第132話
魔向草の示す方向へコウ達は歩き続けると先程まで大木が連なり、木の枝が空を少しだけ隠していた風景から少し変わって、ちらほら枝垂柳を大木にした様な木が増えてきた。
上を見ても垂れている枝のせいか視界が悪く時折、隙間から夕方の空が見えるぐらいだ。
もしこれが夜にでもなれば月明かり自体も少ししか通さないので真っ暗な環境になるだろう。
なので早めに休憩できる場所を確保しておきたいところではある。
「なんか周りの雰囲気変わってきたな」
「ここからが2階層の中層なので気をつけて進みましょう」
ということはあの枝垂柳の様な木が前層と中層の分かれ目ということになる。
コウの左腕はまだ魔向草にぐるぐると根が張られており、コウ達が進んでいる道と同じ方向に花は向いていた。
「あれ~?コウさんの腕にある花の宝石が青く変わっていませんか~?」
「ん?本当だ。なんだこれ」
変化に気づいたのはライラだ。
花の宝石部分が最初は透明だったのだが、いつの間にか青く透き通った宝石へと変化していた。
別にそれ以外は変化しているとことはなく、コウの体調などにも問題はない。
「そういえば何処かで聞いたことがあります。魔向草はその吸った魔力によって変化して唯一無二の宝石を作ると...。しかも高く売れるらしいですよ?」
コウは最初に調べたときハイドから水系統と言われた。
つまりコウの魔力を吸った結果変化し、青く透き通った宝石になったということなのだろう。
まぁ自分の体に寄生させて魔力を吸わせ作るのだからそれはもう希少価値の高い物になってもしょうが無い。
しかもこのダンジョンの2階層にしか生えていない植物なので尚更だ。
「何かあれだな。もう少し魔向草を採っても良かった気がする」
もう少し採取しておけばよかったと少しコウは冗談交じりにそんな事を呟く。
コウならばある程度寄生させて魔力を吸わせても問題はないので大量生産できれば良い商売となるだろう。
現状は冒険者業をして、そこそこ稼げているのである意味稼げなくなった時の最終手段である。
まぁ大量に生産できたとしても一気に売れば価値が暴落してしまいそうではあるが...。
「それにしても魔物の気配が一切しないな。視界が悪いってのもあるけど」
「中層からは大体ですが擬態している魔物が多いんですよ」
イザベルの話を聞きつつ、歩いているとコウの目の前に上からぼとりと透明な粘土の高い透明な粘液が落ちてくる。
すぐに上を見上げるとそこには枝垂柳の枝に擬態していた3m程のナナフシに似た虫の魔物がこちらに顔を覗かせ、今にも飛びかかってきそうだった。
コウは左腕の寄生させている魔向草が取れないように手で覆い隠すようにその場から飛び退くと、その虫の魔物は枝垂柳の枝から落ちてくる。
イザベルやライラ、フェニもどうやら無事に回避には成功していたようでとりあえずは一安心だ。
「あれは本で見たことあるな。確かブレークブランチとかいう魔物だったな」
過去にローランの図書館で本を読み漁っていた時に見た魔物であり、コウは本に書いてあった特徴を思い出すように記憶を手繰り寄せる。
ブレークブランチは木の枝などに擬態する魔物だ。
奇襲が得意で周囲に擬態しながら待つ魔物であり、似たような魔物はトレントなどと一緒だろう。
そして何より特筆する部分は再生能力だ。
なんとこのブレークブランチという魔物は足を切られてもすぐに再生するといった能力を持っている。
とはいえ奇襲がメインの魔物なのでそこまで戦闘力は無いのでコウ達にはすぐに対処できるような魔物と言ってもいいだろう。
「すまん。魔向草が取れるのが嫌だから任せてもいいか?」
「勿論大丈夫ですよ~。じゃあサクッと倒してきますね~」
「わかりました。魔向草が失くなったらまた探さないといけないですしね」
イザベルとライラはコウの言うことに頷き目の前にいるブレークブランチを排除するべく向かっていく。
あの2人ならば任せても安心だろう。
コウはゆっくりと2人が戦う姿を見ながら地面の上へと座る。
イザベルとライラは2手に分かれてまず最初にイザベルが先行して足を切り落としているようで6本ある足を根本から全て切り落としていく。
とはいえブレークブランチは切られた部分から新たな足をズルリと出し再生させていくが回復が追いついておらず再生しては切り落とされを繰り返していた。
そしてブレークブランチは地面の上に胴の部分を残し1本の棒になると胴体にある節の部分へとライラが拳を落とし関節を外して切り離していく。
やってる事自体はかなりエグいがイザベルとライラの息はピッタシであった。
勿論、ブレークブランチはそんな事をされてば生きているはずもなくピクリとも動かなくなる。
「お疲れ。助かったよ」
「いえいえ~報酬はその宝石でいいですよ~」
「あっずるいですね。私も欲しいのでもう一房コウさんに寄生させますか」
「はぁ...お前らは俺を何だと思ってるんだ」
コウがブレークブランチを倒し戻ってきた2人にお礼を言うとライラは魔向草の付いている青く透き通った宝石を要求し、イザベルはもう一房魔向草をコウに寄生させようとしてくるのでコウは少しだけため息をつく。
「冗談ですよ」
「そうそう~冗談じゃないですか~」
イザベルとライラは軽く冗談というが目が冗談を言っているようには見えないのは何故だろうか。
「...まぁいいや。とりあえず今日の休憩できる場所を探そう」
その後、無事にコウ達は少し広いスペースが確保された場所を探し出すとテントなどを収納の指輪の中から出し、魔物避けの魔道具を使用するなどして森の中で一夜を過ごすのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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