨大な壁が現れる。
「おかえりなさいです~!」
その巨大な壁とはいったい何なのかというと、ライラの豊満な身体であり、コウは何がとは言わないが深い谷間へと吸い込まれるように沈み込んでいき、熱い抱擁と出迎えの言葉を交わされることとなった。
「ぷはぁっ!やめろっての!」
「そんな嫌がらなくてもいいじゃないですか~!」
「息が続かないんだよ!」
そして息が続かないということで、ライラからの熱い抱擁を無理やり引き剥がした訳なのだが、なんだかんだ言っても誰かに待っててもらい、出迎えてくれたのは嬉しいものであり、このやり取りのお陰でぽっかりと空いていた心にじんわりと温かいものが埋まっていくような気がした。
「ふぅ...それにしても随分とだらしない生活を送ってたみたいだな」
「あはは~...今から片付けます~...」
「...まぁいいや。とりあえず俺は自分の部屋で待ってるからな」
「分かりました~すぐに掃除しちゃいますね~!」
そして出迎えの熱い抱擁も終わったということで、後ろに見える色々と私物である衣服が散らかった状態の部屋を見ながらコウは姑のようにちくりと小言を言うと、ライラは気まずそうにしながらこれから片付けると言い出した。
そのため、ライラが部屋の掃除を終えるまで、暫くの間は自身が借りている部屋でフェニと共にゆっくりと待つことにするのであった。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新予定日は多分9月8日になりますのでよろしくお願いします。
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