第379話

「まずはイザベルのやつからいくか...」


 とりあえず3人から受け取った服のうち、イザベルの持ってきた黒色の服が1番無難そうな気がしたため、コウは手に取ると、その場で広げていく。


 先にイザベルが持ってきた服を広げると、それはウイングカラーの白シャツに黒の蝶ネクタイ...そして光沢感のある黒のジャケットとズボンのタキシード一式であり、晩餐会などには相応しい衣装と言えるだろうか。


 以前、衣服の街であるルガルでは多少なりとも一癖も二癖もあるような服を選んでいたイザベルなのだが、今回は意外にもまともな服を選んでくれたようで有り難い。


「意外と普通のやつだな。じゃあライラの持ってきたやつはどうなんだ?」


 次にライラが持ってきた白い服を広げてみると、白のベストに白蝶ネクタイ...そして背中の裾が燕の尾のように長い白い燕尾服えんびふくで、イザベルが持ってきた服同様、主に晩餐会などに出られる衣装の1着ではあるのだが、全身が真っ白だと新郎のような印象を覚えられてしまうだろうか。


「う~ん...これはこれで悪くないんだろうけど流石に...」


 そんな新郎に見えるような姿で晩餐会に出てしまうと無駄に目立ってしまうだろうし、コウとしてもそんなことは避けたいため、選択肢からは排除していく。


「最後はイザベラさんか...うーん...」


 そして最後にイザベラの持ってきたヒラヒラとした服をコウは複雑な気持ちを抱きながらも広げていくと、予想通り女性物のドレスであった。


 最初に手渡された感じ、何となく察していたので驚きはしないが、毎回女性物の服を誰かしらが選んでくるのはどうにかならないものかと思ってしまう。


 勿論、女性物のドレスということで、これもまた選択肢からは排除となった。


「う~ん...ライラとイザベラさんのは別としてとりあえずイザベルの服だけ試しに着てみるか」


 とりあえずコウはいつも身につけている服を脱いで、初めて着るタキシードにぎこちなく袖を通すと、身体にピッタリのサイズであった。


 身体のサイズにピッタリ合うのならば、もうこれを買えば良いんじゃないかと正直思ってしまうが、出来れば似合った姿で晩餐会に参加したいので、外で待っているだろうイザベル達に見てもらうべく、仕切っていたカーテンを開いていく。


「私の選んだ服を着てくれたんですね。お似合いですよ」


「わぁ~私の選んだ服ではないですけど似合ってますね~!」


「似合ってるけど私のを着て欲しかったのよねぇ...」


 タキシードに身を包んだコウに対して三者三様の感想を言われるも、全員がなんだかんだ似合っていると言ってくれているので、この服ならば身分の高い貴族などが訪れる晩餐会に参加したとしても失礼には当たらないし、問題はないだろう。


「じゃあこれでいいか」


「えぇ~!私が持ってきた服は着てくれないんですか~!?」


「そうよ!私の持ってきたドレスも着て欲しいわ!」


 コウはイザベルが持ってきてくれた黒いタキシードに決めようとすると、ライラとイザベラの2人から納得いかないといった声が上がってくる。


 そしてそんな2人の後ろでは3人のうち、唯一自身の選んだ服が選ばれたということもあってなのか、イザベルが自慢げな表情で講義しているライラとイザベラの2人を眺めながら愉悦を感じているようであった。


「確認してから着るかどうか決めるって言ったんだが...」


「そうですよ。コウさんは"私の持ってきた服"を選んだんですから諦めて下さい」


 そんな2人に対してイザベルが自分が持ってきた服と一部分だけを強調し、煽るかのように言い放つと、ライラとイザベラの2人はムッとした表情をして再び店内へと散って行ってしまうが、すぐに新しい服を幾つか両手に抱えながら戻ってきた。


「コウさんこれはどうでしょうか~!?」


「これなら着てくれるわよね?」


 そして押し付けるように手渡された服は先程とはまた違ったものであり、ライラとイザベラの2人は期待した眼差しを向けてくる。


 もしかしたらこれは2人の持ってきた服を試着しないと終わらないのでは?と思ったコウはため息をついて諦めると、再びカーテンで仕切って試着室の中へ手渡された服を持ち、戻っていくのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は6月26日になりますのでよろしくお願いします。

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