第373話

「ふぅ~すっきりしました~」


「ずっと座ってましたし多少なりとも体を動かすのは大事ですね」


「準備ができましたのでそろそろ出発させて頂きます!」


 目の前に立ち塞がるかのように現れた盗賊達を蹂躙じゅうりんし終えたイザベル達が戻ってくるのにはそう時間は掛からなかった。


 そんな女性陣達の機嫌といえば、盗賊達を蹂躙し、ある程度ストレスを発散できたということで、すっきりした顔をしていたりする。


 ただ多少なりとも身体を動かしたため、ライラや団員の服には土埃などが付いており、イザベルが風魔法を使って取り除くと、再びコウとフェニが待っていた馬車の中へと戻ってきた。


「おつかれ。よかったら飲んでくれ」


「わぁ〜コウさん気が効きますね〜」


「丁度喉が渇いていたので助かります」


「御者の私にも下さるなんて...ありがとうございます!」


 女性陣は疲れている様子はないが、喉ぐらいは渇いているだろうと思い、コウは気を利かせて収納の指輪の中から飲み物を取り出すと、各々に手渡すことにしていく。


 そして一息ついた後、御者である団員が馬車を引く馬に対して鞭を打つと、ゆっくりと馬車は進み出し、再び目的地であるハーベストヒルに向けて進み出すのであった...。


「イザベル様!そろそろハーベストヒルに到着致します!」


 盗賊達に襲われてからというものの、コウ達を乗せた馬車は何事なく進み、目的地である、ハーベストヒルという場所に到着する旨を御者をしている団員から告げられるので、外を見るとそこには小高い丘の頂上に傘のように葉を広げた巨大な木が生えているのが見えてきた。


「キュッ!」


「わぁ~大きな木ですね~!」


「本当に大きな木だな」


「あれがハーベストヒルと呼ばれる場所ですね。あの巨大なレイニーウッドという木にピュアリの実がっている筈です」


 そんな大きな木を説明なしに見た人は、世界樹ではないのだろうか?と思ってしまうだろう。


 それにしてもこの木はとあるコマーシャルに出てくるような木と似ており、ついあのフレーズを口ずさんでしまいそうになる。


 そしてその木の麓まで馬車は進むと思っていたのだが、実際には道の外れで止まってしまった。


 何故だろうと思いながら外を見ると、どうやら木の麓までは道が続いていないため、これ以上は馬車で進めないようである。


「私はここでイザベル様達のお帰りをお待ちしております!」


「馬車はお願いしますね。では行きましょうか」


 馬車から降りたコウ達は御者をしていた団員に馬車の見張りを任せ、そのままハーベストヒルにあるレイニーウッドに向けて歩き出すが、そこまで距離は遠くないので、時間は掛からない筈である。


「何だか良い匂いですね~よだれが出そうです~」


「フェニ...勝手に1人で行くなよ?」


「キュ~...」


 そしてレイニーウッドという木の麓へ近づくにつれて何だか甘く、良い果実の香りが強くなっていくので、これがピィアリの実の匂いなのだろう。


 そんなピィアリの実の匂いを嗅いだコウ達は、自然と唾液が口の中にじんわりと溜まっていく。


 またフェニに至ってはコウの頭の上でくちばしからポタポタとよだれを垂らし、今にも木の麓まで飛んでいってしまいそうなので、念のために注意をしておくと、残念そうにしていた。


 そういえば、ピィアリの実がっているレイニーウッドには、とある厄介な魔物が縄張りとしているという話を思い出し、今のところその魔物に襲われるような気配はないなと思っていると、不意に何処からかぶんぶんと蝿のような不快な羽音が聞こえてきた。


「何の音だ...?」


「この音は...コウさんライラさん。武器を構えたほうが良いかもしれません」


 とりあえずイザベルの指示に従ってコウとライラは自身の愛用する武器を取り出し、構えていると、ぶんぶんと不快な音を撒き散らしながらこちらに向かって何かレイニーウッドの方向から黒いものが飛んでくるのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は6月14日になりますのでよろしくお願いします。

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