第128話
コウは第2階層である大森林ロートスを腕を組みながら歩きつつ、少しだけ頭を悩ませていた。
それは先程のキラーホーネットとの戦闘についてである。
現状、コウには使える魔法にも色々とあるのだが、高速で飛行する魔物に対応できる魔法がないということだ。
水球や氷槍では狙った相手に向かって真っ直ぐ飛ぶ魔法なのだが、速度がどうしても足りず先程のキラーホーネットのような素早い魔物には簡単に避けられてしまう。
氷牢結界も相手が簡単に捕まってくれるとは思えないし、垂氷に至っては条件が限られている。
他にも氷壁や切り札である技もあるのだが、簡単に当たるようなものでもなかったり魔力消費が多かったりするのだ。
昔、ハイドといる時に銃弾を真似して魔法で作り出してみたのだが、水球や氷槍などよりかは速く撃ち出せたけれども銃弾は小さいためか威力が低かった。
(なんとか対策を考えないとな...)
とは言うもののすぐに思いつくはずもなく再び頭を悩ませる。
「なにか悩み事ですか~?」
ライラがコウの様子が普段とは違うことに気づき話しかけてきた。
「いや飛んでいる相手に対する有効な魔法が何か無いか考えてるんだが思いつかないんだが...」
別に隠すことではないのでコウも今悩んでいることを打ち明けることにする。
1人で悩むよりかは他の人にも意見を聞くのは重要だ。
「ん~でしたら弓の矢とか速くないですか~?」
弓の矢...そういえばスタンピードの時に天穹の2つ名を持つSランク冒険者と名乗っていたシルフィーという少女を思い出す。
確かにあの弓の矢の魔法は速く、そして威力も申し分ない。
あの弓の矢の魔法を模倣できれば相手が早い相手とはいえ、狙い撃つことが可能だろう。
試しにスタンピードの時に見た少し太めの弓の矢を氷で形作り、近くの大木へと狙いを定めて放つ。
矢はそのまま真っ直ぐ大木へと飛んでいき、速さも十分で大木に命中すると矢の半分ほど深くまで突き刺さり、かなりの威力があることが分かる。
「まぁ悪くなさそうだな。ただどうしてもあの魔法よりか威力と速度がないな」
ただ魔法の速度や威力はそれほど悪くはないのだが何かが物足りなく、流石にSランク冒険者の魔法と比べると威力や速度が劣ってしまうのはしょうが無い。
やはり伊達や酔狂でSランクと呼ばれているわけではないのだろう。
「ありがとうなライラ」
「いえいえ~役に立てて良かったです~」
暫くは地図と巨木に付けられた目印を頼りに進んでいると、フォレストウルフなどの魔物に遭遇して戦うこともあったが誰も怪我することなく、無事にイザベルの言っていたベースキャンプのようなものが見えてきた。
そのベースキャンプは遠くから見ると大木の内側をくり抜かれるように作られており、今まで見てきた大木よりも更に幹が太く大きい。
ベースキャンプでは物資の補給や休憩するためのスペースなども確保されているらしく、今回はここで休憩するのが良いだろう。
「なんだか久々にここに来ましたね」
イザベルはベースキャンプに来るのは久々のようで懐かしむように周りを見渡していた。
「いつぶりに来たんだ?」
「ん~あんまり覚えてはいませんが...私がAランクになってすぐ来たので1年前ぐらいでしょうか?」
1年前とするとコウがこちらの世界に呼び出されるよりも前のことである。
とするとイザベルはまだ若い年齢でAランクまで上り詰めたということになるだろう。
家柄も良くて実力もあるので天は二物を与えずという言葉は間違いかもしれない。
「ベースキャンプに到着しました~!」
「キュイキューイ!」
ベースキャンプへと到着すると多くの冒険者達が集まっており、第1階層と同じように賑わっている。
「そういえばここはなんで魔物に襲われないのか?」
第1階層にあったベースキャンプは防衛拠点として作られており、一応城壁などで囲われていたので襲われても大丈夫というのは分かる。
しかし第2階層のベースキャンプは特に城壁などで囲われているようでもなく、幹の部分がぽっかりとくり抜かれているので入りたい放題のようにも見える。
「あぁそれはある程度の魔物はこの大木が発生させてる匂いのせいですよ」
どうやらこの大木には魔物を寄せ付けないような匂いを発生させており、人間には匂わないのだが低ランクの魔物には効果があるようで殆ど襲われることはないらしい。
「へぇだからか...ってフェニは大丈夫なのか?」
肩に乗っているフェニを見てみると特に問題はなさそうに首を傾げている。
まぁフェニは死の森で出会った魔物なので低ランクの魔物ではないのだろう。
「珍しい顔だと思ってきたけど久しぶりだねぇ」
ベースキャンプの中にある休憩所を目指して歩いていると何処からか声が聞こえてきた。
声の聞こえた方向を見ると身長が2m程の大きさの男性がこちらへと向かってくる。
見た目は貴族のような格好をしており、右目に片眼鏡で長めのステッキを携えている。
髪はオールバックだがニコニコとして物腰は柔らかそうであり、特に特徴的なのが右足が義足のような物が付いていて足が悪いようだ。
「お久しぶりですね。マリファスさん」
イザベルは挨拶をし、どうやら目の前の男はマリファスというらしい。
「もしかしてそちらの方々はお仲間かな?それにしても君が男をパーティに入れてるなんて珍しいねぇ」
「色々と事情があるのですよ」
マリファスという男はコウを細め、まるで見極めるかのようにじっとりと見てくるがすぐにニコニコとした表情へと戻る。
「あぁ自己紹介が遅れたねぇ。私はマリファスといって展望の二つ名を持つAランク冒険者だよ」
目の前の男は軽く自己紹介をすると「よろしくねぇ」と言ってくるが、実はイザベルと同じ二つ名を持つAランク冒険者ということが判明するのであった。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます