第139話
土埃や赤い葉が舞い上がり、イザベルの魔法の風で作られたフィールドは赤茶色に少しづつ染まる中、赤いオーガとコウの1対1の戦いが始まっていた。
先手を打ったのは赤いオーガであり、コウに向かって固く握った拳を下から突き上げるように振るうが、そこまでスピードも無いためコウにひらりと躱される。
「そんな大振りで遅い攻撃が当たるかよ!」
コウはそのまま赤いオーガの拳を躱すと振り切った腕に向かって自身の手に持っているサンクチュアリを縦に振り下ろす。
振り下ろされたサンクチュアリは赤いオーガの腕に深く刃が通るのだが、骨が硬くて腕を断つことまではできずに途中で動きが止まってしまう。
腕にある動脈をサンクチュアリで切ってしまった為、切り口からは真っ赤な血が噴水の如く吹き出し、周囲へと雨のように降り注いで真っ赤に染めていく。
雨のように降ってきた血はコウの外套を濡らし青色から赤色に染色するかの如く染めてしまう。
そして赤いオーガはあまりの痛みに耐えきれず大きな叫び声を上げると腕を思いっきり上下に振るいコウを払い除けようとする。
「うぉっ!抜けない!?」
コウはすぐにサンクチュアリを引き抜こうとするもオーガの腕の筋肉が膨れ上がって深くまで刃が入っているせいか抜こうにも抜けず、そのまま一緒に持ち上げられてしまい上下に振るわれてしまった。
振り回しに耐えるよう深くまで刃が入ったサンクチュアリを握るが景色は目まぐるしく変わり、現状どちらが上でどちらが下なのか分からずコウの三半規管が狂っていく。
とはいえずっと振るわれていると深くまで刺さっていたサンクチュアリはオーガの血と油が潤滑油の代わりとなったお陰で少しづつ抜けていき、コウは握っていたサンクチュアリと共に空中へ放り投げ出される。
「かはっ!」
三半規管が狂っているせいで上手く地面へ着地が取れず背中から落ちてしまい、肺からは空気が押し出され口から血とともに吐き出された。
すぐにコウは起き上がるも、足元がふらつき世界がまるで自身を中心としてグルグルと回っているので、目を瞑りぴしっと目を覚ますように頬をたたきあげて何とかしてふらつきを直そうとする。
口の中は自身が吐き出した血の残りのせいで鉄の味がほんのりとし、口元からは顎にかけて一筋の血が流れていた。
コウは自身の腕で口元周りを擦り流れていた血を拭き取って口の中に残っている血をタンを吐き出す様に地面に向かって吐き捨てる。
「やっぱり何も使わずに切り落とすのは無理か」
赤いオーガは腕から血をだらだらと垂れ流しているがまだまだやる気満々のようで今度は近くに落ちている約5m程の大木を持ちこちらに向かって走りながら横薙ぎに振るってきた。
「なるほど。オーガらしい戦い方だな」
大きな風切り音を出しながらも振るわれた大木は地面の砂や葉を巻き込みながら向かってくる。
流石に避けようにもここまで範囲の広い攻撃であれば避けることが出来ないのでコウは向かってくる大木の方向へ手を伸ばすと、地面から巨大な氷の壁が姿を表し赤いオーガが横薙ぎで振るってきた大木を力強く受け止めた。
しかし大木がぶつかると衝突した部分から徐々にひび割れ氷の破片が飛び散り、最終的には氷壁はガラガラと轟音を立てながら崩れ去っていく。
赤いオーガによって破壊され崩れていく氷壁に巻き込まれないようにコウは移動し、死角から赤いオーガに向かって氷槍を2つ生成して撃ち出す。
とはいえオーガもこの2階層の深層で生きてきた猛者であるため、死角からの攻撃にも危機を感じ何かしらを察知したのか持っている大木を盾として使用し、コウの魔法を上手いこと防いでくる。
そして大木へと氷槍は刺さると釘バットの様な凶悪な武器へとなってしまい、赤いオーガはそれをそのままコウに向かって縦に振り下ろす。
「なんかオーガに塩を送ってしまった気がする...」
氷槍が刺さった大木が振り下ろされている中、コウは呑気なことを言いつつ、横に転がりながら避けていく。
振り下ろされた氷槍が刺さっている大木は先の尖った氷槍の部分が地面へと深くまで入り込んでしまい赤いオーガは何とか抜こうと両手で引き抜こうとしていた。
「所詮は魔物だな!」
コウは反撃の機会だと思い赤いオーガの足元へと走り、今度は左足の足首と膝の裏をサンクチュアリで靭帯を断つように斬りつける。
先程の腕と同じで動脈の部分も一緒に切れてしまったのか大量の血が同じ様に吹き出し、赤いオーガは靭帯を断たれたために悲痛の声を上げながら痛みで地面へと片膝をついてしまう。
片膝を地面につかせたということは赤いオーガの首が狙える瞬間ということであり、コウはその隙を見逃さない。
「悪いが終わらせてもらうぞ!」
コウは地面を強く蹴り、赤いオーガの首元まで一気に飛び上がるとサンクチュアリを両手で持ち首に向かって振り抜く。
今度は骨ごと一緒にを断つためにサンクチュアリに魔力を込め刀身の穴からジェット噴射の様に水を噴き出させていた。
赤いオーガの首にサンクチュアリの刃が食い込み筋繊維を綺麗に断ちながら進み続け、首の骨の部分に到達し、一瞬だけ硬いものに当たる感触が手に伝わるがそのまま刃は止まらず進み続ける。
そしてサンクチュアリは赤いオーガの首を通り過ぎ、コウは地面に着地すると同時に赤いオーガの首から頭がゴロリと地面に向かって落ちる。
地面に落ちた赤いオーガの顔は何度かゴロゴロと転がりコウの方向を向くと、苦しまずに死ねたのか白目を剥いていた。
残された胴体は大地を揺らして正面に崩れ落ち、切り口の首からは大量の血が流れ出し周囲を血の海へと変えていく。
濃厚な血の匂いを周囲に充満させるがコウは身体中に赤いオーガの血を浴びているので鼻が馬鹿になっており、気にしてはいない。
「イザベル達は大丈夫かな。というかここからどうやって出ればいいんだろうか...?」
無事に赤いオーガとの戦いは終わったがイザベルの魔法からどうやって出ればいいのか頭を悩ましつつ、倒した赤いオーガを収納の指輪の中へ片付けていくのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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