第116話

「ええっと...これとこれをください」


 少し時間は進むが場面は変わり、現在コウ達が来ている所は道具屋のような場所でイザベルがどんどんダンジョン攻略に必要な物を買い足していく。


 目の前でライラとイザベルの2人が仲良く買い物をしており、中には必要がないものもあるのでは?と思い聞いてみるも「これは必要な物です!」と2人にきっぱり言われてしまう。


 とはいえここはダンジョン経験者のイザベルに任せるしか無いと思っているのだが、ダンジョン未経験のライラに必要な物かどうかが分かっているのかという無粋な事を言うのはやめておくのが吉である。


 そんなことを言った瞬間にライラの機嫌が悪くなってしまう未来が見えるからであり、見える地雷を踏むほどコウは馬鹿ではない。


「やっぱり収納の指輪は便利ですね。荷物を持たなくて済むので買い物が楽しめます!」


「そうですね~1パーティーに1人コウさんが居れば快適です~!」


 コウが居ればというのは間違いであり、正確には収納の指輪があればである。


 因みに今回のダンジョンへ備える必要な物の資金についてはコウとイザベルの折半となっていたのでコウとしてはあまりお金を使わなくて済むのでイザベルには頭が上がらない。


「まぁこんなものでしょうか?」


「色々買えましたね~」


「ふぅ...疲れたな...」


 あれから暫く買い物を続け、コウは王都内の様々な店という店をイザベルとライラの2人に連れ回された。


 別に収納の指輪があるので荷物を持つことはないのだが女性との買い物は何故、こんなにも時間がかかり疲れるのだろうか。


 フェニはコウの肩にずっと止まっていたので疲れている様子はなく、少しだけ羨ましいと思ってしまう。


 イザベルの手元にはリストアップされた紙があり、一通りの必要なものは揃ったようでコウはようやく買い物から解放されたことに息をついた。


 既に時間は昼時なので食事をするのにはいいだろうし丁度、周囲には食事をするような店が多く並んでいたので簡素な見た目の店の中へ入っていく。


「なかなかおしゃれなお店ですね~」


 中に入ると外観からは想像が出来ないようなお洒落なカフェの作りとなっており、少しだけ期待が出来るかもしれない。


 そこそこに繁盛していて大半の客層は女性客のようだ。


 可愛らしい格好をしたウェイトレスに席へと案内され、机の上にはメニュー表を置かれる。


 メニューの種類はそこまで多くないらしく適当に選び注文し、暫く待つと少し温い果実酒が運ばれてきた。


「むぅ...温いな。冷やそ...」


 コウは果実酒の入ったコップを持ち魔力を纏わせ冷気が出てくるまで冷やしていくと、目の前の席にいる2人もニコニコとコウの目の前にコップを出してくる。


 2人分の果実酒も冷やし終わると料理が運ばれてきて机の上に並べられていく。


 コウが注文したのはサンドイッチであり、イザベルとライラの2人はステーキのセットの様だ。


「太るぞ」


「ダンジョンでエネルギーを消費するので問題ないです」


 つい口から出てしまった一言がライラとイザベルに刺ささると、少しだけ怒気の篭った返答が返ってきて今まで上手く回避していた地雷を少しだけ踏んでしまった。


 やはりこの世界でも体重の話は禁句らしい。


「すまん。ところでダンジョンの場所は何処にあるんだ?」


 そういえばダンジョンの事について説明はされたが、ダンジョンのある場所についてまでは聞いていなかったので少し行儀は悪いがサンドイッチを頬張りながらイザベルへと質問する。


「場所について説明していなかったですね。王都から北へ向かうとダンジョンを中心とした都市がありますのでまずはそこへ向かいます」


 イザベルは近くにある布巾で口元を拭きながらダンジョンのある場所について色々と説明してくれた。


 説明を聞く限り、ダンジョンを中心とした都市ということなので一攫千金の冒険者達が多くいるのだろうと想像ができる。


 それにしてもダンジョンからは魔物が溢れて出て来た場合、都市は危険なのでは?とは思ったのだが、きっと何かしらの対策やダンジョンの特性によって大丈夫なのだろう。


「じゃあ馬車を探さないといけないのか」


「馬車は既にジュディが手配しているので問題ないですよ」


「流石だな」


 どうやら既に馬車は手配済みのようでジュディのような優秀な人材がいるのは少しだけ羨ましい。


 イザベルのことだから馬車はきっと乗り心地が良い筈なので、今回はクッションを使わなくても済むかもしれないと思い期待に胸を膨らませる。


 暫く雑談をしつつ、食事を楽しんでいるといつの間にか皿の上の料理は無くなっており、食事の休憩とばかりに全員はゆっくりと寛いでいた。


「さて...そろそろ行くか。馬車を待たせてもあれだし」


「そうですね。その街への移動は数日掛かるのでそろそろ行きますか」


 イザベルにお金を更に出してもらうのは気まずいので、料理のお金をコウはささっとカウンターで支払うとお店から出て馬車が待機している門へと食後の運動がてら皆でゆっくりと歩いて向かうのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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