第117話

 多くの人々が行き交う場所...つまりは街の出入り口である市門へとたどり着く。


 今回はAランク冒険者のイザベルが一緒にいたお陰で長蛇の列に並ぶこともなく、有り難いことに特別専用口から外に出ることが出来た。


 街の外に出ると大楯を背中に担いでいるジュディが特別専用口の出入り口の側で立っており、これからダンジョン都市へ向かうコウ達を見送りに来てくれていた様だ。


「団長。お待ちしていましたよ」


「待たせてごめんなさいねジュディ。馬車はどこかしら?」


 イザベルは手配してくれた馬車についてジュディに聞くと馬車の元まで案内される。


 そしてその馬車の元へ案内されると何処かで見たことのある馬車であり、記憶を辿ると聖都シュレアに行く際に使った馬車だと思い出す。


 ライラとフェニは既に馬車の中へ、いの一番に乗り込んでおり、自分のベストポジションを探しているようで馬車は少し揺れていた。


「馬車を手配してくれてありがとうね。じゃあ当分の間はジュディに白薔薇騎士団の指揮を任せます」


 そう言いながらイザベル馬車の中へと乗り込んでいき、残されたジュディは少しだけため息を付きながらしょうがないといった表情をしていた。


「じゃあ俺も乗るかな」


「あぁちょっと待ってくれないかい?」


「ん?なんだ?」


「呼び止めて悪いね。コウ君...だったかな?済まないがうちの団長を頼む」


 コウも同じ様に馬車へ乗り込もうとするとジュディから呼び止められるので何だろうと思い足を止めて振り返ると頭を下げられながらイザベルのことを頼むと言われる。


「私は今回は団長の側に一緒にいられないから彼女のことを守って欲しい」


「まぁ...イザベルより俺は弱いけど努力はするさ」


 そう言いながら馬車へ乗り込むと御者が御者台へと座り、小窓から「そろそろ出発致します」と一言だけ声を掛けられたので各々座席へと座り待つ。


 馬車はゆっくりと走り出し、馬車の後ろに付いている小窓からは王都へ出入りするための大きな市門が少しづつ遠ざかって小さくなっていく。


「そういえば今から行くダンジョン都市はなんて名前なんだ?」


「えーっと...確かアルクという街ですね」


 ダンジョン都市アルク。

 

 一攫千金を狙う者や栄光を掴まんとする者の集う場所であり、多くの冒険者達が夢儚く散っていき命を落としていった場所。


 それでも多くの冒険者達はダンジョンという神秘に満ちた謎多き底へと惹かれ命を惜しむこと無く挑み続けてしまう。


 まるで火の光に誘われ虫が惹かれていくように――。


 もしかしたらコウ達も今からダンジョンへ向かうということは多くの冒険者達と似たようなものかもしれない。


 昼頃からローランを出発したコウ達を乗せた馬車は順調にダンジョン都市アルクへと向かって走っていた。


 しかし空は茜色に染まっており、周囲の草原も緑から茜色に変化し輝いているのが小窓からは見える。


 もう少しすれば夜になるのでそろそろ一夜を過ごす場所を探さないといけないし、出来れば馬車を引くウォーターホースの関係上なるべく休憩する場所は水場が良いだろう。


「水場が見えてきたので今日はそこで休憩致します!」


 御者台が見える小窓から御者は少しだけ顔を出し、馬車が移動しているためか大きな声でコウ達に向かって伝える。


 舗装された道から逸れると少しだけ馬車に振動が起こるがやはり馬車自体それなりに良いものなのか、そこまでコウ達のお尻にダメージはない。


 ゆっくりと馬車はスピードを落としていくと振動は無くなっていき、草原にある大きな湖の側へと到着したので馬車の中から全員が外へ出る。


「ん~やっぱ良い馬車に乗るとお尻が痛くないです~」


「クッションみたいな柔らかい素材で座席が作られているから有り難いな」


 クルツ村へ行く際に使った馬車とは違いお尻にダメージがないことにコウとライラの2人は感動しているがイザベルにはコウ達の苦労がわからないのか頭の上にはてなが浮かんでいるようだ。


「さて...とりあえず色々と一夜を過ごすための準備でもするか」


 準備と言ったらコウの持っている魔道具の1つである虫や魔物を寄せ付けないランタンを起動したり、今回ローランの街で購入をしたテントを張ったりするぐらいだ。


 食事に関しては収納の指輪の中に多くの温かい食事が入っているため、それを出すだけで作らなくとも普通の冒険者達よりも質の良い食事をすることが出来る。


 他の冒険者から見られでもしたら羨ましがるか憎まれるかの2択だろうか。


 暫くテントの準備などをしていると舗装された道の方向から10人ほどの馬に乗った人がこちらに向かってくるのが見えた。


「ん?誰かこっちに来るな?」


「何でしょうね~?」


「他の冒険者達が休憩にでも来たのでしょうか?」


 近づいてくる程に乗っている人物の姿が見えるが到底冒険者のような姿はしておらず、寧ろ盗賊にすら見えるのだ。


 これから起こることは確実に良くないことではあるとコウ達は予想し、いつでも戦闘が起こっても良いように武器を各々構えるのであった...。


ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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