第127話

 キラーホーネット。それが今コウ達と対峙している魔物の名称だ。


 このダンジョン内では中層付近で生息しており、性格は凶暴で攻撃的。


 攻撃方法は強靭な顎やお尻に付いている針を使用しての攻撃となっていて、強靭な顎で噛みちぎったり針に刺されたり針から毒液を出したりと様々だ。


 基本的には集団で生活しているのだが、目の前にいるのは働き蜂であり、女王や幼虫のための餌を探し求めていたのだろう。


「来るぞ!」


 対峙しているキラーホーネットの数は幸いなことに3匹。


 これが集団だったら逃げるか魔法で何とかするかの2択だったが3匹程度ならば問題はない。


 高速で飛行しこちらへ向かってきたキラーホーネット1匹を迎え撃つようにコウは待ち構えると空中でピタリと急停止し、お尻の針から紫色の液体を飛ばしてくる。


「毒か!」


 コウはキラーホーネットの攻撃を避けるために乗っている大木の根からすぐに飛び降りる。


 そして先程コウが居た場所にキラーホーネットが飛ばしてきた紫色の液体が付着した瞬間に大木の根は腐ったようにどろりと溶け出す。


「あれはあんまり喰らいたくないな」


 流石にあの毒を喰らってしまえばひとたまりもないだろう。


 とはいえ相手は空中にいるためこちらの近接攻撃は届かず効果がありそうなのは魔法ぐらいしかない。


「氷槍!」


 コウは氷槍を作り出すとキラーホーネットに向かって狙い撃ち出すが、そう易易とは当たってくれる訳もなく、コウが作り出した氷槍はひらりと避けられ後ろにある大木へと突き刺さる。


「ちっ!動きがすばしっこくて当たらないか!」


 キラーホーネットをどうにかして地に落とせないかを考えていると肩に止まっていたフェニがコウの肩から飛び立つ。


「キュイッ!」


 俺に任せろ!と言わんばかりに鳴きキラーホーネットへと向かって飛んでいくフェニ。


 確かにフェニは大きさでいえばキラーホーネットには勝っていないが小回りが利き、素早さならば圧倒できるはずだ。


 きっとフェニには何かしらの策があるのだろうと思い任せているとキラーホーネットの周りをグルグルと回り翻弄していく。


 よく見るとキラーホーネットの背中にある4枚の薄い羽が徐々にボロボロになっていくのが見える。


 そしてキラーホーネットはフェニの攻撃により、ボロボロの羽になってしまい空を飛ぶことが維持できず空中から地面へと落ちてきた。


「よくやったフェニ!その調子でイザベルとライラの援護に向かってくれ!」


 フェニはコウの指示を聞き、まず最初にライラの方へと向かって飛んでいく。


 イザベルは正直、風魔法があるのでフェニの援護は必要ないはずだが、ライラは魔法を使えなくほぼ近接といってもいいので苦戦しているかもしれない。


 近くで戦っているライラの姿を横目で見るとやはり飛行している相手には手が出しづらいらしく回避に専念していた。


 とはいえライラの元にフェニは到着すると、先ほどと同じようにキラーホーネットの薄い羽をボロボロにして地に落とそうとしているので問題ないはずだ。


 そしてイザベルの方は何らかの風魔法を使用し、既にキラーホーネットを地に落としていた。


 流石、Aランク冒険者というところか。


「問題なさそうだし目の前のこいつを処理するか」


 羽が無くなり、地に落ちてしまえば所詮はただの蟻である。

 

 コウは目の前の羽がないキラーホーネットへと氷槍を撃ち出すと避けきれるはずもなく、頭と胴体のつなぎ目へと当たり分断される。


 ライラやイザベルの方も無事終わっているのか、こちらへ戻るように向かって歩いていた。


「終わりだな。さっさと回収するか」


 回収しようとキラーホーネットの分断された頭へと向かうと、まだ生きているのか顎を擦り合わせガチガチと音を鳴らしていた。


「おぉ...まだ生きてるのか。虫の生命力は凄いな」


 分断されたお尻の方は針から毒液を垂れ流すように出しており、地面を溶かしている。


「コウさん早く離れたほうが良さそうです」


「ん?なんでだ?」


「キラーホーネットの毒液には仲間を呼ぶ性質を持っているのでここは危険かもしれません」


 どうやらキラーホーネットの毒液には仲間を呼ぶフェロモンのようなものが含まれているらしく早々にここを立ち去らないと増援のキラーホーネットが来るとのことだ。


 そしてコウへ初撃として撃ち出してきた毒液にもフェロモンが含まれているので、そろそろ増援が到着するかもしれない。


 今現在も毒液がお尻の針から垂れ流すように出ているのはそういう意味があったようだ。


「最初から最後まで面倒くさい魔物だな。回収は諦めてさっさと進むか」


 収納の指輪の中には生きている魔物は入れることが出来ない。


 つまりかろうじて生きているキラーホーネットを絶命するまで待っていると増援の仲間が来てしまう。


 遠くから同じように羽音がさっきよりも多く聞こえてくるので残念ながら回収は諦めて移動することとする。


 流石に何匹もいては不利というものだ。


 コウ達は早々にこの場から立ち去り、前層の途中にあるというベースキャンプを目指し進むのであった...。


ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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