第354話
閉じている瞼に向かって陽光が貫通するかのように照らされ、半ば強制的に眠気を覚まされていく。
そんな眩しい陽光を腕で遮りつつ、慣らすかのよう徐々に目を開けていき、コウはここが何処なのか状況を把握するため、ぐるりと見渡した。
「あー...?ここは...宿か?それにしても今は何時だ?」
場所も把握できたということで、コウは横になりながら収納の指輪の中から魔道具である時計を取り出すと、時計の針は左斜め下を指しており、まだ午前中だということが分かる。
「それにしても頭が痛い...昨日のこともあんまり覚えてないし...」
時間を確認したコウはズキズキと痛む頭を片手で押さえながら、身体を起こし、昨日の祝宴を思い出そうと、記憶を順に辿っていくも、何故か肉の煮込み料理を食べ始めた後からの記憶がすっぽりと抜け落ちているとこまでしか思い出せない。
「コウさん起きたんですね〜おはようございます〜」
うんうんと頭を悩ませながら、昨日のことをなんとか思い出そうとしていると、部屋の扉がガチャりと開き、ライラが部屋に入ってきた。
「ライラ?俺は鍵も閉め忘れちゃったのか?」
「も~コウさんは何言ってるんですか〜?ここは私の部屋ですよ〜」
どうやら部屋の鍵を締め忘れたのではなく、ここはライラが借りている部屋であり、確かに自身の部屋と違って家具の置き場所が若干違うのに気づく。
しかしどうして自身がライラの部屋で寝ているのか全くもって記憶にない。
そのため、コウは昨日のことを覚えている筈であろうライラに聞いてみることにした。
「昨日から記憶ないんだけどライラは何か知らないか?」
「もしかして覚えてないんですか~?あんなことを言ってたのに~...」
はて...いったい何を言ったのだろう...?精一杯思い出そうにも肉の煮込み料理を食べていた時の記憶までしかどうしても思い出せないため、なるべく失言していないことを祈るくらいしかできない。
ズキズキと痛む頭を悩ませていると、コウを見たライラはくすくすと笑い始めるので、どんなことを言ってしまったのかと不安になってしまう。
「んふ~冗談ですよ~」
「不安にさせないでくれよ...」
ライラはひとしきりくすくすと笑うと、冗談だということを言われるので、コウとしてはあの新人冒険者であるルビィとトゥリッタの前で迂闊なことを言っていないことにホッと胸を撫で下ろした。
「コウさんはお酒の料理を食べて途中から寝ちゃったんです~私が背負ってここまで帰ったんですよ~」
「あー...だから途中から記憶がなかったのか...なんか悪いな」
どうやらあの料理にはお酒が入っていたようで、その料理を黙々と食べ続けた結果としてコウは酔ってしまい、途中で寝てしまったらしく、最終的にライラが運んでくれたとのことで、軽く謝罪をしておくことにした。
「それにしてもコウさんってお酒に弱かったんですね~」
「いやまぁ今まで飲んだことも無いしな」
今までお酒などを飲んだことが無かったので、弱いのかどうかすらわからなかったが、今回弱いということが分かったので、今後お酒に関するものを飲んだり食べたりするのは気をつけないといけなければとコウは心に決めた。
それにしてもこの身体は毒は効かない癖に何故、酒には弱いのかとハイドに問い
どうせならば酒などに含まれるアルコールも効かないようにして欲しかった。
まぁ今更文句を言ったところで変わらないだろうし、今度再会した時にでも文句を言わせてもらおうか。
「コウさんこれどうぞ~」
「何だこれ?」
「ミランダさんから貰った酔い覚しの薬らしいですよ~飲んでみて下さい~」
ライラから手渡されたものはコップに入った一杯の緑色の見た目をした飲み物であり、そこらに生えている雑草を煮込んだような青臭いするのだが、それはミランダから貰った酔い覚しの薬とのこと。
「いやでもこれ美味しく無さそうなんだけど...」
「薬って大体苦いものですからね~」
「まぁそうだけれども...しょうが無い飲むか...」
むぅ...確かに良薬口に苦しとも言うし、流石に善意で貰ったものを残すのも流石に良くはないため、コウは覚悟を決めると、息を止めてコップに口をつけた。
そして口の中で味わいたくないため、一気に喉に押し流していくが、その薬はねっとりとしたものであり、飲み込みづらくあったので、近くの机に置いてある水差しを別のコップに注ぐと一緒に飲み込んでいく。
「ぷはぁ!うへぇ...不味くて苦い...」
全部を飲み干したコウは眉間に深い皺を作り出し、喉にまだ残る薬を押し流すためにもう一度だけ水差しから追加の水をコップに注いで飲み干していく。
「これで良くなるといいですね~」
「うー...そうだな...頭痛が治るまでゆっくりしようかな」
ミランダから貰った酔い覚しの薬も全て飲み干し終え、二日酔いが覚めるまではまだまだ時間がかかりそうなので、とりあえずコウはライラとこれから何をするかについて話しながら、昼まで部屋で大人しく過ごすのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m
次回の更新は5月7日になりますのでよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます