第134話
一通り木に実っている果実を回収するとコウ達は近くで軽く休憩を出来るような場所でゆっくり腰を下ろし、手に入れた果実を皆で分けて食べていた。
果実の皮をナイフで剥いて頬張ってみるとイザベルの言う通り甘さはそれなりであり、柔らかく味は桃に近しい感じでかなり美味しい。
もっとも自然からこのような甘い果実が取れるのは数少ないし、甘味が自体が少ないこの世界では貴重とも言える。
だからこそ王都では中々手に入らないのだろう。
フェニも満足そうに食べており、くちばしに果実の汁や果実の果肉が付いても気にせず黙々と食べ続けていた。
そしていつの間にか収納の指輪から出した分は無くなってしまったので、軽い休憩は終わりとして中層を進んでいくことにした。
「それにしてもあの果実は美味しかったですね~」
「王都では人気なのですが中々手に入らないのでラッキーでした」
「確かに手に入らない理由がよく分かったよ」
各々は食べた果実の感想を述べていき、フェニも満足したのか既にコウの頭の上で鎮座し、寝ていた。
歩いているとコウの左腕に寄生していた魔向草からぽろりと何かが腕を転がり落ちていく。
「ん?」
コウは腕の上を何かが転がり落ちていったのを確認するために足を止めて自分の歩いてきた方向を振りけると、地面の上に2つの青く透き通った石が転がっていた。
魔向草の花の中心部に付いていた宝石でどうやら取れてしまったようだ。
落ちたことに気づいたライラとイザベルはすぐに魔向草から落ちた宝石を取りに行く。
「も~コウさん~落としたら駄目じゃないですか~」
「いやそんなこと言ったって勝手に落ちたのはしょうが無いだろ...」
「まぁ落ちたのを見逃さなくて良かったです。コウさん預かってもらっていいですか?」
イザベルとライラは拾った魔向草の宝石をコウへと手渡してきた。
どうやらダンジョンから王都へ帰った際に宝石店へ向かい研磨して貰うまで、無くさないように預かって欲しいとのことなのでコウは収納の指輪の中へと仕舞い込む。
そして暫く歩き続けると自分達が進む方向からブゥーンと過去に一度だけ聞いたことのある音が聞こえてきた。
それは羽音だ。
コウ達はゆっくりと視界の悪い枝垂柳の木の中を進んでいくと、そこには1本の木に大きな蜂がもたれ掛かるように鎮座しており、周囲はキラーホーネットという魔物が飛び交っていた。
「うっ...。流石にここは通りたくないな...」
「そうですね...。ここはやめておきましょうか」
「私も流石にここは嫌ですね~...」
目の前の光景を目にすると流石に全員嫌だったのか小さな声で話し合うと満場一致で意見が決まる。
それはそうだろう目の前にいるのは空を飛び交う数十匹のキラーホーネットと女王なのだ。
流石にここを通るのは避けたいところではある。
しかしそれは叶わぬ願いだった。
コウ達はすぐに後ろへとゆっくり音を立てないように下がり、迂回しようと移動したのだが、何故かこちらへキラーホーネット達がふらふらと何かに引き寄せつけられるように向かってくる。
(なんでこっちに寄ってくるんだよ!って...なんか甘い匂いがするな)
歩いている時は気づかなかったが、頭の上からふわりと先程の果実の匂いが漂ってくる。
原因はフェニのくちばしにはベットリと付いた果実の汁であり、キラーホーネットはその匂いに誘われてこちらへと向かってきていたのだ。
コウはフェニのくちばしを拭いておけばと思ったが、時既に遅し。
1匹のキラーホーネットの視界にコウ達が入るとカチカチと強靭な顎を鳴らし周囲の仲間を呼び出す。
「ちっ!しょうが無い!やるぞ!」
「これはもうどうしようもないですね!」
「この蜂さんを倒したらまた休憩です~!」
「キュイキューイ!」
最初は逃げようと思ったのだが、足場は木の根だらけで走ってもキラーホーネットの速度ならばすぐに追いつかれてしまうのでコウ達は逃げることを放棄し、覚悟を決めて目の前にいる大量のキラーホーネットと女王を倒すことにした。
周囲のキラーホーネットは集まってきており、次々とコウ達に向かって襲いかかる。
コウも襲いかかってくるキラーホーネットに対抗するべく新しく覚えた氷の矢を数十本生成すると打ち出す。
何体かはコウの氷の矢を避けるが次々と羽や胴体部分などを射抜かれて空中にいたキラーホーネット達は地面へと撃ち落とされていく。
とはいえ地面に撃ち落とされたキラーホーネットもただでやられるわけにはいかないのか、毒液をお尻の先端部分から噴射してくる。
「氷壁!」
コウは毒液を掛けられないようにすぐ氷壁を出すが、どんどんと溶かされていく。
数が多いだけに毒液の量も多いので長くは持たないだろう。
「流石に数が多いな。ライラ!イザベル!フェニ!少しだけ時間を稼いでくれ!」
「分かりました!」
「了解です~!」
「キュイ!」
コウは後ろに少し下がるとイザベル、ライラ、フェニの2人と1匹に前線を任せることにする。
コウが居ない間はイザベルが得意な風魔法で毒液を防いだり、ライラは地面に落ちているキラーホーネットを仕留め、フェニはキラーホーネット達の羽をボロボロにして落とすなど戦果を上げていた。
しかし数は倒せど倒せど少なくはならないので何かしらの殲滅できるような物が必要だろう。
そしてコウが後ろに下がってある程度の時間が経つと、周囲の枝垂柳の葉がピキピキと白く凍りついていく。
「準備が整った!全員後ろに下がってくれ!」
コウの掛け声とともに全員はコウの後ろへと下がるとすぐに自分達を包み込むように氷のドームを作り出していく。
そして氷のドームがコウ達を包み込むと枝垂柳の凍りついた葉が桜の花が散るかのようにひらりひらりと落ちていく。
「とっておきだ!"
するとひらりひらりと落ちていく枝垂柳の凍った葉が周囲のキラーホーネットの一部に触れると、その部分から凍っていき、キラーホーネットは氷漬けになっていく。
勿論、避けようとしているキラーホーネットもいるが大量の葉が上から落ちてくるのを避けきれずはずもない。
空中にいたキラーホーネットは全て地面に氷漬けとなって落ちており、残ったのは女王だけである。
「はぁ...はぁ...あとは任せた」
コウも大量の魔力を消費して疲れたのか、汗が額を流れていく。
しかしまだ女王が残っているのでここで倒れるわけにもいかないのだが、流石に限界というものがあるので残りの女王はイザベル、ライラ、フェニの2人と1匹に任せることにしたのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます