第115話

 次の日、コウとライラは手紙の詳しい内容をイザベルから聞くため白薔薇騎士団の拠点としている王都へと足を運んでいた。


 今回のダンジョンのお誘いはコウにとっては願ってもない事であり、ライラとイザベルの2人が一緒にダンジョンの中へ潜ってくれるのならばわざわざ1人で潜って危険を冒さなくても済むのだ。


「それにしても~やっぱりここが1番栄えていますね~」


「まぁ王都だしな。それよりも早くイザベルのとこに行くぞ」


 久々の王都であり、コウが前回来たのは聖都シュレアからの帰りだっただろうか。


 大通りに出ている屋台では多くの人が並んでおり、食欲を誘う良い匂いが鼻腔をくすぐり2人と1匹は後ろ髪を引かれつつも、貴族街に居を構えているイザベルの屋敷へと向う。


 屋敷の入り口に到着するといつも通り門番をしている男勝りの女性門番ミルサが立っていた。


「おや?久しぶりだね。イザベル様に用事かな?」


「あぁミルサ久しぶりだな。イザベルに手紙で呼ばれたからまた入っていいか?」


「手紙だけ見せてくれないかな?一応、門番としての仕事をしている様にしないとね」


 収納の指輪の中から手紙を取り出しミルサに手渡し内容を確認してもらう。


 特に問題もなかったのかすぐに鉄格子の門は開き「いつもの場所にイザベル様はいるよ」と言われたので屋敷の敷地内へと入っていく。


 慣れた様に広い敷地内を歩いている最中に多くの女性達とすれ違うが、大多数はコウが敷地内を歩いているのを見慣れてしまったのか以前よりも物珍しい様な目で見られる事は少なくなっていた。


 逆にフェニは可愛がられるような存在といつの間にかなっており、何人かの女性からは餌付けの様な感じで干し肉などを貰って満足そうにしていた。


 食べ過ぎも良くないのだが、偶にぐらいなら大目に見ても良いだろう。


「おぉ〜やっぱり大きいですね〜」


「到着だな。そう言えば前に1回泊まったんだっけか?」


「そうですね〜かなり快適でご飯も美味しかったですよ〜」


 ライラは1度だけ屋敷に泊まった事があり、その時にイザベルといつの間にか仲良くなっていた。


 きっと何かしらお互いに通じるものがあったのだろう。


 屋敷の扉を開けて中へ入りそのままイザベルの部屋へとコウは直行する。


 部屋の前に到着するとマナーとしてノックを3回程して話しかけると入っても良いという返事が返ってきたので扉を開けるとそこには椅子に座り、銀色の髪を輝かせながら書類を整理しているイザベルがいた。


 銀色の髪には前プレゼントとして渡した十字架の髪飾りをしていたので、隣のライラを見ると同じ様にプレゼントした十字架の髪飾りを付けており、ライラはコウの視線が気になったのか首を傾げたので「何でも無い」と首を横に振る。


 自分がプレゼントしたものを大切に使ってもらっているのは気恥ずかしいが嬉しさを感じているとイザベルが口を開く。


「つい先日ぶりですね。手紙の内容についてはコウさんのお願いをそろそろ叶えようかと思いまして」


 お願いというのはダンジョンへ一緒に行くということであり、それはコウが闘技大会で優勝した時の報酬だ。


「嬉しいんだけど...いいのか?その間は白薔薇騎士団を放置することになると思うんだけど」


「そこはうちの優秀な副団長が何とかしてくれるので大丈夫です!」


 ある程度は融通が利くらしいが副団長のジュディからしたら仕事を丸投げされるのはたまったものではないだろう。


「とりあえず前もってダンジョンの説明を致しますね」


 イザベルからダンジョンの話を聞くと想像していたものとはかなり違いがあった。


 コウの想像していたダンジョンとは1層ずつ階層が別れており、ダンジョン内の何処かにある階段を降りていくと次の階層に進めるものだと思っていた。


 しかし話を聞いていると階段のようなものはないらしく、下へ下へ降りていくといった構造になっているようだ。


 そしてある一定まで降りていくと環境が変わり、その変わった地点から第1階層や第2階層などに名称が付けられているらしい。


 現状は冒険者達が降りている最高の到達階層が第6階層となっており、以下が階層のごとの名称だ。


 第1階層神秘への入り口。


 第2階層大森林ロートス。


 第3階層幻影砂漠。


 第4階層悲観の湿地。


 第5階層氷界域。


 第6階層忘れ去られた都ガリス。


 今は第3階層まではマッピングされ地図を作成されているので地図さえ買えばそこまで時間はかからないらしいのだが第4階層からはまだ地図が作成されていないとのことだ。


 イザベルが調べてくれたのだが今のコウ達の実力的に降りていける階層は第4階層が限界であり、それ以降は高確率の死の危険があるので進むことが出来ない。


「とりあえずこんな感じでしょうか。何か他に質問はありますか?」


 特に無いので首を横に振るとイザベルは椅子から立ちずっと座っていたためか凝り固まった背筋を伸ばす。


「では次にダンジョンへ挑むために街へ出て準備をしましょう!」


 ダンジョンの説明もある程度は終わったのでコウ達はダンジョンへ挑むための準備をするため王都へ繰り出すこととなった...。



ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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