第140話

「おーい!イザベル終わったぞー!」 


 倒した赤いオーガの死骸を収納の指輪へ回収し終わると、コウは大きな声を出し戦いが終わったことをイザベルへ何とかして伝えようとしていた。


 何故コウはそのような行動をしていたかというと最初にこの風のフィールドを作り出した際、イザベルがコウへと話しかけてきたからである。


 つまりその逆もできるのではないのか?と思っての行動だった。


 暫く大量の血溜まりだけが残っている風のフィールドの中で待っていると、徐々に吹き荒れていた風が弱まっていき、見慣れた真っ赤な森の姿が再び現す。


 イザベルが作り出した風のフィールドで外の状況はわからなかったが、周りを見渡すと少し離れた場所でまだイザベル、ライラ、フェニの2人と1匹は青いオーガとの戦闘が終わっていなかった。


「早く加勢にいかないとだな」


 コウは青いオーガの戦闘に加勢するべく走り出しイザベル達の元へと急いで向かっていく。


「状況はどうだ?」


「あと少しって所でしょうか」


「もう少し?」


 コウは現在、ライラとフェニが戦っている青いオーガをよく見てみると元々青い肌だった右腕は血塗れに赤く染まっており、咆哮をした際にちらりと見える口の歯の一部は折れたりしていた。


 そしてかなり疲弊しているのか出会った時ほどの勢いは無く呼吸は乱れている。


 逆にライラやフェニの動きは多少疲れが見えるが、こちら側が優勢だろう。


 つまりイザベルのもう少しという言葉は決着がもう少しでつくという意味のようでコウの加勢も必要なさそうである。


 ライラとフェニは交互に青いオーガへと攻撃を仕掛け一撃を入れたらすぐに退避するといった戦い方をしており、危ない時はイザベルの風魔法が補助として使われている。


 逆に風魔法で補助をしているイザベルの方へ青いオーガが迫ろうとすると、横槍の様にライラとフェニから痛い一撃を貰ってしまうのでほぼ詰みと言っていいだろう。


 それでも諦めずに青いオーガが戦うのは自身の縄張りということと上位種としてのプライドがあるからかもしれない。


 だが悲しいことにプライドだけでは勝てないのが現実である。


「ライラさんフェニちゃんそろそろ終わらせますよ!」


 イザベルがライラとフェニにへ呼びかけ、かなり疲弊している青いオーガに対して一気に畳み掛ける事を伝えると理解したのか青いオーガに向かって走り出す。


 そしてライラとフェニの繰り出す攻撃に合わせるようにイザベルは魔法を唱えだすと突然、自分達が立っている場所の後方から最初にオーガ達が投げてきていた岩よりも数段大きい岩が飛んでくる。


 飛んできた岩はライラとフェニが近づくよりも先に青いオーガへと当たるとその場から巨大な身体を浮かし吹き飛び、巨大な岩の下敷きへとなってしまう。


「今度は一体何なんだ?」


 コウは飛んできた方向を振り返るように見ると、そこにはオーガに似たような魔物が木の影から姿を表していた。


 しかし先程まで戦っていたオーガ達とは決定的に違う部分が1つだけあり、それは眼の部分である。


 普通ならば2つあるはずの眼が1つしか無く、顔の上半分の大部分をその眼が占めていた。


「あれは...サイクロプス...?どうやら騒ぎに気付いて近寄って来たみたいですね」


 サイクロプスは先程、巨大な岩の下敷きになった青いオーガの元へと走って近づき両手をがっちりと固く握って上へ振り上げると青いオーガの上に乗っている巨大な岩に向かって勢いよく振り下ろす。


 振り下ろされた両手は巨大な岩にぶつかると一瞬だが地面が揺れる程の衝撃が伝わる。


 そしてその衝撃のせいか巨大な岩に亀裂が走っていき、真っ二つ割れると下敷きになっていた青いオーガは白目を剥き口から血を流していた。


「弱ってるとはいえ上位種のオーガを一撃かよ...」


「まぁサイクロプスといえばオーガに近い魔物ですので力も強いのでしょう」


「へぇそうなのか...ってこっちをガン見してるな」


「多分ライラさんとフェニちゃんが急いでこっちに戻って来ているからですね」


「あーなるほど。というかサイクロプスもこっちに向かってるな」


 こちらに戻って来るのは良いがその後ろにいるサイクロプスも一緒にこちらへ向かってきているのでなんとも言えない気持ちにはなってしまう。


 まぁライラ達がこちらに向かってようが向かってまいが結局、サイクロプスに見つかって戦いは避けられなかった筈であると思いたいところではある。


「コウさ~ん!もう疲れましたぁ~!」


「きゅい~...」


「ほらそんなこと言ったってサイクロプスは待ってくれないぞ」


「そんなぁ~!」


 ライラとフェニは戻って来た途端に弱音を吐くが、すぐ目の前にはもうサイクロプスが迫っているので諦めろと伝えるとがっくりと項垂れた。


 とはいうもののライラもフェニもずっと上位種である青いオーガと戦っていたのでこれ以上戦えというのは流石に可哀想ではある。


「冗談だ。まぁゆっくりしといてくれ」


 コウもそこまで鬼ではないため、ライラとフェニを休憩してもらうように言うと項垂れている状態からすぐに立ち直り「後はお願いします~!」と言いながら笑顔でコウ達の後ろへと下がっていく。


「イザベル悪いけど手伝ってくれ」


「ん~コウさんも疲れていると思うので私に任せて貰ってもいいでしょうか?」


「良いのか?だったら任せるけど大丈夫なのか?」


「まぁ見ていて下さい!」


 イザベルはそう言い残すと向かってくるサイクロプスに向かって地面を蹴って前に走り出すので、コウはライラ達と一緒に後ろへ下がりイザベルの戦いを見守るのであった...。


ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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