第372話
腰辺りぐらいまで伸びた草が周りを囲う、登り下りのある道をガラガラと進んでいくのはコウ達が乗っている馬車である。
王都から出発し、暫く時間は経ったものの、目的地であるハーベストヒルという小高い丘にはまだまだ着かないが、良い作りをした馬車であり、御者の運転も上手いため、振動も少なく、お尻も痛くない快適な旅となっていた。
そして現在の馬車内はというと、イザベルとライラそして御者もが小窓から混じって話に花を咲かせており、女子会に似た様なものが開かれていたりする。
そんな女子会の中にコウは混じるつもりはなく、外の流れる景色を眺め、膝の上で寝ているフェニを撫でつつ、イザベル達の会話をラジオ感覚として聞き流しながら目的地であるハーベストヒルに到着するまで時間を潰していた。
「コウさん聞いてますか〜?」
「んぁ?悪い聞いてなかった。なんだった?」
どうやらいつの間にかコウはその女子会に混ぜられていたらしく、ラジオ感覚で聞き流していたため、何を聞かれたのか分からず、聞き直すと若干、
「もぉ〜髪型は短いのが良いのか~?長いのが良いのか~?どう思いますかって話です〜」
「あー...まぁ似合ってればなんでも良いと思うけど...」
「何だか曖昧な答えじゃないですか~」
「そんなこと言われてもなぁ...」
ライラからの質問に対して無難な答えをしつつ、外の景色を眺めていると、馬車がこれから通り過ぎるであろう前方の草むらが不自然に揺れる。
(ん...?今草むらが変な揺れ方をしたような...?)
違和感を感じたコウは何だろうと思い草むらを注視していると、草の隙間から馬車を引く2頭の馬に向かって何本もの弓矢が飛び出し、風を切りながら飛んでくるではないか。
「イザベル様。弓矢が飛んでくるので一旦停車します」
ただ御者をしている団員は今にも目の前に迫っている弓矢が視界に入っている筈なのに一切動じておらず、馬車をその場で停止させようと、両手で手綱を持って思いっきり手前に引く。
すると馬車を引く馬は徐々に走る速度を落とし、ゆっくりと停車していくと共に飛んでくる弓矢は馬車に近づくにつれて何故だか勢いを無くし、地面へぽとりと落ちていってしまう。
どうやら飛んでくる弓矢についてはイザベルがいつの間にか風魔法を使って対処をしていたようである。
「確かこの辺りでは盗賊の報告があったような...迷惑極まりないですね」
「む~折角の楽しい時間を過ごしていたのに~」
「イザベル様!これ以上被害を広げないためにも駆除していきましょう!」
馬車は停止すると、楽しい時間に水を差された女性陣達は自身が愛用している獲物を取り出し、ゆっくり馬車から降りていくが、その女性陣達の声には怒気が混じり、何だか背中が大きく見えるのは何故だろうか。
すると草むらから弓矢を放ってきたであろう小汚いハイエナのような男達が道を塞ぐようにぞろぞろと現れだした。
「コウさんはここで待ってて下さいね。すぐに終わりますから」
「あぁ...まぁそのなんだ。じゃあよろしく」
コウも立ち塞がる盗賊達の掃除を手伝うために馬車から降りようとするも、イザベルから止められてしまい、そのまま馬車内に残ることとなってしまう。
何故、コウをそのまま馬車内に残したのかと言うと、イザベル達にとって女子会を邪魔された者達であり、このストレスを解消するためには自身の手で屠らないと気が済まず、手を出させないためであったりする。
「へへ...悪いな嬢ちゃ...ぐあっ!」
先手必勝とばかりにライラが何かを喋ろうとした1人の盗賊に向かって拳を振るって無言で殴り飛ばし、気絶させいく。
仲間が1人やられたことによって他の盗賊達の怒号がその場で響き渡ると同時にイザベルや御者をしていた白薔薇騎士団の団員もライラの元へ駆け出し、次々と立ち塞がる盗賊達を無言で斬り伏せていた。
「フェニ。皆を怒らせないようにしような」
「キュ~...」
そして楽しい女子会を邪魔された女性陣達が立ち塞がる盗賊達を
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次回の更新は6月12日になりますのでよろしくお願いします。
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