第378話
翌日。朝食後のコウはどうなったのかというと、イザベルとライラの2人に両腕をしっかりと確保され、多くの服屋が立ち並ぶ貴族街を歩幅を合わせながらゆっくりと歩かされていた。
「そろそろ離してほしいんだが...」
「役得だと思うのですけれども?」
「そうですよ~こんな可愛い女性2人に腕を取られて何の不満があるんですか~?」
「不満というか見ず知らずの人達からの視線が痛いんだよ...」
そんなコウ達の姿を傍から見れば両手に花という状態なので、世の男達からしてみれば、あまりおもしろくない光景ということもあってか周りの視線が針のように突き刺さり、針のむしろの状態である。
「何だか家族が増えたみたいでいいわねぇ...」
そしてコウ達の後ろにはイザベルの母であるイザベラが一歩引いて歩いており、まるで仲睦まじい息子1人と娘2人を眺める保護者のようであった。
ちなみに今回は相棒であるフェニはこの場にいない。
何故、いないのかというと、単純に食べ物ではない服には興味がないということで、一緒についてこなかったのだ。
そしてそんなフェニは今頃、白薔薇騎士団の屋敷にいる団員達からたんまりと美味しいご飯をもらっているに違いない。
とりあえず周りの人達から突き刺さる視線を下を向いて避けつつ、軽くため息をついていると、両脇にいるイザベルとライラの足が不意に止まる。
何故だろう?と思い、コウは頭を上げると、そこにはイザベル達が向かっていたであろう服屋へと到着していた。
「まずは1軒目に到着ですね」
「1軒目...?もしかして2軒目3件目もあるのか?」
「当たり前じゃないですか~今日はコウさんの服だけじゃなくて私達も買い物をしますよ~」
「あぁ...そう...」
どうやらコウが晩餐会へ着ていく服だけを見に来ただけだろうと思っていたのだが、実際にはイザベル達全員の買い物もついでとしてするらしい。
つまりどれだけの時間が掛かるのか分からないということであり、コウの精神ポイントがまだ午前中だというのにガリガリと削られたような気がした。
いやまぁ実際には精神ポイントを昨日から削られてはいるのだが、あまり深く考えないようにしているだけである。
そして立ち話も程々にして、とりあえず目的のお店の中へコウ達は入っていくと、そこには木のマネキンがずらりと壁際に立たされ、売り物である衣服を着せて並べられていた。
また価格が表示された木のボードを見ると、貴族街にある服屋ということもあってか、1着セットでもそれなりの価格帯であり、一般人にはどれもこれも中々に手が出せないだろう。
「さぁコウさん始めましょうか。ここで待っていて下さいね」
「良さそうなのを持ってきますね~!」
「息子がいないからこういうのをしてみたかったのよねぇ~楽しみだわ!」
そのまま店内にある椅子へ強制的に座らされると、イザベル達はコウに似合う服を選ぶため、各々は別方向へと散っていってしまう。
正直に言うと、晩餐会へ着ていけるまともそうな服であれば何でも良いのだが、彼女達の何かしらに火がついたのか何なのかわからないが、そうはさせたくない強い意志を感じる。
そして暫くの間、のんびりと選んだ服を持ってくるのを待っていると、別方向へ散っていたイザベル達が今回試着するであろう綺麗に折り畳まれた服を手に持ち、戻ってきた。
イザベル達が持ってきた服はどんな服なのだろうか?と視線を手元に移して確認するも、綺麗に折り畳まれているためか、広げてみないと、実際にはどんな服なのか分からない。
ただイザベラの持ってきた白い服だけヒラヒラとした見た目をしているため、嫌な予感がしてならないのは何故だろうか?
「お待たせしました。コウさんに似合う服をお持ちしましたよ」
「これを持ってきたのでお願いします〜!」
「私が選んできた服も勿論着てくれるのよね?」
「あぁ...まぁ着るかどうかは確認してからだけどな」
コウは服を選んできてくれた3人から3着の服を押しつけられる様に受け取ると、近くにある試着室の中へ入っていき、着替えを見られないようカーテンで仕切る。
そしてイザベル達が選んだ服はどんなのだろうと確認するため、コウは綺麗に折り畳まれた服をその場で1着ずつ、広げてみるのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
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次回の更新は6月24日になりますのでよろしくお願いします。
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