第571話
「もう日が暮れちゃったな」
「お腹も空いてきましたね〜早く渡してご飯にしましょ〜」
「キュ〜」
ツーバの巣を取り終えてからというものの、ローランへ帰る頃には既に日が暮れてしまい、今となっては空にきらきらと星が瞬いていたりする。
さて...今のコウ達はというと、多少なりとも身体を動かしたことで、お腹を空かせた状態となってはいるのだが、早めに集めた食材をリクトンへ渡すために良い匂いが漂うローランの街中を歩きながら魔食堂へと向かっていた。
「よし到着だな。リクトンはいるか〜?」
そして何とか街中を漂う良い匂いの誘惑を断ち切り、魔食堂へ到着したコウ達は中にいるリクトンを呼び掛けながら休業中と書かれた札が掛けられている扉を開いていく。
「おう!コウか!今手が離せねぇから好きな席に座って待っててくれ!」
「あぁわかった」
すると奥の厨房から今は手が離せないということで、店の中に入って好きな席で少しだけ待ってて欲しいとリクトンの声が聞こえてきたため、コウ達は店の中へと入って手が空くまで待つことにした。
暫くの間、適当な席に座ってライラと共に今晩の夕食を何処で食べるかについて相談しながら待っていると、奥の厨房から清潔そうなエプロンを身につけたリクトンが現れる。
「待たせて悪りぃな!ここに来たってことは食材を集められたのか?」
「勿論全部集めてきたから来たんだぞ。何処に出せばいいんだ?」
「おぉ!流石だぜ!じゃあ隣の机に頼む!」
ということで、リクトンに全ての食材を集めてきた旨を伝えると、隣の机の上に出して欲しいと言われたため、コウは収納の指輪の中から次々と取り出しては机の上へ山のように積み重ねていく。
「これで全部だな。足りそうか?」
「こんだけありゃ十分だ!助かったぜ!」
「じゃあまた適当に来るから後は任せたからな」
「おう!...ってちょっと待ちな!腹減ってるだろうしここで食ってけ!タダで作ってやんよ!」
とりあえず採ってきた食材を無事に全て渡し終えたということで、コウ達は美味しいご飯を食べれるような店へ移動するために席を立ち、魔食堂を後にしようとすると、リクトンから夕食をタダで作ってやるからここで食べてけと呼び止められた。
「良いのか?」
「あったりめぇだ!すぐに作るから席に座って待ってな!」
そしてリクトンはそう言い残すと、再び奥の調理場へ戻っていってしまったということで、コウ達は再び席に着き、おまかせ料理を待つことにした。
まぁ魔食堂の料理の味は悪くないし、寧ろ今から他の店へ移動しなくとも良いため、ありがたい提案と言える。
しかも今日は休業中の札を店の扉に掛けているということで、周りに他の客はおらず、貸切状態というのは何とも贅沢な話だろうか。
暫く、リクトンがおまかせ料理を持ってくるのを待っていると、厨房の奥から食欲を誘うような香ばしい匂いが少しづつ漂い始めた。
そんな匂いを嗅がされたコウ達はお腹が空腹感を感じ、早くご飯を寄越せと訴え始めたのだが、丁度良いタイミングで奥の厨房からリクトンが姿を表し、出来立ての料理をワゴンに乗せ、こちらに向かって近づいてくる。
「待たせたな!」
「なんというか個性的ですね~...」
そして出来立ての料理を持ってきたリクトンはコウ達の目の前に1皿1皿置かれた訳なのだが、その置かれた料理を見たライラはあまり見た目の良い料理ではないということもあってなんとも言えない反応をしていた。
「これって何の食材を使った料理なんだ?」
ただコウにとってその料理に使われている食材は少し見覚えがあるものであったため、ライラと違い、なんとも言えない反応をせず、何の食材を使用した料理なのかリクトンに聞いていくことにした。
「おう!こいつはオクトルっていう海の魔物を丸ごと使った新作の煮込み料理だぜ!」
そんな煮込み料理の使われている食材はオクトルという海の魔物らしく、見た目はコウのよく知るタコであり、丸ごと使われているためか、見慣れない人にとっては多少なりとも抵抗感を感じてしまうだろう。
「へぇ...そんな魔物いるんだな。じゃあ早速頂こうかな」
「見た目はあれだが味は間違いねぇ筈だぜ!」
ということで、コウは臆することなく、目の前に置かれたオクトルの煮込み料理に手をつけることにし、ナイフとフォークを使って自身が食べやすいサイズに切り分けていく。
それにしてもオクトルはしっかりと煮込まれているということもあってか身質はだいぶ柔らかくなっており、すんなりとナイフの刃は通った。
そしてナイフで切り分けたオクトルをコウはもう片方の手に持っていたフォークで刺し、口の中へ放り込み、味を確かめるように食べ始めた。
またフェニも自身の前に置かれたオクトルを既に啄むように食べ始めていたりする。
そんなオクトルを食べたコウとフェニをライラは固唾を飲みながら見つめており、さながら毒味役と言ったところだろうか。
「おっ...なかなか美味しいな」
「キュ!」
「えぇっ!?本当ですか〜?」
そしてコウとフェニが美味いという感想を述べたことで、ライラも恐る恐る目の前にあるオクトルの煮込みを切り分け、ギュッと目を瞑りながら口の中へ運び、咀嚼し出すと、次第に表情が変化していく。
「本当です〜!見た目はあれですけど美味しいですね〜!」
「あったりめぇだ!俺様の作る料理に間違いはねぇ!他の新作も持ってくっから待ってな!」
こうして疲れた身体を癒すためにコウ達は貸切状態の魔食堂でリクトンが作る目新しい料理を堪能し、満足いくまで食事を愉しむことにするのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新は7月14日になりますのでよろしくお願いします。
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