第120話

 盗賊達を奴隷商に引き渡した後、イザベル達の元に戻ると途中まで組み立てていたテントなどの準備が既に終わっていた。


 コウが御者を食事に誘い皿へ盛り付けられた出来立ての料理を収納の指輪から出すと1人1人に配ってゆく。


 わざわざ料理をしなくて良いのはかなり楽な事であり、収納の指輪様々というところであろうか。


 そして魔石の品質に応じて虫や魔物を寄せ付けないランタンという魔道具もあるのだが、前回スタンピードの戦いが終わった時に数匹のワイバーンから魔石を拝借している為、他の魔物に襲われる心配や虫が寄ってこなくかなり快適なキャンプ生活である。


 とはいえ盗賊達に襲われる可能性もあるがフェニがいるためある程度は警戒してくれるだろう。


 どれもこれも快適に過ごす為に便利な魔道具ばかりだが、その魔道具達の中で1番活躍したのはスライムの核を改良したトイレだった。


 寝るテントから少し離れた位置へ余ったテントを組み立て中にトイレを設置し使い方の説明すると、女性陣からは特に好評だった様でイザベルから「譲って欲しい」とせがまれた程だ。


 しかしコウとしては譲るつもりは無く断ると残念そうにしていたが諦めるような目をしていなかった。


 そんなやり取りや色々な話をしている内に夜も老け、瞼が重くなってくる時間帯へなってくる。


 寝るのは同じテントではなく隣通しで2つに分かれており、御者は馬の面倒があるため馬車で寝ると言っていた。


「それにしても初日から色々あったな。まぁ明日もあるし早く寝るか」

 隣のテントからは黄色い声が聞こえ夜の女子会と化していて、イザベルとライラの2人はなんだかんだ仲良さそうにしているようだ。


 そしてコウも次の日に備える為に2人分程人が入る寝袋の中に入り目を瞑ると疲れていたのか身体から意識が徐々に喪失していく感覚になり、いつの間にか寝てしまうのであった...。


◾️

 時間的に大体となるが丑三つ時という頃合いにとある出来事が起こった。


「あんれぇ...コウさん間違えてこっちに来ちゃったんですかぁ...?しょうがないですねぇ...」


 目を擦りながらそんな事を言っており、どうやらライラはトイレに行った際に間違って隣のコウが寝ているテントへ入ってしまい勘違いしてしまったようだ。


 コウはぐっすり寝ていてライラがテントに入ってきたことには一切気がついておらず、気がついたのはフェニぐらいでライラなら問題ないとスルーしている。


 ごそごそとコウの寝ている2人分程人が入る寝袋の中へと入っていくが少しだけ窮屈だ。


 そして何事もなかったかのようにライラも眠り、時は過ぎ太陽が徐々に顔を出しコウはまさかライラが一緒に寝ているともつゆ知らず空が白む中、コウは目を覚ます。


「ん...よく寝た...ってなんでライラがここにいる!」


 コウは柔らかい感触の温かい何かが身を包み甘い香りがほんのりと匂うので目を開けるとライラがコウに抱きつくように寝ており、飛び起きてしまった。


 状況を整理するように頭をフル回転させるが何故ライラが一緒に寝ているのかが分からない。


「落ち着け。こんなところをイザベルに見られたらなんか良くない気がする」


 すぐにテントの外へ逃げるように出ると唯一起きているのは馬車の点検をしている御者だけのようでイザベルはまだ寝ているようだ。


「これはチャンスだな。ライラを起こすか」


 再びコウはテントの中に入りライラを揺らし起こそう試みる。


「おい...ライラ朝だぞ。起きろ」


 隣のテントで寝ているイザベルを起こさないように少しだけ声のトーンを落としながらライラへ喋りかけると眠たそうな目を擦りながらライラは目を覚ました。


「ん~~?コウさん~おふぁよ~ございます~」


「なんで俺のテントで寝てるんだ」


「え~?コウさんが私達の所に入ってきたんじゃないんですか~?」


「なわけあるか。そんな勇気は俺には無いし取り敢えず起きてくれ」


 まだまだ寝ていたかったのだろうか少し不満そうにライラは起き、無事にイザベルへ気が付かれずライラを起こすことに成功する。


 その後は何事もなかったかのようにイザベルが起きてきて食事を皆で取った後、テント等を回収し馬車へ乗り込むと馬車は目的の場所に向かって走り出す。


「それにしてもコウさんとの旅は快適ですね」


「そうですね~私もコウさん以外とはパーティーをもう組めないです~」


「全部魔道具のお陰だけどな」


 どれもこれもハイドから貰った魔道具のお陰であり、感謝してもしきれないだろう。


「贅沢を言えばお風呂とかも入りたいですけどね~...」


 現状、布で身体を拭くなどしているがそれでもあまりさっぱりはしない。


 イザベルの屋敷には大きなお風呂があり、ライラはそれを思い出すかのようにため息をつく。


「まぁ大きな湯船があれば俺の魔法で出来そうだけどな」


 ボソリと呟くとライラの目が輝き出しこちらへ身を乗り出してくる。


「それ良いですね~!アルクに着いたら是非買いましょう~」


「確かにそれは名案ですね。必須の物ですので買いましょう」


 2人はこれでお風呂に入れますねなどと言って喜んでいるのだが、お湯を張ったりするのはコウだし昨日手に入れた盗賊を売り払ったという臨時収入も湯船代として使われるのだろうと思うと何とも言えない気持ちになるのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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