第580話

 さて...ローランを経ってからというもの、順調に馬車の旅は進んでおり、王都までの残りの道のりは大体半分くらいといったところだろうか。


 またそんな旅が半分ぐらい進んだ頃には年齢が近いということもあってかディーンとコウ達は既に打ち解けていたりする。


「そういえば何でディーンは聖都に向かってるんだ?」


 そしてコウはそんな旅の最中、少し気になったことである何故、最終目的地が聖都シュレアなのか?についてディーンに聞くことにした。


「んー教会の人にこれを見られたからかな?」


 するとディーンはコウのといに答えるかのように身に着けていた真っ白な手袋を片方だけ外し出し、手の甲側をこちらに向かって見せつけてきた。


 そんな見せつけてきたディーンの手の甲をよく見てみると、そこには薄らと白い天使の羽に似た紋章がタトゥーのように刻まれており、それがいったい何なのか分からないが、きっと聖職者達にとっては何かしらの意味を持つものなのだろう。


「そういえばライラは聖都で生活してたよな?この紋章は知らないのか?」


「ん〜何処かで見た気がしないでもないですけど記憶にないですね〜」


 一応、ライラが聖都シュレアで生活し、聖女候補であったのをコウは思い出し、ディーンの手の甲に刻まれた紋章は何なのかと聞いてみるも、何処かで見たことがある気がするだけで、記憶にはないとのこと。


「これって...うおっ!」


「わっ!」


「キュッ!?」


「おっと!」


 そして今度は手の甲を見せてくれた本人であるディーンに手の甲へ刻まれた天使の羽に似た紋章は何なのか?とコウは聞こうとするも、突然馬車がガタンと大きな音を立て、急にブレーキが掛かった。


 そのため、座っていたコウ達は慣性の法則で前のめりになってしまうが、各々は反応速度が良かったためか、馬車に備えられていた取っ手部分を持って何とか踏ん張ることが出来、馬車内でもみくちゃになるようなことはなかった。


「急に馬車を止めてしまって申し訳ありません。少し問題が起きまして...」


 それにしても一体何が起こったのか分からずにいると、小窓から御者である若い男が顔を出し、コウ達に謝罪をしながら何かしらの問題が起こったということを伝えてきた。


「問題?とりあえず外に出てみるか」


「どうしたんですかね~?」


「僕も外に出ようかな」


 ということで、御者の言っていた問題とやらを確認するためにコウ達は馬車の扉を開けて外に出てみると、前方にはゴブリンとオークが道を塞ぐように争い合っており、これから進む筈だった通り道を邪魔しているのが見えた。


 しかし争っているといってもやはりゴブリン程度ではオークには勝てないようで、劣勢となっており、そのうち全滅してしまうだろうか。


「オークとゴブリンか...こんなところであいつらは何をしてんだ...」


「縄張り争いでしょうか〜?」


 実際にはライラの言う通り、ゴブリンとオークは縄張り争いをしているわけなのだが、こんなところでそんなことをされても王都へ向かう途中のコウ達からしてみれば、なんとも傍迷惑な話である。


「まぁよく分からんけども通行の邪魔だしここは退いてもらうか...」


 とりあえずこのままゴブリンとオークを放置していても通行の邪魔で通れないし、縄張り争いが終われば今度はこちらが標的となってしまう可能性が高いため、ここは先手必勝ということで、コウは収納の指輪から愛用しているサンクチュアリを取り出していく。


「あっ!じゃあここは僕に任せて!」


「ん...?任せて大丈夫なのか?」


「大丈夫!大丈夫!」


 すると側に立っていたディーンがコウ達の一歩前に出て、ここは自身に任せて欲しいと言いながら、白銀の鞘に収まっていた立派な剣を引き抜いて構え出した。


 一応、この場を任せて大丈夫なのかと確認してみると、ディーン本人は何やら腕に自信があるようで、問題ないという返答が返ってくる。


「すぐに倒してくるからのんびりしててよ!」


 そしてディーンはコウ達にのんびりしていれば良いと一言だけ言い残すと、単騎でゴブリンとオークが縄張り争いをしている元へ一気に駆け出していくのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は8月1日になりますのでよろしくお願いします。

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