第131話
大自然が広がり、木々に生い茂っている葉の隙間からは太陽の光が差し込む。
ここまで大自然が広がっているのならばゆっくり森林浴と洒落込みたいところではあるのだが、現在コウ達にそんな余裕はなかった。
何故ならばコウ達は猿のような魔物に襲われており、追われているのだ。
猿のような魔物の名前はスローイングモンキーと言って大森林ロートスでは前層から中層付近で生息している魔物であり、見た目はテナガザルに近しいだろうか。
どうしてこの魔物に襲われているのかというと、コウ達は不幸にも地図通りに中層を目指して歩いていたら通り道が縄張りだったらしくコウ達を追い出そうとしにきたようだ。
スローイングモンキーは数が多く、長い手を生かして大木から伸びている木の枝にぶら下がって振り子のように体を揺らし、他の木の枝へ飛び移りながら移動してくる。
特に厄介なのが木の枝に付いている木の実を正確にそして速く投擲してくることだ。
しかも木の実は石のように硬いので当たったらただでは済まないだろう。
コウ達は追ってくるスローイングモンキーから投げられる木の実を弾き飛ばしたり、回避したりして何とか逃げていた。
別に戦っても良いのだが、わざわざこんなところで消耗しても仕方ない。
とはいえ結構な距離を走って逃げていたため、既に縄張りからは出ているのか追ってくるスローイングモンキーの数は徐々に減ってきている。
「ふぅ...だいぶ数が減ってきたな」
「そうですね。ただ...少し問題が」
「今ここって何処にいるんでしょうか~?」
コウ達はスローイングモンキーから逃げ続けた結果、問題が発生した。
そう、それは地図はあるが周りの木には地図に示された印がなく、現在の位置が分からないということだ。
第1階層ではある意味一本道の様なものだったので、ほぼ迷う要素はなかったがこんなだだっ広い森では迷ってしまうのも当然である。
これでは地図があっても3階層まで辿り着くことが出来ないだろうし闇雲に進んでも更に迷うだけだ。
しかし一応、迷った時の対処法としてマリファスからアドバイスを貰っていた。
それはとある植物を探すことでこの迷ってしまった問題は解決するのである。
その植物の名前は魔向草というもので、この2階層だけに1年を通して生えている草となっていて、先端部分には黒い花が咲き、中心部には小さな宝石のようなものが付いている。
何故、この植物が問題を解決してくれるのかというと先端部分の黒い花が3階層に向かって咲いており、地面から採取しても同じ方向を向くため、その方向へ進めば3階層へ続く道へ繋がっているのだ。
ただしメリットだけではなくデメリットも存在する。
魔向草は根を下ろしている場所の魔力を吸い取るのと数が少ないということだ。
特に人間種の魔力が好みらしく、皮膚の上に乗せると根を下ろし、魔力を吸い取るといった特性を持つ。
魔力が少なく魔向草の詳細を知らない者がそれを手に取れば吸い続けられて最悪死に至る。
とはいえ今回は魔力を莫大に保有しているコウがいるので、あまり問題にはならないだろう。
生えている場所は植物型の魔物の近くに基本的に生えているので、まずは植物型の魔物を探すことになる。
まぁ逆に言えば魔向草の近くを歩かなければ植物型の魔物に出会うことはない。
「あれは魔向草じゃないですか~?」
暫く森を探索しているとライラが見つけたのか指をさした方向には黒い花が咲いた魔向草が見えるが珍しくその周囲には他の植物はない。
「おっライラよく見つけたな。運がいいな単体で生えているなんて」
「ちょっと待って下さい」
コウは早速、魔向草へ近づき採取しようとするとイザベルからストップの声がかかったので足を止める。
イザベルは近くに落ちている小石を魔向草の近くへと投げると地面から突き出すようウツボカズラに似たような植物が数体ほど姿を現す。
その植物は葉の部分が地面と同じ様な色をしており、もしイザベルがストップの声を掛けなかった場合、コウがそのままあの植物に捕まっていただろう。
そして植物型の魔物は何事を無かったのかのように地面の中へと再び戻っていく。
「イザベル助かった。あんなのもいるんだな」
「私も過去に体験してますからね。無事で良かったです」
とはいえあの魔物を倒さなければ魔向草を手に入れることはできないし、地面から出てきたのを見たところ数も多いかもしれない。
「とりあえず倒さないとな。前トレントを探し出す時使った魔法でいいか」
コウは自分の足元に何匹もの氷で出来た鳥を作り出すと魔向草のその辺一帯に飛ばし、地面へと降り立たさせる。
すると地面から釣られたように先程のウツボカズラに似た植物が飛び出し、コウが作り出した氷の鳥を捕らえていく。
「あぁ〜可哀想です〜」
「いや...俺の魔法だが...。まぁいいや」
ライラはコウが作り出した氷の鳥が無慈悲に次々と捕食されているのを手のひらをわきわきとさせ、悲しそうな表情で見ているがコウの魔法である。
そしてコウは飛び出してきた植物に向かって次々と氷槍を打ち込んでいく。
所詮は植物。動かない的のようなものであるため、袋のような部分に突き刺さり、中からは黄緑色の溶解液が垂れて出てくる。
地面に溶解液が垂れるとジュウジュウと音を慣らしているので捕まったらあれに溶かされるのだろう。
氷の鳥は更に範囲を拡大し、別のところへ飛んでいくが殆ど倒してしまったのか地面からはもう出てこない。
そしてこのまま溶解液が垂れ出たまま放置していると目的の魔向草まで溶かされてしまうので、コウは上手いこと溶解液が足につかないよう魔向草の場所へ飛び移っていく。
「よっ...と。よし取れた」
魔向草が生えている場所へ辿り着くと土ごと抉り取り、先程いた場所へ同じ道を通って戻っていく。
コウは左腕に魔向草を乗っけると根が動きだし、腕へとぐるぐるに根を巻きつけてきた。
「おぉ〜なんか魔力を少しだけ吸われてる感覚があるな」
「痛くないんですか〜?」
「いやなんか痛いよりはくすぐったいかな?」
吸われてる感覚と言ってもコウの魔力量ならほんの少しと感じるだろう。
暫く魔向草に魔力を吸わせていると先端の花の部分がコウの後ろへと折れ曲がり向きを変えて3階層の道を示すのであった。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます