第387話

「んぁ...?ここは白薔薇騎士団の屋敷...?あれ...晩餐会は...?」


 閉じていたまぶたを開くと、目の前にはここ最近見慣れた天井が現れ、どうして白薔薇騎士団の屋敷へ戻っているのか分からず、思い出そうとするも、寝起きのためか頭が回らない、


 枕元を見ると、そこにはすやすやと寝息立てているフェニが眠っており、身体を起こしても目を覚まさないため、きっと疲れているのだろう。


 とりあえず寝ぼけた頭を元に戻すためにコウはぶんぶんと頭を左右に振るって眠気を覚まそうとするが、頭を振る度に謎の頭痛がガンガンと響くので、片手で頭を抑え、眉間みけんしわを寄せる。


 そして眉間に皺を寄せていると、部屋の扉がガチャリと開き、普段通りの格好をしたイザベルが何かしらの飲み物が入っているであろうコップを片手に持って部屋に入ってくる。


「コウさん目が覚めたみたいですね。おはようございます」


「あぁおはよう。どうして俺はここにいるんだ?晩餐会は?」


 晩餐会の時の記憶が途中で途切れているため、コウはイザベルへどうしてこの白薔薇騎士団の屋敷へ戻ってきているのかということを聞くことにした。


「実はコウさんお酒を飲んで潰れてしまったんですよ」


「お酒...?そんなの飲んだ記憶ないんだが...。蜂蜜みたいな甘いやつなら飲んだけど...」


 あごに手を置きながら晩餐会のことを思い返しても、甘い果実で作られたジュースのようなものだけなら飲んだ記憶はあるのだが、お酒に関しては飲んだ記憶はないため、頭を傾げてしまう。


「それがお酒だったんですよ。ミードという甘いお酒らしいです」


 どうやらコウは知らず知らずの内にそのミードというジュース感覚で飲める甘いお酒を飲んでしまい、晩餐会の途中で潰れてしまったようである。


「ちなみにここまで運んでくれたのはライラさんなんですよ」


「そうだったのか...あとでお礼を言わないとな。迷惑かけて悪かった」


 そんなミードというお酒で潰れてしまったコウを白薔薇騎士団の屋敷まで運んでくれたのはこの場にいないライラだったようで、感謝の言葉くらい伝える必要があるだろうか。


「そういえば先程頭を抑えてましたけど2日酔いでしょうか?」


「多分そうかも知れない。なんか頭が痛いんだよなぁ」


「でしたらこれを飲んで下さい。2日酔いに効く飲み物です」


 イザベルから手に持っていた何かしらの飲み物が入っていると思われるコップを手渡されるので、中身を覗き込んでみると、そこには緑色の液体が入っていた。


 見た目は酷いものであるが、匂い自体はハーブティーのような香りの良いものであるため、もしかしたら味は飲みやすい青汁のように美味しいのかもしれない。


「あー...ありがとう。ふぅ...飲むか」


 とりあえず飲み物を持ってきてくれたイザベルに感謝の言葉を伝えつつ、コウは覚悟を決めてコップ内に満たされている緑色の液体を一気に飲み干していく。


 その緑色の液体の匂いはまともであれど、味は残念ながら美味しくなく、ただの苦味だけがある飲み物であり、しかもねっとりとした粘度があるためか喉をあまり通らず、コウは眉をひそめ、しかめっ面をしてしまう。


「これからはお酒に気をつけよう...」


 今後はあまりこの緑色の液体を飲みたくないため、もし晩餐会などのパーティーに参加して飲み食いをする際には気をつけようと、心掛けることにした。


「コウさん水をどうぞ」


「わざわざ悪いな」


 そして緑色の液体の後味にしかめっ面をしていると、イザベルが気を遣ってなのか、近くの机にあった水差しから新しいコップへ水を注ぎ、手渡してくれたので、コウは口の中に残った後味を水で押し流していく。


 イザベルのお陰で口の中もスッキリしたということで、これからの予定について話そうとすると、この部屋に向かってドタドタと誰かが廊下を小走りで駆けてくるような足音が聞こえてくる。


 何かトラブルでもあってイザベルに用があるのだろうか?と思いつつ、扉の方向に視線を向けると、部屋の扉は大きな音を出しながら開き、外からは慌てた表情したライラが入ってくるのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は7月12日になりますのでよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る