第121話
「もう少しで到着します!」
時は流れ王都から馬車に揺られ2日ほど経つが、盗賊達に襲われた日以降の旅はそこまで大きなトラブルは無く順調に進み、もう少しでダンジョン都市アルクへ到着すると御者から伝えられる。
この2日間であった事と言えば走っている最中に馬車の車輪が外れたのを修理したり、数匹の鳥の魔物が襲ってきたがフェニの活躍で撃退をした事ぐらいだろうか。
周囲の景色は1日前まで青々とした草が大地にまるで絨毯のごとく生い茂る草原だったのだが、今は景色が変わって岩肌がむき出しゴツゴツとした大きな岩などが転がる山道を走っていた。
空も快晴で時間的には朝から昼に移り変わる頃合いのためダンジョン都市アルクへ到着するとしたら丁度よい時間であり、到着したら買い物をした後にすぐダンジョンへ向かってもいいし1日休憩として宿に泊まっても良い。
まぁそれはイザベルとライラ考え次第だろう。
コウとしてはすぐにダンジョンへ向かっても良いのだが、そこまで急ぐようなことではない。
「おっ見えてきたな。あれがアルクか」
「私もみたいです~!」
小山を超えると馬車の窓から大きな街が見えライラも見たかったのか席を詰めてきて少し狭いのでコウは窓の側から離れライラへと譲る。
「とりあえず街へ到着したら必要なものを購入してダンジョンに行きますか?」
「あ~俺はどっちでも良いけどライラはどうする?」
「う~ん私もどっちでも良いですよ~」
窓の外を夢中で眺めているライラに話を振ると、どちらでも良いような返事が帰ってきた。
それならばダンジョンへそのまま向かってもいいだろう。
多くの馬車や冒険者達とすれ違うと、段々馬車の速度は落ちていき頑丈で大きな門の前へと到着する。
「ダンジョン都市アルクへ到着いたしました。お降りの際はお気をつけて下さい」
全員が馬車から降りると門の周りには王都やコウの拠点としているローランと違って異種族がかなり多いようで頭の上に耳やお尻に尻尾などが生えてる者などの人種がいるのが見える。
今回はイザベルがいるので長蛇の列で待たず、そのまま特別口からアルクの中へ入っていくと流石にダンジョン都市と言うだけあってほとんどが冒険者の格好をしたような人達で溢れかえっていた。
「先に必要なものを購入しに行きましょうか」
「そうだな」
「そうですね~まずは湯船です~!」
大通りには様々なお店が列を成しており、人混みをかき分けながら進み3階層までのマップや回復薬など必要な物を買い足していく。
コウは最初に湯船なんか売ってないのでは?と思っていたが店を何軒か回ると女性陣達が希望していた湯船も売っていて結局買う羽目となっていた。
売っている物の中には投石機なども売っており、もしかしたらこのダンジョン都市では売っていないものはないのではないのだろうかと思ってしまうぐらいには色々なものが売っている。
王都やローランとはまた違った料理が屋台で売っていて少し気になるが帰る際に買えばいいだろう。
「さて必要なものを購入したのでダンジョンへ向かいますか」
「ところでダンジョンは何処にあるんだ?」
「あぁそれはあそこですよ」
イザベルは指を大通りの先の方向へと向けコウはそちらの方向を見ると、そこには円柱状の白い塔のような建物が立っていた。
塔の頭頂部は白い光が輝いており、目印としたら分かりやすいだろう。
白い塔に到着すると入り口までにかなりの人数の冒険者達が列を成して並んでいるのが見える。
周りには自身をパーティーに売り込もうとしている者もおり、大体は屈強な男の冒険者達や大人数の冒険者パーティーへと話しかけていた。
「へぇ...売り込んでる奴もいるんだな」
「あぁあれはポーターの方ですね」
「ポーター?」
「荷物持ちの方のことですよ」
イザベルに詳しく話を聞くと大半の冒険者の方は収納の指輪や鞄などの高い魔道具は持っていない為、ポーターという荷物持ちをパーティーに加えるのだとか。
勿論パーティーに加えるならば報酬などを支払う必要があり、中には報酬を支払わない冒険者もいるらしい。
しかしその様なロクでもない冒険者はポーター同士の繋がりが強い為か、話が広まってしまうと今度はポーターが集まらずダンジョンへ入ること自体が厳しくなってしまうようだ。
冒険者とポーターは持ちつ持たれつの関係で成り立っているのだろう。
「あなた達は3人と1匹が従魔で良かったかしらぁ?」
雑談をしながら長い列を待っているとようやくダンジョンの入り口である白い円柱状の塔の前へ辿り着く。
しかし待ち受けていたのは青髭で屈強な体の女装をしたモンスターであった。
「モ、モンス...「誰がモンスターだごらァ!」すまん」
コウが余計な一言呟こうとすると目の前のモンスターは予測出来たのか盗賊達とは比にならないほどの迫力で声を上げたのでコウは反射的に何故か謝ってしまう。
「んもぅ!分かればいいのよぉ!自己紹介するわね〜。私はこのダンジョン受付嬢ドルマ。ドルちゃんって呼んでいいわよぉん」
機嫌を直したのか対応が最初の時と同じ様になったので無事に危機は回避したようだ。
どうやら何人かいる受付の人の1人らしいが見た目が嬢とは言えないがそれを口にすることはない。
「あぁ...ドルマさんって呼ばせてもらう」
「あら?つれないわねぇ...所でダンジョンに入るならギルドカードを見せてもらっていいかしらぁ?」
ギルドカードを見せてくれと言われたのでコウは収納の指輪中から取り出しイザベルとライラもドルマへと見せていく。
「あなた達はまぁまぁ強いのねぇ~。ついてきなさぁい!」
ドルマの筋肉が盛り上がった逞しい背中を追うように白い塔の中へと入っていくとそこには地下へ降りていくためのゴンドラがいくつも設置されていた。
「さぁこれに乗ればダンジョンへ降りていくことが出来るのよ」
何個かのゴンドラは上へ戻ってくると何人か負傷した冒険者達が戻ってくるのが見える。
きっとダンジョン内で不測の事態に巻き込まれたのだろう。
ごくりと生唾を飲みこれから未知の世界に挑んでいくことに若干緊張し手に汗が滲み出てくる。
「よし。行こう」
「そうですね~無理せず頑張りましょ~」
「厳しいと感じたらすぐに引き返しましょうね」
「キュイキューイ!」
全員が幾つかある1つのゴンドラの上に乗るとガコンッ!と音が鳴り、下へとゆっくり降りていく。
ドルマの「気をつけるのよぉ~!」と野太い声がこちらへ聞こえ上を見上げるとドルマが手を振っているのが見えたので振り返す。
すると何故か投げキッスが飛んできたのでなんとも言えない気持ちになるがドルマなりの緊張の解し方なのだろうか...いやそう思いたいだけである。
これからコウ達が挑むのは第1階層である神秘への入り口という場所であり、コウは気を引き締めるように深呼吸し下へ降りていくゴンドラが止まるのを待つのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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