第570話
「意外に採れる量が多かったな」
「ですね〜まさかあそこまで根を張ってると思いませんでしたね〜」
「キュ!」
ということで、無事にアンカーウィップの根を採ることが出来たのだが、思いのほか木の下に張っている根は多く、予想していたよりも量が採れたということで、他のアンカーウィップを探す必要が無くなったのは僥倖と言えるだろうか。
ちなみにアンカーウィップの根の採り方はコウがサンクチュアリでスパっと木を切り倒し、地面に埋まっている切り株を収納の指輪へ仕舞い込んだだけという簡単な方法であったため、わざわざ地面を掘る必要がなく、根を簡単に採ることが出来た。
「最後はツーバの巣って食材か」
「日が暮れる前には採りたいですね〜」
「そうだな。じゃあ早速移動するか」
既に時間帯は昼を過ぎ、夕方になりかけているということもあって日が暮れる前には全ての食材を集めたいところ。
そのため、コウ達は最後の食材であるツーバという魔物の巣を採りに行くため、再び駆け足で地図に描かれている場所へ向かうことにした。
さて...次にコウ達が向かった先はトレントの森から少し東の方向に歩いた渓谷よりの場所になるのだが、ここには目的の食材のツーバという魔物の巣があると、簡易の地図には書かれていた。
そんなツーバの巣はどういったものかというと、ツーバという鳥系の魔物が作り出す巣であり、主に切り立った崖や洞窟の天井付近などの場所に作られるもので、これもまたあまり市場に出てこない食材の1つと言われるものだ。
市場に出てこないのにも理由があり、それは巣を作り出すツーバという魔物の対処が面倒くさいとされており、巣を採ろうとすると一斉に飛び出し、襲い掛かってくるらしい。
また人の手が届かないような高い場所へ巣を作り出すため、冒険者達にとっては割に合わず、そこまで採られることがないとも書かれていた。
「日が暮れる前になんとか到着したな」
「後は採るだけですね〜って...あっ!あれじゃないですか〜?」
そして絶壁の岩壁が目の前に立ち塞がる場所へ到着したわけなのだが、早速ライラがツーバの巣らしきものを発見したのか、声を上げながら指をさしたため、コウはつられるようにそちらの方向へ視線を向けた。
そんなライラが指をさす方向にある絶壁の岩壁には、ちらほらと白いバレーボールのような巣が幾つも岩壁に張り付いており、そこからはツーバと思われる小さな白い鳥が出たり入ったりして忙しなく動いているのが見える。
「中々高いところに巣を作るんですね~どうしますか~?」
「キュ~?」
「まぁここは俺に任せとけ」
事前の情報通り、ツーバの巣は高い位置に作り出されているということなのだが、既に採る方法を思いついていたコウはライラ達をこの場で待機させ、今回は自身だけで採りに行くことにした。
ということで、コウは絶壁の岩壁へ近づく前にまずはフェニ似た氷の鳥を次々と作り出し、足元へ軍隊のようにずらりと並べていく。
「こんなもんかな?じゃあ"行け"!」
そしてある程度の数を揃えることが出来たということで、コウは作り出した氷の鳥達へ命令に行けと言い放つと、足元で並んでいた氷の鳥達はツーバの巣まで羽ばたきながら一直線に飛び立つ。
すると巣に近づいていくコウの作り出した氷の鳥達を敵と認識したのか、巣から数多くのツーバ達が姿を現し、囮として作り出した氷の鳥達とまるで縄張り争いをするかのように空中で争い出した。
「よしよし...この隙にと...」
そんなツーバ達が氷の鳥達に意識が向いているうちにコウは身に付けている外套のフードを深く被ると、絶壁の岩壁にあるツーバの巣の元へ氷の足場を作り出していき、そのまま上へ上へと飛び乗っていく。
そしてもぬけの殻となったツーバの巣の場所まで辿り着いたコウは手で巣に触れては収納の指輪の中へ仕舞い込み、次々と回収していくことにした。
ちなみにツーバ達は外套の認識阻害の効果と囮として作り出した氷の鳥達によって自身達の巣が回収されていることについては全く持って気づいていないようで、帰って来る様子もない。
「こんなもんかな?そろそろ戻るか」
というわけで、ある程度のツーバの巣を回収することが出来たコウは何事もなかったかのように飛び乗ってきた氷の足場を使い、待たせているライラ達の元へ戻っていく。
「ふぅ...待たせたな。沢山採れたし帰るか」
「キュ!」
「ご苦労様です〜あとはリクトンさんに渡すだけですね~」
こうして無事にリクトンから頼まれた食材を全て集めることに成功したコウ達は集めた食材を早く渡すため、ローランへ帰ることにするのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新は7月12日になりますのでよろしくお願いします。
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