第122話
縦穴の岩壁が続く場所をゴンドラに乗って5分ほど待つと洞窟の開けた空間の場所へと到着する。
どうやらベースキャンプのような場所となっていて小さな街のような感じになっていて城壁で囲われており、地下ということなのに周囲は明るい。
地下なのに明るい理由はダンジョン内で基本的に生成される魔光石のお陰だろう。
「ダンジョンなのに商人とかいるんだな」
「あれは冒険者兼商人の方ですね。ベースキャンプですので儲かるのでしょう」
冒険者をやりながら商人もしているというのはなんとも商売魂が逞しいことである。
この場所は冒険者達のためのベースキャンプというよりかは地上に繋がっているゴンドラがあるため魔物に壊されないようにしているのがメインのようだ。
要は防衛用拠点だったのがいつの間にか冒険者達がベースキャンプとして使っているのだろう。
とはいえこの場所に今は用はないのでベースキャンプから早々に出て行き第1階層である神秘への入り口を攻略していく。
暫く進むと洞窟は岩壁だったのが、いつの間にか煉瓦状の壁へと変わっており、地面は平坦となっていて歩きやすい。
ダンジョンの煉瓦状の壁はきっと魔光石が変化したものだろうか?それにしてもまるで生きているかのように変化していくダンジョンとは不思議なものである。
「なんか魔物が全然いないな」
「まぁ1階層ですし他の冒険者達が倒しているのでしょうね」
「私的には楽ちんでいいですよ〜」
1階層の地図を片手にダンジョン内を歩いていくと時折だが目印のような看板が設置されており、わかりやすい。
ただ中には魔物に破壊され朽ちているものもあるが、他の善意で冒険者達が新たな目印を少しだけ置いていたりしているようだ。
「うっ...!何だこの匂いは...」
暫くダンジョン内を歩き回ると現在向かっている先の道からツンとした匂いの異臭をコウは感じ取り、苦虫を噛み潰したような顔をしてしまう。
コウの身体は高性能に作られているためのせいか嗅覚も敏感なため感じ取ってしまったのだが、ライラとイザベルはまだこの異臭については気づいていないようだ。
そのまま先の道を歩いていくと異臭の原因がすぐに分かった。
ペタッ...ペタッ...と音を立てながらこちらへ姿を表したのは腐った死体つまりはゾンビのようなものでそれが異臭の原因だろう。
見た目は元冒険者のような格好をしており、左足や右腕が腐敗していて目の瞳孔は上下に動き意識はなく呻き声を出しながらこちらへゆっくりと歩いてきている。
「あれは元冒険者のリビングデッドですね」
ダンジョン内で死亡した人や魔物は数時間立つとダンジョンに吸収されたりする。
だが稀に人の死体や魔物に魔石が生成され動き出すことがあり、それは死霊系の魔物として復活することがあるのだ。
「あれを切るのはちょっと嫌だな...」
コウのサンクチュアリは死霊系の魔物に対して特攻の武器でもあるが、目の前にいる腐ったものを切るのは愛用の武器を汚してしまうようで些か抵抗がある。
「魔法でいいや」
片手を前に突き出し、いつもの如く魔力を手に留まらせ魔法を作り出す。
氷槍などは流石にオーバーキルだろうと思ったので水球を作り出すと目の前のリビングデッドに向かって打ち出だしていく。
目の前のリビングデッドはただの死体であり、動きも遅いので避けれるはずもなく、打ち出された水球は大きな音を立てて直撃する。
リビングデッドの身体はバラバラに吹き飛びダンジョン内の煉瓦上で出来た道の周りに腐った身体が散乱し、まるで猟奇的な殺人現場の様だ。
木を抉るほどの威力がある水球がリビングデッドの様な柔らかい身体に当たるとこうなることは予測できたことである。
ダンジョンの煉瓦上の道はコウの水球では抉れておらず案外硬いようだ。
しかしこれから歩く予定だった道が血まみれで腐ったバラバラの身体が散乱しているのはあまり歩きたくないし、ダンジョンに死骸が吸収されるのには時間が掛かってしまうのでライラとイザベルから少しだけ圧を感じる。
「コウさん。次からは切って倒して下さい」
「その...すまん。ここを通ったら皆の靴を洗っとく...」
イザベルから少し注意されコウは申し訳ない気持ちになり、軽く謝り腐った身体が散乱した場所を通った後は自身の魔法で全員の足を洗うことを約束していく。
水の魔法に適正があったことが本当に良かったとコウは心の底から思ってしまう。
リビングデッドの腐った身体が散乱した道を通ろうと1歩だけ足を踏み出すと道の奥の方からキィキィ!と言う音が響いてきて何かがこちらに向かってきているようだ。
「ん?何の音だ?」
「これは...!魔物です!構えて下さい」
イザベルの声に全員が戦闘態勢になり、目を凝らしていると道の奥から黒い何かがこちらに飛んで向かってきていたが、すぐにその正体はわかる。
それは大きなコウモリであり、数は5匹だ。
大きさとしてはテレビやネットで見たことあるオオコウモリ程の大きさで目は赤くギラギラと光っている。
コウはサンクチュアリを横薙ぎに振るい飛んできた大きなコウモリ2匹を切り落としていく。
対して強くはなく、飛んできた速度もそこまで早くはなかったが数が多かったら厄介だったかもしれない。
隣を見るとイザベルとライラそしてフェニも大きなコウモリを問題なく倒しており、無事にコウモリの魔物との戦いは終わっていた。
「ふぅ...大きな音を出すとダンジョン内は響くから他の魔物を引きつけちゃうのか」
地面に落ち倒した大きなコウモリを収納の指輪の中へと仕舞い込みながらコウは何故、魔物が襲ってきたのかを理解する。
思った以上にダンジョンというものは厄介なのかもしれない。
とはいえまだ1階層であり、ここから先はまだまだ長い探索となっていくだろうが全員は気を取り直しダンジョンの奥へと進んでいくのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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