第133話

 無事に一夜を何事もなく過ごし、テントなどを片付けコウ達は2階層の中層を進んでいた。


 今のところ成果としては宝箱を2個ほど見つけてはいるが、宝箱の中身は訳の分からない石のような硬いもので出来た人形が6つと銀色の指輪が1つだけであった。


 これらの見つけた物はきっと魔道具なのだろうが、鑑定してくれる場所へ持っていかなければ実際にどのような物かが分からない。


 鑑定してくれる場所はダンジョンから地上に出ると鑑定所なるものがあるらしくそこへ持っていけば鑑定してくれるらしい。


 まぁ過去にハイドがやってくれた事と同じようなことをしてくれるのだろう。


 そしてもう1つあったことと言えばコウの左腕にもう一房追加で魔向草が寄生しているということである。


 やはりあのイザベルとライラの言葉は冗談ではなかったらしく中層を進んでいる途中に偶々、魔向草が生えており、植物型の魔物がいる中を必死に取りに行ってコウへとお願いし寄生させたのだ。


 渋々コウは魔向草を寄生させたのだが、左腕はある意味新しい亜人種の様な見た目になっていた。


 これではまるで木人である。


 とはいえ魔向草をコウに寄生させた後のイザベルとライラはかなりの上機嫌である。


 それはそうだろう欲しいと思っていた宝石が手に入るのだから。


 やはり何処の世の女性も光り物が好きなのかもしれない。


 ただコウとしてはなんとも言えない気持ちにはなっているのではあるが...。


 暫くイザベルとライラの2人は魔物が出てくるとコウの左腕に寄生させている魔向草に負担を掛けないよう率先して倒しに行ってくれるのでコウとしては楽ではあった。


「それにしても本当に擬態が得意な魔物が多いな」


「まぁそれが中層の特徴ですからね」


「でも慣れてきましたけどね~擬態していても所詮は魔物ですから~」


 擬態している魔物は葉っぱを真似しているものや木の幹に張り付き色を変化させているものなど様々であった。


 その中で特にコウが面白いと感じたのはヒトギリという魔物である。


 植物型の魔物であり、トレントに近しい見た目をしている。


 ヒトギリという魔物は自身の周囲で人や魔物が死ぬと触手のような蔓を操って回収し、捕食する。


 そしてその捕食した人や魔物に似た姿を触手のような蔓で再現するのだ。


 再現された人や魔物は声を出し、横になって弱っている振りをして罠のように待ち構え冒険者や魔物を騙し、襲うといったことをする。


 とはいえ足の部分をよく見ると蔓が地面へと伸びているので見分け方としては簡単ではある。


「ちょっと待って下さい」


 ふとイザベルの足が止まり一点の方向へと真剣な表情で目を凝らしていた。


 もしかしたら魔物がこちらに向かってくるのかもしれないとコウは思いすぐにサンクチュアリを構えイザベルと同じ方向を注意してみる。


「イザベル?何かいるのか?」


「いえ...あの果実を見て下さい」


 しかしその方向には魔物はおらず、何も向かってくる様子がないのでイザベルへと聞くとなんとも言えない返答が帰ってきた。


 イザベルが指をさす所には桃色の林檎の見た目をした果実が多く枝に実っており、それを真剣な表情で見つめているのだ。


「...もしかしてあれが欲しいとかって言うんじゃないんだよな?」


「いいですか?あの果実は王都でも人気があるのですが中々手に入らないのです。つまり今手に入れるべきです」


 どうやらあの果実にそれほどの魅力があるらしい。


「はぁ...分かったよ。取れるだけ取って収納の指輪の中に入れれば良いんだろ?」


 コウの言葉にイザベルは小さくガッツポーズをすると、すぐにその果実が実っている場所へと歩き出した。


 まぁライラとフェニもイザベルの話を聞くと取る気満々になっていたので止めることはもう無理だろう。


「しかしあの果実はどう取るんだ?ここからじゃ手が届かないぞ」


 果実は地上から10m以上離れているので流石に手が届かない。


「任せて下さい。まずコウさんは果実の下に居て貰っていいですか?」


 コウは素直にイザベルの指示を聞き、果実の真下へと移動し、待機する。


「では上手くキャッチして下さいね!ウィンドアロー!」


 するとイザベルは片目を瞑り、狙い定めると魔法を果実に向かって撃ち出す。


 そして撃ち出された魔法は見事に果実と枝のつなぎ目に命中し、コウにの立っている位置に向かって落下してくる。


 コウは真上から落下してくる果実を受け止めようと両手を前に出し構えるが、両手に触れた瞬間に果実が柔らかいためか落下の衝撃に耐えきれず潰れてしまった。


 潰れた果実からは桃の様な香りがして良い匂いで少しだけ舐めてみるとかなり糖度が高く美味しい。


 しかし手が果実の汁でベトベトなので、すぐに水魔法を使って果実の汁がついた手を洗い流していく。


「む〜流石に潰れてしまいますか...あっそうだ!フェニちゃんあの果実を取ってきてくれませんか?」


「キュイ!」


 イザベルはコウの肩に乗っているフェニへとお願いすると飛び立ち果実が実っている所に向かっていく。


 フェニは果実と枝のつなぎ目ではなく、枝自体を掴んでくちばしで枝を折ると数個纏めて持ってくるのだが、流石に重いのかふらつきながら戻ってきた。


「フェニちゃん流石!その調子で回収お願いします!報酬は弾みますよ!」


 報酬は弾むと聞くとやる気が更に出たのかどんどんと回収してはコウの収納の指輪の中へと入れていく。


 そして暫くフェニの力を借りて果実を回収をしていくのであった...。


ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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