第388話
「コウさんライラさん助けて下さい〜!」
そんな慌てた状態で部屋の中に入ってきたライラは真っ先にコウのベットの縁に
その助けて欲しいというお願いは一体何なのか話を聞いてみないと分からないが、ここまで慌てた姿のライラは中々に見ることはないだろう。
「どうしたんですか?」
「頭が痛い...一体何なんだ...」
そしてイザベルはベッドに縋り付くライラに詳しい話を聞くために寄り添い、コウは大きな声によってガンガンと響く頭を抑えながら耳を傾けることにした。
「無くしてしまったんです〜...コウさんから頂いた髪飾りを〜...」
どうやらライラの慌てていた理由とはコウが過去にプレゼントした金色に輝く十字架の髪飾りを何処かに無くしてしまったということであった。
確かあれは聖都シュレアで購入した物であり、イザベルが今も身に付けている髪飾りと似た物であるが、そこまで値はしなかった筈だ。
とはいえ、ライラにとっては大事にしていた物だったらしく、普段は何があっても元気いっぱいだというのに、今ではかなり落ち込んでしまっている。
「うぅ〜...」
本当は今日1日ベッドの上で安静にしておきたいところではあるのだが、昨日の件のお礼をあるため、ここは金色に輝く十字架の髪飾りを一緒に探してあげた方がいいだろうか。
「分かった分かった。探すのを手伝うから元気出せって」
「本当ですか〜...?」
「まぁ大切にしてくれてるならこっちの身としては嬉しいしな」
「ありがとうございます〜!」
とりあえず金色に輝く十字架の髪飾りを探す手伝いをすると約束すると、ライラはその場で立ち上がって大きな声で喜び、ベットの上で足を伸ばして安静にしているコウに向かって感謝とともに
抱擁をされたコウはライラの胸によって鼻と口が圧迫されてしまい呼吸が出来ず、ぐわんぐわんと暗闇の中で視界が揺れ、吐き気のゲージがモリモリと上がっていき、更には大きな声によって2日酔いの頭へガンガンと響いていく。
そんなライラの抱擁と大きな声はグロッキー状態のコウへ
何度かライラの背中をタップして解放して欲しいと願うも、気づいていないのか離してはくれず、徐々に力が抜けていく。
「ライラさん!コウさんが死にかけてます!」
「ぷはぁ!」
そしてイザベルの一言により、何とかライラの胸の中からは解放されるも、コウの視界はグルグルと回りだし、新鮮な空気を一気に吸い込みながらベッドの上へ大の字になって倒れ込む。
しかし世界がグルグルと回っていることによって、気分が徐々に悪くなり、吐き気を催しそうになるが、この場で吐くことに対してコウのプライドが許さなかったのか、グッと堪える。
もし途中でイザベルが助けてくれていなかったら、ライラの胸の中で全てを吐き出していただろうか。
「わぁ〜!コウさん死なないで下さい〜!」
そんなライラの一言に誰のせいだ!誰の!と言いたいところではあるのだが、解放されたばかりのコウは新鮮な空気を吸い込むことやグルグルと回る視界を元に戻し、吐き気を抑えるのに必死であるため、ツッコむことは出来ない。
暫く、目を閉じていると、多少なりとも吐き気や頭痛が落ち着いてきたので、再びコウは上半身を起こすと、そこには申し訳なさそうにするライラの姿あった。
「酷い目にあった...」
「コウさんすみません〜悪気はなかったんです~」
一応、ライラは先程の行動に関して反省をしているようなので、今日1日はなるべく気をつけてもらいたいところである。
「はぁ...じゃあとりあえず無くしたことに気付いた時間と行った場所だけ教えてくれ」
しかしこの広い王都内で小さな髪飾りを1つだけ見つけ出すのは中々に厳しい。
そのため、無くしたことに気付いた時間や昨日の晩餐会から今日の朝にかけて、ライラの行動範囲を聞いてみることにした。
「う〜ん...朝には無くなっていました〜あとは王都の街中は歩いてないです~」
ライラは頭を捻りながら記憶を辿るように無くしたことに気づいた時間や自身の行動範囲について思い出していくが、幸いなことに王都の街中を歩き回っていなかったため、現状の探す場所は晩餐会を行ったイザベラの敷地内かこの白薔薇騎士団の敷地内だろうか。
とりあえず探す場所はある程度絞られたということで、コウはライラの落とし物を探すため、気だるげな身体で立ち上がるのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
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次回の更新は7月14日になりますのでよろしくお願いします。
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