第581話

「それ!それ!それ!」


 ゴブリンとオークが縄張り争いをしている元へ単騎で特攻したディーンはというと、隙間を縫って走りながら片手に持っていた立派な剣を振るい、次々と切り倒していた。


 それにしてもディーンは急所部分である首だけを狙って正確に剣を振るい、一撃で仕留めているので、相当な腕を持ち合わせているのが戦い方を見ているだけでも分かる。


「意外とやるなぁ...というかあの紋章って光るんだな」


「う〜ん...あの光り方って何処かで見たような気がするんですよね〜何でしたっけ~?」


 そしてサクサクとゴブリンやオークを切り倒しているディーンの手の甲にあった紋章が光っているのが遠目でも見え、その光はどういう原理化は分からないが片手に持っている剣まで伝わり、纏わり付いていた。


 そんな光景を見たライラはディーンの手の甲にある紋章の光り方について何処かで似た様なものを見たことがあるらしく、思い出せずに隣でうんうんと頭を悩ませていたりする。


「あぁ!思い出しました〜!聖職者が神様にお祈りする時の光です~!」


「へぇ...そうなのか。ちなみにライラも出来るのか?」


「ふふ~ん甘く見てもらっては困りますね~。一応私も聖職者ですから出来ますよ~」


「あぁ...そういえば一応聖女候補とかだったな...」


 とりあえずディーンがゴブリンやオークと戦っている姿をのんびりと眺めていると、ライラが紋章の光り方と似た様なものは何だったのかを思い出したようで、それは聖職者が神へ祈る際に起こるという光と似ていると言い出した。


 とすれば、ディーンの手の甲にある紋章は聖職者と同じような能力を持ち合わせているのかもしれない。


 そして一応、ライラも同じことが出来るのかどうかについて聞いてみると、腰に手を当て、自慢気に同じようなことは出来ると言い放ってきた。


 まぁ元聖女候補ということもあって信仰心の無さそうなライラが祈ったとしても神という不確かな存在は答えてくれてはいるのだろう。


「あっゴブリンとオークが逃げ出してますね~」


「まぁディーンが介入したからだろうな」


 暫くするとゴブリンやオークは第三勢力であるディーンが現れたことによって次々と数が減らされていくことに気づいたようで、これでは全滅してしまうと感じたのか蜘蛛の子を散らすかのようにあちらこちらへ散っていく。


「少し時間が掛かっちゃったけど終わったよ!」


 そして決着がつくと、ゴブリンやオークの死骸しがいが死屍累々と転がっている中、ディーンがこちらに向かって駆け足で戻ってきたわけなのだが、これでは馬車が道を進むことが出来ないだろうか。


「お疲れさん。魔物の素材はどうするんだ?」


「んー...僕はお金に困ってないし道の端に避けてスライムにでも処理してもらう?」


 確かにディーンの言う通り、道の端に避けておけば、掃除屋であるスライムやウルフ系の魔物が死骸となったゴブリンやオークを食い漁るとは思うのだが、道の端に避けるのには労力が掛かるし、オークの素材に関しては捨てるには使い道がそれなりにあるため、少しだけ勿体ないといえる。


「捨てるぐらいなら俺が全部貰ってもいいか?」


「別に問題はないよ?でもどうやって回収するんだい?」


「俺は収納の魔道具持ちだからな。ちょっと行ってくる」


 ということで、死骸を回収することにしたのだが、正直なところゴブリンはお金にならないため、わざわざ回収するほどでもない。


 とはいえ、馬車が通る際には邪魔になるし、道の端に避けるのも面倒なので、コウはオークの回収ついでとしてゴブリンも次々と回収していくことにした。


「ふぅ...こんなもんかな」


「お疲れ様です~」


「キュ!」


「いやー収納の魔道具は便利だね。僕も欲しくなってきちゃったなぁ...」


 そして全ての死骸を回収を終えると、馬車に乗ったライラ達が現れ、目の前に停車したということでコウも乗り込むことにし、コウが乗り込んだのを確認した御者は馬に鞭を再び打ち始め、停車していた馬車は王都に向けて走り出すのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は多分8月3日になりますのでよろしくお願いします。

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