第126話

 第2階層大森林ロートス。


 数多の巨木が大地へと根を下ろし、葉と葉の隙間からはダンジョン内だというのに太陽に似た光が差し込む。


 1階層の無機質なダンジョンとは違い大自然が溢れ、遠くからは鳥の鳴き声が聞こえてくる。


 そして一部の巨木には傷がつけられているのが見え、手元にある地図の目印と同じようなものなのでルートの案内だろう。


「...ここはダンジョンなんだよな?」


 コウは自身の頭上を見上げ、葉と葉の隙間からの陽の光のようなものを浴び目を細めながらイザベルへと問いかける。


「えぇ勿論ダンジョン内です。ここが第2階層大森林ロートスと言われる場所です」


「ダンジョンなのに太陽の光みたいなのがあるんだが...」


「ダンジョン七不思議の1つですね。今も研究者が構造を解明しようとしてるらしいですよ」


 まぁ細かいことを気にするよりかは先に進んだほうが良さそうではある。


 とりあえず2階層の地図を片手に大森林の中を進んでいくが、巨木の根っこなどのせいで起伏が激しく進んでいくには中々にきつい環境だ。


「ん~何か甘い匂いがします~」


 ライラ何かの匂いに気づいたようで犬のようにすんすんと鼻を鳴らし匂いの元は何処なのかを探そうとしていた。


「確かになんか甘い匂いがするな」


 ライラの歩いている方向には真っ赤で6つの大きな花弁の花が咲いており、それがニオイの元だろうか?


 似たようなもので例えるとラフレシアなのだが、匂いは真逆のものである。


「その花には近寄らないほうが良いですよ。魔物ですから」


 イザベルの一言で大きな花の方へ向かっていたライラは「それなら早く言って下さい~」と言いながらすぐに引き返しコウ達の元へと戻ってくる。


「植物型の魔物はトレントぐらいしか知らないけどあんなのもいるのか」


「ほらあそこにいるゴブリンを見ていてくださいね」


 イザベルの指をさす方向には丁度ゴブリンが赤い花の近くを歩いており、甘い匂いに気づいたのかふらふらと近寄っていく。


 そしてゴブリンが大きな花弁に触れた瞬間に6つの花弁がゴブリンを包み込むように閉じ食虫植物のように捕らえる。


 包み込まれた花弁の中ではジタバタと外に出るためゴブリンが暴れているようだが次第に動きがどんどんと鈍くなっていく。


 包み込むように閉じた花弁は大きく膨らんだり、小さく萎んだりを何回か繰り返すと再度開くが、そこに先程まで居たゴブリンはおらず骨のみが残っていた。


「おぉ...良かったなライラ。骨にならなくて」


「イザベルさんが注意してくれて良かったです~...」


 今回はイザベルの一言のお陰でライラは助かったのだがいつもイザベルが一緒にいるわけではない。


 コウは今回の件を反省としてイザベルに第2階層大森林ロートスではどの様な環境でどんな魔物が出現するのかを教えてもらうこととした。


 現状コウに足りないのは経験...そして知識である。


 戦闘面に関してはハイドと一緒にいた時よりかはマシになっているし、ある程度は本で魔物の勉強はしていたのだがそれでも実践ともなれば勝手が違う。


 聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。


 今回はイザベルというAランク冒険者が一緒に行動しているので多くのことを学ばせてもらういい機会だろう。


 そして暫く大森林の中をゆっくりと歩きながらイザベルから色々なことを学ばせてもらった。


 学んだことといえばこの大森林ロートスでは前層、中層、深層と別れているのだが、次の3階層へ辿り着くには深層まで進まないといけない。


 そして深層は危険な魔物が多く存在し、例を出すとコウ達が過去に戦ったレイジーベアやオーガなどが生息しているとのことだ。


 特にこの階層で気をつけたほうが良いと言われているのが先程も見た植物型の魔物であり、周りを注意しながら進むこととなる。


 他にも前層の途中にはベースキャンプのようなものがあり、その場所には1層目と同じように多くの冒険者が集まって買い物などが出来るようになっているのだとか。


 ただそれ以降の階層はベースキャンプを設置できるような安全な場所はないらしい。


「色々と教えてもらって悪いな。助かるよ」


「いえいえ。知らないことを知ろうとするのは悪いことではありませんし良いことだと思いますよ」


 そんなやり取りをしていると遠くから何かの羽音が聞こえてくる。


 その音はまるで虫が飛んでくるような羽音であり、こちらへどんどんと近づいてくるようだ。


「魔物がこちらに来ますね。しょうが無いですが戦闘準備をしといたほうが良いかもです」


「勘弁してくれ。さっき蜘蛛と戦ったばかりなんだから」


「も~また戦闘ですか~?」


「キュ~イ...」


 流石に連戦は疲れていて勘弁してほしいのだが、残念なことに魔物が気を利かせてくれるはずもない。


 武器を各々構えて待っていると羽音を鳴らしている正体が巨木の影から顔を出す。


 それは体長約1m程の巨大な蜂であり、大きな羽音と強靭な顎をカチカチ鳴らしながらこちらへ向かってくるのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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